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ん?
ああ。ホントに何も無いぞ?
……停電で冷蔵庫の中身が死んでるしなァ……
[トヨペットクラウンを車庫にしまい、ナサニエルは玄関の鍵を開け、ネリーをキッチンからひと続きの小さなリビングに通す。
――書斎の扉は、しまったままに。]
[途中で車を降りたハーヴェイに]
遅くなると危険ですから、
なるべく早めに済ませて来て下さいね……。
[そう声を掛けて送り出した。
一時ソフィーの自宅へも寄ってもらい、幾許かの着替えとイアンのシャツを一枚ボストンバッグに詰めた。
家を出る時には、今度はしっかり玄関に施錠した。]
[ネリーはナサニエルに玄関に通され、リビングに通された。少しは想像していたが、思った以上に空間が広く少し驚いた。彼の趣味は一体なんなのだろう。]
何もないだなんてそんな。停電は仕方ありませんけれど…でもかえってそのほうが今は助かるかもしれませんね。
[ネリーは掃除か何かを始めようかと思い、周囲を見回した。ふと、全く似つかわしくない飾り物を被せている電話に目を留めた。]
あら、ナサニエルさんもこんな趣味があるんですね。これ、どうされたんですか?
んあ……?ああ、それか。
それは、俺の祖母の手作りの電話カバー……らしい。
なんでも、俺の祖母はいくつになっても少女趣味の人だったそうだ。ピンクとかキルトとかレースが好きだったみたいでな……。
[自分の家の中をはしゃぎ回るように観察するネリーの姿を見て、ナサニエルは目を丸くしている――*]
[年頃の娘らしく、いろいろ見て回っている。少し不謹慎かもしれない。やがてネリーは落ちている彼の名刺に*気づくか――*]
[シボレーがバンクロフト邸に到着するまでの短い間、ソフィーは車窓を過ぎ行く町並みを眺め、*口数少なに時を過ごした*。]
─ローズマリーの車の中─
[ローズマリーの運転する車に乗り、「アンゼリカ」へと戻る。
道に不慣れだから、と言って彼が助手席に座ったことをローズは何も言わなかった。彼女自身の自動車なのだからそれも当然と思ったのか、それとも内心では訝しく思ったか。
だが、ローズマリーの表情は変わらなかった。]
[車中では二人とも殆ど喋らなかった。
それは主にギルバートが、独り思いに耽るように沈黙していたからだった。
たまにローズマリーが話しかけても、言葉少なに相槌を打つだけで、琥珀色の瞳は自らの内側に深く沈み込むような、暗い色合いに沈んでいた。]
[思いの断片は雪片のように降り積もる。]
[ニーナ。]
[ウェンディ。]
[行方不明になったと言う、ソフィーの父親。]
[土砂崩れの向こう側で起きているであろう惨状。
それは、彼の引き起こした災禍のうちでも、あまり類を見ない大規模なものと予想された。]
[あの家で一瞬だけ膨らんだ殺意の理由。]
[ヒューバートの娘シャーロットは何故殺されなければならなかったのか。]
[「アンゼリカ」につく直前、重い沈黙を破ってギルバートが口を開いた。]
──なあ、ローズ。
ヒューバートの亡くなった娘さんのシャーロットはどういう子だったんだろう。
[唐突に話しかけられ、一瞬「え?」というようにローズが驚いた視線を送った。]
いや。ちょっとね……。
あのハーヴェイという子は、ニーナみたいにヒューバートと親戚なのかな。随分と親しい間柄のようだけれども。
シャーロットが殺された夜も、ヒューバートの家に居たみたいだし……ね。
[ローズマリーが急に車を停めた。助手席に向き直り、驚愕の表情を浮かべて助手席の男を凝視する。
その驚きと強い疑念の視線を、男は平静な眼で受け止めた。]
……深い意味はないよ。
俺はこの町の人間について全然知らない部外者だからね。
君は……ハーヴェイをよく知ってるんだろう?
─酒場「アンゼリカ」─
[酒場に帰り着いて早々、ギルバートはローズマリーに申し訳なさそうに、ナサニエルの家に忘れ物をしたことを告げた。]
どうもあそこにライターを置いてきたみたいなんだ。
ごめん。元々はそれを取りにあの家に行ったんだよ。
ああ・・・うん。勿論マッチでもいいけどね。
ある人から貰った物で……形見の品なんだ。どうしても無くす訳にはいかないから。
[その言い訳をローズマリーはどう思ったのか。信じたのだろうか? それは彼には分からない。
ただ、ギルバートはローズマリーを抱き締め、しばらくじっと寄り添っていた。]
車を借りていくよ。すぐ戻ってくる。
[ローズの唇に軽く口接けた後に、ローズの瞳を真正面から見据えて真剣に語り掛ける。]
ローズ。
俺が出たら、家中の鍵は全部締めて戸締りを厳重にして、誰も入れるな。
どんなに親しい人でも、俺以外の人間には絶対に扉を開けちゃいけない。
お願いだ……分かったか?
[初めて見せる、険しい目。厳しい表情。
気圧されたようにローズが頷くと、一転して優しい微笑で改めてその額に口接けた。]
─ローズマリーの車の中─
[ローズマリーの車を走らせ、目指す場所へ向かう。]
[あれから囁き交わすように谺していた想念が一つの形を取り始めていた。]
[酷く単純で、馴染み深いそのかたち。]
何だ、簡単なことじゃないか。
[思わず独りごちた唇は、我知らず唇が嗤いの形に歪んでいた。]
―自宅1階―
[自宅の中をあちこち探索するネリーを見ながら、ナサニエルは全く別の所に思考の波を寄せていた。]
『"兄"……ねぇ……』
[ブランダーの雑貨屋にて――恐ろしいほど無防備な表情で、兄を呼ぶあのニーナの姿は、当然ナサニエルの視界に入っていた。そして、哀しげに影を探し求める彼女の声も耳に届いていた。
―――が。彼はあの時、それを完全に黙殺していた。
その理由はひどく単純だった。
「それは『契約』の外の出来事だったから」。
もし事前に連絡のひとつでもニーナが寄越し、ナサニエルに"兄"で在って欲しいという言葉さえ告げれば、ナサニエルは自分の持つ技量と「たましい」をもって、彼女の――愛する"妹"の"兄"として、彼女を抱き締めてくちづけを与えていたことだろう。
だが、「事前にそれは無かった」。
だからそれは、「起こらなかった」。
衆人の眼前で「契約」というものの存在と正体が暴かれることを畏れるといった感情さえも無く、彼の中には「何も無かった」。
――ひどく単純な話である。]
[もしナサニエルが、「あの時ニーナ・オルステッドが呼んでいたのは、貴方のことでは無い。」、或いは「"兄"を投影していた相手は別の誰かだった」と知ったとしよう。
その時の彼の反応は如何ほどだろうか。
おそらく「ふぅん」や「そう」といった、彼が常用している煙草の煙の一筋と同等の長さの感慨しか返ってこないだろう。
もし追加で何かの感慨を寄せろ、と誰かに言われたとしたら。おそらく彼はしばし思考に耽った末に、こう結論づけただろう。――今まさに彼が耽る、この一言へと。]
『彼女はおそろしく素直で純粋な"獣"である』
[出て来たナサニエルに、薄い笑みを浮かべる。]
ちょっと聞きたいことがあってな。
さっきは聞き損ねたんで…入ってもいいか?
[咥えた煙草を上下させるように、言葉を口にした。]
……別に構わねぇけど、何だ?
人に聞かれても平気な話か?
それとも、聞かれたくない類の話か?
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