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──ありがとよ。
アンタのお陰でだいぶ欠けたパズルのピースが嵌まったよ。
で。
何でアンタがこうなったのか知りたいんだっけな。
説明してやるけど、今から話すことは他の人間には絶対に他言無用だ。
アンタが喋ったと分かったら、俺はアンタを殺す。
いいな?
[深く吸った煙を、軽く開いた唇から細く吐き出して、]
アンタが見たのは「幻覚」じゃなくて多分「事実」だな。
俺と寝たことでアンタの感覚は、以前とは比べ物にならないくらい鋭くなった。
お陰で、普通の人間には見えないモンまで見えるようになった……
まあそんなとこだ。
じ、じつ……?
アレがか?
……にしちゃあ、随分とファンタジックな……。
[ギルバートの唇の動きを見つめ、その言葉を捕らえようとしている。]
なんでそんな妙ちくりんな夢になったのは俺も知らん。
だが、その能力は恐らく前からアンタにあったモンだ。これまでは表に出なかっただけでな。
ところが俺とヤったせいで、それが急激に高まった。俺にはそういう相手の血に潜むものを引き出す……能力?がある。
──これで納得したか?
前から、俺に、あった……もの。
お前が、それを、引き出す……
[ギルバートの瞳孔に、自分の焦点を当てて呟く。]
お前………何者だ………?
俺が何者かって?
それ訊いていいのか?ナサニエル。
それこそ、取り返しがつかなくなるぜ……?
[ニィと唇の両端が吊り上がり、歪んだ嗤いを形作った。
琥珀の瞳の奥には──金色の光が瞬いている。]
………………。
構わねぇよ。
今さら、それ「だけ」お預けにする必要は無いからな。
[ナサニエルの唇が、微かに動く。]
『そう――
お前は俺の"クスリ"――』
――自宅――
[各々の目的地へ向かう車を一人見送ったわたしは雑貨屋を出た後、素直に自宅への道のりを辿りドアを閉めるなりその場に蹲った。
わたしは自身の感情に振り回されて疲れ切っていた。ようやく手に入れたはずのローズは、いともあっさりとギルバートへ戻り、バートはバートでまるで過去の事など一切無かったかのような振る舞いを突きつけてきた。
【気紛れ】と【一人の友人】。
思いを寄せる相手に尽く邪険に扱われたわたし。]
――はははっ…滑稽すぎて笑えないわ…。まるで失笑を買う為だけに舞台に上がる劇人形みたい…。
[いや、失笑を買う為だけに生かされているならそれはそれで割り切ってやろうと思えるからまだ良いではないか。そういう【役割】を与えられているなら、望むままに演じてやろうと割り切れるもの。しかしわたしには感情がある。ピアノ線で吊り上げられた人形ではない。]
だから…時々やるせなくなるよ…自分自身を…そして全てを――
[まるで自分自身を壊してしまうかのように。わたしは拳を何度も床に叩きつけ、やり場の無い怒りを静めようとした。]
[何度目の殴打だっただろうか。]
痛っ――…
[わたしの左手は床に落ちていた小石の破片にぶつかり、その拍子で膚を少しだけ傷つけてしまったらしい。
痛みは大した事はなかったが当たり所が悪かったらしく、皮膚は切れ体内(なか)から血が玉の様に滲んでは僅かに周りを赤く染める。]
あぁ…血が出ちゃったの…ね。
[いつものように条件反射でわたしは血の滲んだ手を口へ運び舌で一滴赤を舐め取る。それは何気なく行ったものだった。そう、ただいつものように何気なく――]
[口内に血の味が微かに広がった。あの何処か金属を思わせるような腥い味が。]
んっ…。
[思わず顔を顰める。しかし次の瞬間、頭の中ではまだ過去には成り掛けていない真新しい記憶がフラッシュバックする。]
あ…っ…あぁ…どうして――…
[わたしの中で蘇ったもの。それは酒場の地下で狂ったように求め合ったあの情事。お互いの指をお互いの体内へと埋めあったこの指に絡みついた蜜を舐め取ったあの味と、今わたしの血の味が重なり合う。皮肉な巡り合わせと共に。]
[今思うに。あの時ローズは排卵期前後だったのではないだろうか。排卵期時のホルモンバランス関係で稀に不正出血を起こす人も居るという。ローズの場合体外まで流れ落ちなかったとはいえ、もしかしたら微量に滲み出ていたのかも知れない。わたしは医学の知識なんて無いから、詳しいことは解らないけど]
それに…――もし、雌としての本能を掻き垂れられるような激しい行為を行った後だったりしたら…?
[そこまで口にして。わたしはぴたりとそれ以上言葉を発するのを止めた。口に出して認めたくは無かった。ローズに纏わる色々な事実を。口に出した瞬間、わたしは一瞬にして自らの言葉で気が触れてしまいそうになるのを無意識に悟っていたのかも知れない。]
―イアンの捜索―
[屋敷に着くや否や、客間の準備と手荷物の搬入を使用人に命じ、ただちに猟犬を駆り出した。日暮れまでそれほど猶予があるわけではない。
ソフィーと共にイアンの捜索に向かったが、やはり彼の姿は杳として知れなかった。
風景に変化をもたらすほどの地形の変化、土壌の流出、暴風雨の後の大量の水分を含んだ土砂は、猟犬の感覚を狂わせた。それ故に、捜索は私たちにとっても予想外なほどに困難な仕事となった。
猟犬は匂いの痕跡を注意深く辿ろうとするが、川のように横たわる土石流の跡や断絶した地層に阻まれ、それらが障壁を形成する迷路に迷い込む。方向感覚を狂わされ、何度も同じ場所を行ったり来たりすることになった。
やがて日昃の陽が、薄靄がヴェールのようにかかった西の昊天を橙色の仄かな色彩に染める頃、私たちはその日の捜索を諦め帰路につくことにした]
―母屋・ニーナ客室―
[ニーナはソフィーと共に母屋の隣同士になる客間に導かれてい
たが、愁傷の跡が未だ表情から去らずにいた。
「兄さん……」
うら寂しい響きだった。ベッドに身を預けたままに空漠とした眼差しで肉親の名を呼ぶその姿に、私は胸が締めつけられる思いがした。愛おしむように髪にそっと触れ、慰撫するように静かに背中を撫でた。
やがて、私は、今はよく休むようにと言い置き立ち上がった。彼女は懶気な仕草で鞄からネグリジェを取り出し、私は着替えを邪魔しないようそっと部屋から立ち去った。]
[ニーナが自分自身の対処能力を遥かに超えた災厄を前に、愛する肉親に縋りたい気持ちはよく理解できた。それが、もう五年も前に亡くなった兄だったとしても、それだけ深い愛着があったのだろう。
だが、ニーナの、まるで兄が生きているような口ぶりには私はひどく当惑させられた。彼女も私と同様、家族の死を受け入れられないでいるのだろうか。]
ロティ……
[私は思わずその人の名を呼ぶ。別れが訪れる日が来ることなど想像することさえできなかった彼女が奪い去られたのは、まだ今日の未明のことなのだ。
だが、ニーナの兄、ラルフが亡くなったのは五年も前のことだ。人知れず何処かで生きているということなど、ありえることなのだろうか。]
[そこで、私は奇妙な違和感に気がついた。
ラルフの顔がまるで記憶の中から浮かび上がってこないのだ。
彼が亡くなった時を思い出す。
その頃私は大学院に通っていて、ヘイヴンと大学のある町、ニューヘイヴンを週に何度か往復する慌ただしい日々を送っていた。ステラとの関係が続いていたのもこの頃だ。それだけにヘイヴンに居る間は家族との時間をできうる限り優先していて、親戚筋とのつきあいがひどく澹泊だった時期ではあった。
それにしても、と思う。時に過剰に鮮明にすぎる視覚記憶に苦しめられる私が、疎遠だったとはいえ甥の顔を思い出せないことにはなにか別の理由があるとしか考えられなかった。
私は意図的に不要と判断した記憶を消去することがある。
消したくても消し去ることができないほどに強い記憶以外はなんとか意識のコントロール下に置くこと。それが、記憶の奔流に悩まされがちな私にとって必要なスキルだったからだ。
私はなにかの理由で、彼の顔を消してしまったのだろうか……]
――
ニーナの兄、ラルフの顔
五年もの星霜を経て甦った兄
そこにはなにか、今起きている出来事の
裏側を繙く鍵が隠されているような気がした
――
[わたしは止血の為に舐めていた指を口許から外し、ゆっくりと立ち上がった。]
そう言えば…寝酒用の赤ワイン、確か切らしていたのよね。お砂糖を落としてホットワインにして飲まないと…今日みたいな夜は寝付けそうに無いもの…。
[そしてわざと平穏を装うように明るい口調で、自らの行動を口に出して確認する。
しかし頭の中では古い記憶がぐるぐると、壊れたレコードのように流れていた。それは昔々の話。でも紛れもなくわたしの消し去る事の出来ない過去――]
雑貨屋は今見て来た通りの有様だから…。やっぱりアンゼリカへ行って一本譲り受けてこないといけないわねぇ。
――面倒だけど…買いに行かなきゃ。
[努めて明るい声を上げると、わたしはワインを入れる為のバスケットと、帰りもし寒くなっても大丈夫なようにと黒い外套を手に持ち、酒場へと向かう道筋を軽い足取りで歩き始めた]
Lullaby of birdland that's what I
Always hear when you sigh
Never in my wordland could there be
Ways to reveal in a phrase how I feel…
[軽く歌などを口ずさみながら…]
――酒場 アンゼリカ――
[わたしは到着するなりCLOSEのプレートを突きつけられるけど気にも留めず、いつものようにノックを三回。そして呼び慣れた彼女の名を口にする。]
ローズ、居るんでしょう?お願いがあるの。ちょっと良いかしら?
[しかし呼んでも彼女は一向に出てこない。何かあったのかしら?それとも…――
彼女の車は無かったけれど、でも確かに店内からは人の気配が感じられる。ほら、今だって窓ガラス越しに彼女の癖のある髪の毛が――]
ローズ?わたしよ、ステラよ。ねぇ、開けてくれないかしら?
[少し乱暴だとは思いながらも、拳を打つようにドアをやはり三回、叩いた。
すると観念したかのように彼女はドア越しにやってきた。しかしドアは開けてくれない。]
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