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―安置所前―
[どれほどの時間が経っていただろうか。闇に慣れた目に外は酷く眩しく、しばし手で目を遮りながら順応するのを待った。
大きな声でユージーンを呼ぶと、墓石の群れの中から身を擡げこちらに向かってくるのが目に入った。
彼が鍵をかけるのを確認すると*その場を後にした*]
──アーヴァイン自宅前(回想)──
「…オーライ、オーライ。よしそこだ。」
ゴワゴワとした癖のある色褪せた褐色の長髪、無精髭を生やし草臥れた男が腕を振り、トラックに向かって停車位置を示している。プーップーッと間抜けな音を鳴らしながらバックして来る車を運転しているのは、白髪まじりのガッチリした体格の男。二人ともいかにも肉体労働者らしい風体だ。
二人は、山崩れのこちら側に取り残された、ヘイヴン唯一の電気工事屋の親子だった。彼等の家は崩れた道の向う側にあった為、昼間は電線、電話線の復旧、壊れた水道管の交換作業をして働き、夜はアーヴァイン邸の隅っこに厄介になりながら、アーヴァインが「無線で確保した」と言っていた救援部隊の到着を待っていたのだった。
例のギルバートが放った小火を消し止めたのも、アーヴァインを尋ねて来た町民と仕事から戻った彼等だった。二階の窓からあがる火の手を発見したのは町民だったが、働いたのは主に彼等親子かもしれない。そして、今まさに彼等はアーヴァインの遺体を、アーヴァインの持ち物だったフォードのピックアップトラックに積み込み、墓守の手で安置所に放り込んでもらうべく、墓地へ向かわんとしている所だった。
…と語ると、彼等が随分と親切な人間の様に思える。が、実のところ彼等は、焼け爛れしかも何者かに食い荒らされた形跡のあるアーヴァインバラバラ全裸死体と同じ屋敷で、夜をすごしたくなかっただけだった。
「結局大した火事にならなくて良かったよ。だが、こりゃあ放火だぁな。なんだか、薄気味の悪りぃ…。」
「なんで放火だってわかるんだ?」
「お前も「あの部屋」の有様をその目玉で見たンだろう、馬鹿だなぁ…。」
「いや、焼け残った写真に気ィ取られて覚えちゃ居ねえよ。酷ぇ写真ばっかりだったじゃねえか。男のケツとか、肛門とか、×××とか。アーヴァインの旦那ァ、いい年こいて独身だと思ったら隠れホモ野郎だったとはなァ。」
無精髭の息子が乾いた笑い声を上げながら、積み終えた毛布で包んだアーヴァインの遺体を確認し、トラックの荷台の後ろを閉じた。ドアを開けトラックに乗り込んで来る息子の手には燃え残ったアーヴァインのコレクションの一部をポケットから出し、運転席の父親に好奇心丸出しの様子で見せつけるように、差し出す。父親は息子の頭の悪さに舌打ちをし、「捨てろ」と吐き捨てる様に言って、ハンドルを片手で回しながら火を付けたばかりの煙草を揉み消した。
「相変わらず頭の回転の鈍い野郎だ、てめえはよォ。アーヴァインさんの隠れた趣味なんざどうでもいい。それより、あの「牧師」がリンチにあって殺されたんだぜ。こっち側にアブねえヤツが居るって事は、俺たちも何時なにに巻き込まれるか分からねえってことだぜ。」
「…んん。マァ、救助が来れば終わりだろ。それよりさっさと糞ホモ野郎の遺体を運んじまおうぜ。あの立派な墓守様がどうにかしてくれるだろ。」
「それに俺はさっき見たんだよ。お前が小便のために車を降りてた間、金髪の小僧が同い年くらいの女のガキに軽々と持ち上げられて、連れ去られるのを。」
「アァ? 親父の方がラリってるんじゃねぇの。ンな事出来るわけねぇだろ。ヘッ!」
「ウルせえ、振り返ったあの女のガキの顔……異様だったんだぜ。」
あり得ねえよ、と言う息子の返答に、父親はハンドルを握ったまま窓の外に唾を吐き捨て、もう一度煙草に火を着けた。
「だからお前は頭が悪ィんだよ。」
頭が悪いと言われた息子は父親の言葉がわかったのかわからないのか、ガムをクチャクチャと噛みながら、ラジオのチューナーを合わせ鼻歌を歌い始めた。
…ike a virgin Touched for the very first time
Like a virgin When your heart beats Next to mine
アーヴァインの遺体を乗せたトラックは墓地へ*向かって行く*。
─回想・ナサニエルの家2階寝室─
[彼は一方的に「会話」を打ち切ると、万が一にも未熟な忌み子たちに洩れ聞こえないように念入りに自分の「声」を遮断した。
変化したての「先祖帰り」に、「口を閉ざした」自分の独り言が聞き取れるとは思えなかったが、用心するに越したことはない。]
[椅子を窓辺に置き、開いた窓からぼんやりと雨の止んだ空を見る。雲は多かったが明日には晴れるだろう。
この家の鏡台から失敬した、甘い匂いのするリトルシガーを咥え、火をつける。
勿論彼に紙巻煙草とリトルシガーの区別などついていない。大体喫煙習慣自体、ごく最近知り合った男からこのスタットソン──カウボーイハットと共に貰ったものなのだ。
そのまま吸い込んで……噎せた。]
……甘い。
[顔を顰める。]
[ナサニエルはまだベッドの上で眠っている。身体を丸めて横たわる彼の表情は、意外に安らかだったが、何となく普通の情事の余韻とは違うものに浸っているような気もしなくもない。
その上に屈み込み、汗で顔に張り付いた髪を指で梳き、少し開いた口の端に口接けた。]
[身支度はとうに終えている。テーブルから置いてあった帽子とレインコートを取ると、部屋を出た。]
[ローズマリーは慈しむようにステラを攻め立てた]
[彼女の奥の奥まで探り、引っ掻き、掻き混ぜ、こすりあげた]
気持ち良さそうね、ステラ。
[ローズマリーは片手でステラを嫐りながら、もう一方の手で自らの中心に刺激を与えていた]
―ナサニエル自宅・1階書斎―
[男は目を見開き、窓の外にいる青年を見つめている。]
まさか、ユーイン………
[彼が口にしたのは、かつての「契約」相手の名前。いや、だがおかしい。確か彼は3年前に自殺したはずだ――多分、3年前あたりに。ならば、昨晩からの幻覚が未だ残っているのかと思い、男は『今日は忙しいものだ』と思った。]
『いや………待て。待てよ。
もし目の前にいるのがユーインの幻覚なら、俺がひとりでこんなことヤッてんのを見て怯えたりするか?むしろ、弱み見つけたとか言って喜んだり、或いは自分がヤッてやるとか言って、俺の都合なんざお構いなしに部屋に入ってくるはずだ……』
[ましてや、この書斎にはユーインはおろか誰も招き入れたことがないからなぁ…と、余計なことまで頭を過ぎった男の口から、言葉が零れ落ちた。]
ユーイン………
…………………じゃ、ねぇよな?
─回想─
[この町にどれほどの「血族」が居たか定かではないが、彼らの上げる思念のノイズが消えゆく速度から、忌み子達が町にもたらした災禍の大きさが分かる。
たった一人の「先祖帰り」でも、備えのない人間が対峙すればその帰趨は明らかだ。]
『──見つけ出して、』
[「口」を閉ざしたのはこの決意を知られぬため。]
[と。思いに耽った後、]
あ、こうやってふかすと意外と……
[大分吸うコツが分かってきたのか、紫煙をくゆらし、闇に沈んだ町を*歩き出した。*]
[ローズマリーの息があがる]
はぁ、はぁ、ステラ…。
気持ちいい?
わたし、そろそろ…。
[ローズマリーの指使いが激しくなり、ステラの身体も震える]
ステラ、ステラ!
――酒場アンゼリカ 地下――
[羞恥を煽るような艶かしい音と言葉がわたしの耳許を舐め上げる。その言葉を聞きながらわたしは、突如与えられた視覚の交差にとある一つの答えを導き出していた。]
[導き出された答え。それはわたしの人生の歯車が狂い出す原因となった"あの人"との刹那であり、わたしが初めて愛した同性の…"あの人"との蜜会だった。]
[当時わたしは神に使える身でありながら、不徳にも礼拝に訪れる一人の年上の女性に心を奪われていた。それが恋という感情の一つであった事は、後に彼女自身から教えられることになるのだが。
しかしその時のわたしは湧き上がる感情を持て余し、どう解消して良いのか解らず、ただただため息に色を滲ませ日々をやり過ごしている子供で、彼女―シンシア―の姿を見る度に胸を痛める自分は、何処か病気なのだろうかとさえ思っていた。]
[あまりの胸の痛みに耐え兼ねて、ある日わたしはシンシアに自分の症状を包み隠さず打ち明けた。その頃にはわたしとシンシアは淡い秘密の共有をする仲にまで発展しており、誰よりも近しい関係になっていた。]
「ねぇ。わたし、あなたの事を考えただけで胸が痛くて祈りにも集中できないの。これって何かの病気かしら…」
[わたしの告白に、果たしてシンシアはどういう表情を浮かべていただろうか?
今となっては忘却の彼方、思い出すことも出来ないが、それでも彼女は確かに苦く苦しそうな表情を浮かべていたかもしれない。少なくてもわたしが彼女の命を奪った際に見せた、あの妖艶な笑みは浮かべていなかったように思える。]
[しかしどのような表情を見せたとしても、その後彼女と過ごした日々は紛れもなく性欲に裏付けされた行為であり、その赦しによってわたしは屈辱を受け、奈落の底へと落とされたのだから、今思えばそれは全てシンシアの罠だったように思える。出会いから全て彼女が仕組んだ大掛かりな退屈凌ぎの…。]
[今わたしが感じている二つの映像。それはシンシア自身がわたしとの目合わいの中で実際に感じていた物ではないだろうか。わたしは徐々に昂りへと昇っていく自分の躰に息を弾ませながら思う。
彼女は確かにわたしを愛し、わたしを求めていた。しかし彼女もまた今のわたしのように女を愛しながら同時に男を愛していた。
手練を施しているのは一人。でも二人の手によって溶かされる感覚。何もかも二倍に感じる快楽。一度味わってしまえばもっと求めてしまう。禁断の味――
その味を覚えてしまったシンシアは、いつからかわたしに抱かれながら別な人の夢を見るようになっていたのだろう。今のわたしがそうであるかのように]
あ…うん…気持ち良いの…っ…そこっ…そこが気持ち良…んっ…
[内壁を擦り上げられる気持ちよさに、わたしは頭を左右に振りながら上り詰め酔うとする様を堪える。
もっと欲しい――
貪欲さは声を上げる。でも何が欲しいのか何て言わない。言ってしまったら最後、最悪な結末が訪れる事はわたし自身、身に刻んでいる事だから――]
[わたしと別方向から聞こえる水音に、手を伸ばしてしまいたい衝動が込上げてくる。わたしは知っている。今誰に抱かれているのかを。右目のビジョンは相変らずバートのよく動く腕や肩甲骨を映し出しているが、躰はローズに抱かれている事は理解っている。ただ精神だけが。それを認めようとはしないだけ。ローズの太腿に伸ばそうとした左手は、脳によってその行き場を失い宙を舞う。精神的快楽がその行く手を阻むから。]
[荒い息遣いに相手の絶頂が近い事をわたしは悟る。歪む視界。ローズとバート、二人の愛しい姿がぐにゃりと変形し、マーブル状に溶け合っている。]
嗚呼…だめっ…私ももう…果てそうよ…?だから来て…わたしの中に…一緒に果てましょう…――
[ぐるぐると回るマーブル状の二つの顔。と、撹拌する渦がぴたりと止む。そして中から何かが浮かび上がってくる。それは人の顔に形取られて――]
『…っシンシア?!』
[わたしは思わず亡き人の名前を叫びそうになる。反射的に左手の蛇はわたしの口許を押さえてくれた。救われたと思った。何故そう思ったのかは解らないけれど。少なくても身に刻んだ子供達に救われたような気がした。
尤も、彼らにしてみれば親元が死すれば自らの死にも直結するという懸念から、自己防衛を計ったかのように思えるのだけれども。]
[しかし左手のお陰で、わたしの両目は達する直前に現実へと引き戻された。
今、わたしの両目に映っているのは豊かな碧髪の美しい女性。そう、わたしがヘイヴンに着てから恋して止まないローズその人の姿――]
[わたしは戻った意識で素早く右手を彼女の太腿へと伸ばし、彼女と自身の指との交換を図った。それは少し乱暴な動作だったかも知れないが、今の私に出来ることはこれ位しかないと思った。]
[ぬめりと引き出されたローズの指は、甘い芳香を漂わせていた。わたしはその指を嘗め尽くしたい衝動を押さえて、代わりに自分の指を宛がい、知っている限りの動きを彼女の中に与えた。]
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