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ねぇ、どうして開けてくれないの?ローズ。今此処に居るのがわたしだけだって解っているのでしょう?
[雑貨屋から一転、全てに怯えるような素振りを見せるローズに、わたしはよく解らないといった様子で首を傾げて見せ理由を尋ねた。すると僅かな時間を空けてドア越しにか細い声で理由が返って来た。]
「だって…ギルバートが俺以外にドアを開けてはいけないって…言ったから…」
[お前は七匹の子ヤギか?
思わず呆れ返りながらも、切り返したくなる衝動をぐっと堪えて、わたしは出来るだけ落ち着いた口調で彼女に語りかける。教師をやっていて良かったと思った瞬間だった。]
あのねぇローズ…。そんな童話じゃ有るまいし…。
それに――幾らあなたが彼に惚れているからって、所詮新参者の彼と三年以上の付き合いのわたしと天秤にかけて、それでもギルバートさんの方を信じるって言うの?
…わたし達の友情って…そんなちっぽけな…ものだったの?酷いわ…ローズ。わたしはあなたを信じて…この三年間暮らしてきたのに。
[最後の言葉には涙声まで滲ませて。]
[しかし七匹の子ヤギというのは、中々言い得て妙だなと思った。チョークで声色と手足を真っ白に変えて化けたオオカミは、まんまと子ヤギ達を騙して家の中へ入り込み、食事にありつく。
わたしは嘘泣きまで持ち出して――]
「ごっ…ごめんステラ…そんなつもりじゃなかったんだけど…でも最近物騒だからってギルバートが…」
[まんまと扉を開けさせる。]
ううん、気にしないで?ギルバートさんだって、きっと用心のために託して言ったんだし…。きっと悪気は無いわよ?でも…
[そして慌ててドアを開けるローズに、わたしは柔らかい笑みを浮かべ安堵を与える。]
わたしが男だったら…こんな物騒な時に、愛しい人を一人だけ残して留守にはしないけど…な。
――居ないんでしょう?彼。
[痛いところを確実に突いて不安に陥れながら]
[わたしの言葉に表情を曇らせて視線を伏せるローズ。
いい気味だと思った。
ささやかではあるけれど、これは雑貨屋でわたしに与えた屈辱のお返し。昨日のように悲しみに漬け込んであなたの躰を貪ろうとはもう思わない。]
あ、そうだ。ねぇローズ。お願いがあるんだけど。
あなたの所にあるワインセラーから安物のワインで良いの。赤を一本譲ってくれないかしら?実は手持ちのワインを切らしちゃってて…。
あ、ほら。わたし【あなたと違って】男の人に簡単に頼れない性分なのよね…。だから一人で身震いする夜を少しでも和らげる為のホットワイン用に欲しいんだけど…。駄目かしら?
[女の嫉妬って怖いわね。
わたしは自分の言葉尻が自然と刺々しくなっている事を自覚しながらも、あえて隠さずに唇に乗せた。俯く彼女の姿が目に映る。関係ない町の人間からどう思われようが平気なあなたでも、身近なわたしの言葉だと少しはダメージを受けるのかしら?
込み上げてくる感情を噛み殺しながらうっすら口嗤う。勿論ローズに見られないように。]
―母屋・食堂―
[できればハーヴェイを待ちたかったが、食事の準備が整ったとのことで私は普段よりやや早い夕食を摂るべくソフィーと共に食堂へと足を踏み入れた。
ニーナは気分が優れない、と自室で食事を摂ると使用人から耳にし、肯いた。父が松笠の杖を振り、来客をもてなした。
シャーロットの席は空いたままだ。
父の目は赤く滲んでいた。
私たち家族は来客を前に、家族を襲った凶事については触れぬまま食事を続けた。
祖母がスプーンを近づけたり遠ざけたりしながら、そこに映る自分の顔を好奇心に目をキラキラさせて眺めている。
グランマ、冷めるよ、と私は言った。]
[やがて、私の口からは感情の籠もらない平板な口調で言葉が漏れていた]
グランマ。黒牛の角は伐ったから、もう安心だよ。
[祖母はパンの中身を千切っては丸めていた]
「カウボーイが縄かけて〜 シェリフがムチうつ
ワンワン モーモー 大さわぎ」
カウボーイ?
[私は、思わず問いかけていた。
カウボーイだって?
祖母は、きょとんとした顔を向けた]
ウシを追うのはカウボーイ……
そうだわね?
[なぜそんな簡単なことがわからないのだろう、と言わんばかりだった。]
「…いいわ、譲ってあげる。こっちよ…」
[何処かまだ俯き加減のローズに案内されるまま、わたしは昨夜案内された地下へと再び足を進める。薄暗い階段、湿った空気。昨日と何も変わらない場所。違うのは持ち合わせた気持ちだけ]
――アンゼリカ 地下――
「ここにあるのだったら好きなのを持って行って良いわよ…」
[何処か疲れきった様子でローズはワイン棚を指差す。位置はわたしの斜め前。当然後ろの様子なんて気にしていなくて…]
[わたしはチャンスとばかりにほくそ笑む]
[頭を少し傾け、少しの間を作る。
金の瞳は漂う紫煙の向こうに煌いている。]
──どう話したら良いのか。
めんどくさいんで、ズバリ結論から言うと、俺は人間じゃあない。
「黒ウシよりおっかないのは影のないおとこだよ。
気をおつけ。
さかさまのあべこべ。おまえのかがみ。
カゲをぬすまれないようにねぇ……」
[祖母の言葉は相変わらず意味がよくわからなかった。私は顔をしかめ、読み解くことを放棄した]
ねぇ、ローズ…良かったら――
[わたしはローズの肩越しにワインを選ぶ素振りをして彼女に近付き]
あなたが一本選んでくださらなぁい?
[持参した籠からナイフを取り出し、彼女の脇腹へと突き刺した]
──バンクロフト邸・食堂──
[捜索の為、ハイネックの白いニットキャミソールに細身のジーンズを合わせただけという動きやすさ重視の格好のまま、ヒューバートと共に食卓に囲んでいた。]
ついでに言えば、アンタは俺の同族の血を引いてる。
アンタの持ってるその…幻視の力?は、その先祖の力を受け継いだもんだな。
部分的に、だけどな。
[煙草を指の間に手挟み、軽く振って見せた。]
―母屋・食堂―
[私は向かいのソフィーに微笑みかけた。]
すまないね。グランマは時々、意味のわからないことを言うんだ。
[そう言ったそばにだ。
ソフィーの方を向いた祖母は、ソフィア、もっとお食べと微笑みかける。彼女の母の事故死という不幸の記憶に突如触れ、一瞬ドキリとしたが、祖母の子供のような表情を見ていると咎めようもなかった。
私は、呆れて溜息をついた]
[ディナーの前に松笠を振って祈る車椅子の紳士。
子供のように目を輝かせて歌を口遊む老婦人。
初めて招かれたバンクロフト家のディナー。
奇妙な光景だが、不思議と温かさを感じた。
或いはそれは懐かしさだったのかもしれないが。]
いいえ、愉快なお婆様ですね。
[パンで遊ぶ老婦人の姿に目を細め。]
[母の名で呼び掛けられれば一時ナイフを繰る手が止まるが]
…母を、ご存知なのですか?
[然程動じた様子もなく、柔らかな声音で話しかける。]
それで、俺のシゴトのひとつが、アンタみたいな同族の子孫のところを回って、その血を目覚めさせることだ。
さっき俺がそういう力を持ってると話したな?
俺がこの町に来た理由がそれだ。
先祖の………力。
血を、目覚めさせる……
いったい、何のために……?
[揺れる紫煙を、ぼんやりと瞳孔を開いて見つめている。]
………いや。
目覚めさせる「血」とは……何だ?
[非力な女の腕で、簡単にローズを殺せるとは思っては居なかった。だからわたしは気休めにでもとナイフに煙草を煮出した液体を予め塗布しておいた。ニコチンは毒性が強いと教えてくれたのは、さぁ誰だったか…。]
「ス…テ…ラ?」
[驚いたように目を見開きながら振り返るローズの足を払い、彼女の体を床に倒す。傾き掛けた身体から素早くナイフを抜き取り馬乗りになると、再びわたしは彼女の首許へとナイフを宛て――]
ごめんなさいね。わたし、躰を許した相手の裏切りは…どうしても許せない性質なの。だから、ギルバートさんに抱かれる夢は、天国で見て頂戴?
それとも…これからは男は捨ててわたしだけ愛してくれるって誓ってくれる?
[くすり くすり――]
[笑みが自然と零れる。わたしはローズの怯えと懇願で歪む表情を味わい深く見下ろしていた。さぁ、あなたから命乞いの言葉は聞けるのかしら?]
「あ…ステラ…おねがい…助けて…?わたし達…昨日はあんなに…」
[刺された痛みかそれとも僅かに流し込んだ異物の苦しみか。綺麗なローズの顔は今は醜く歪み、艶めいていた唇はすっかり青褪めてしまっている。]
ん…そうね。昨日わたし達はここでお互いを求め合った。でもわたし、あなたの口から聞いていないの。
「わたしを愛し続けるわ」って言う言葉を。
だから…ねぇ?誓って?その麗しの唇が…
[命乞いをするローズの手が、わたしの背中を撫ぜた。入墨に唇を寄せたときのように優しく。
でもそんな優しさ、今は欲しく無いの。]
事切れてしまう前に――
[わたしは彼女の最後の言葉を聞くその前に、首筋に当てたナイフを力いっぱい振り下ろした。
瞬間、鮮血は綺麗な飛沫になって周囲の壁を彩っていた。]
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