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―― Date:2 昼/噴水 ――
[久仁彦が出かけていった後、騎兵は服や荷物の置いてある部屋を文字どおり引っ掻き回してTシャツに青紺のパーカーとジーンズ(やっぱり今日も袖や裾は折り返して)を探し出して着替えると、黄色いニコちゃんマークに似た顔の形をした子供っぽいリュックを引っ張り出してきた。
そこに、町の地図と赤ペンとハンカチ、幾許かのお札や硬貨が入ったふわふわウサギちゃんのがま口を入れると首から革紐に通した典雅な装飾の鍵(おそらく主の趣味だろう)をかけて、デッキシューズを履いて部屋を出て、町の中を幾度も、幾方向にもうろうろとして。
──そして現在に至る。
昨日も見かけたクレープワゴン、リュックからウサギちゃんがま口を取り出して、イチゴティラミスクレープを手に入れ、噴水に腰掛けてぱくりと食べるその様子の、なんと平和で風景に溶け込んだ姿なのか]
…平和だな。この街は。
[ポツリとつぶやいて、鼻の頭についてしまったクリームに気づかないまま子供たちが遊び、主婦がおしゃべりに興じるのを眺め]
[水の音、穏やかな喧騒。
それは自分の記憶の中を辿っても本当に掠れたような音でしか出てこないもの。
はくり、とクレープのイチゴをかじる。
とてもとても、甘い]
……俺の知ってるイチゴとは、違うんだな。
[自分が食べていたイチゴは、春にだけ実り、野生に育つそれは甘くもあるけれど酸っぱくもあり、こんなに丸々と太ってはいなかった。
それだけ、自分がいたところとここは違うところなのだと思い知る。
はくり。
イチゴは、やっぱり甘い。
エスプレッソのパウダーのせいで、時々、甘くて、苦い]
私はマスターの方で問題が起こらない限り、噴水に居る。
[右手で紙を受け取りポケットに収め、合掌をした。そのまま出て行こうとしたが、]
ご馳走さま、コウノ。
とても美味しい料理でした。
[ランサーは感謝を述べ、
「魔女の館」から*出ていった。*]
[記憶を辿れば、ノイズを伴って思い出されるのは剣戟と、悲鳴と、炎の燃え盛り爆ぜる音と───]
[──ザ───ザ、ザ─────]
………っ…!
[体が僅かに、びくりと揺れた。
鳩が子供に追いかけられて勢いよく羽ばたく]
どういたしまして。
[きちんと礼をいって出て行く後ろ姿を見つめる。]
いいところの王子様のような人ね。
名前と見た目からしてインド系のサーヴァントかな。
ライダー、キャスター、アーチャー以外で
当てはまりそうなのは……
バーサーカーにしては話がまともだったし
セイバーかランサーかアサシン……
……同盟を組めば教えてもらえるらしいし
考えてもしょうがないわね。
お客のいない今のうちに
彼に話しておかないと……。
[はたと気づき考える。
この同盟のことを伝えると公園に敵がいると
教えてしまうようなもの。
話を聞く前に飛び出していかれかねない。
うまく言うことを聞かせられるだろうか。]
気が重いわね……。
[ため息をつき、重い足取りで2階の彼の部屋に*向かった。*]
ー 樹那森林公園 発掘調査現場 ー
[迷惑な「放送」による来客に備え年のため周りの気配に気を配りながらトラップの点検、増設を行っている。
声の主に文句を言おうとする。]
めんどくさいことしないでほしいよ…あの…
[そういえば名前を知らない。連絡先も。]
…まあいいや。
ふぅ、そんなに急におもてなしの準備なんかできないよ。
[いくつかの魔力を消費させる魔方陣と死なない程度には炸薬を減らした防御手榴弾を本命に、わざと目立つように仕掛けたトラップを避けた者をそれに追い込むように配置してある。
起動は踏んだ重量、枝などの振動、ロープによる足掛け。
落とし穴、とらばさみ、重量物(石や岩、丸太状の朽ち木)の落下や振り子、鉄の矢。材料がなくなり近くに不法投棄されたゴミや日用品まで使い始める。
金だらい、テレビ、舌を出した顔でおなじみのペロヨン人形は首のくびれがロープに巻きやすく扱いやすかった。
やかん、ナベ、コンニャク、牛乳。牛乳は昨日買ってきた新鮮なものを使用している。
ランサーはいないがサーヴァントに見つかっても、ここにいればトラップを時間稼ぎに脱出くらいできるだろうと考えていた。
*額の汗を拭う*]
[無言のままクレープを食べ終える。
その表情には、僅かな憂い]
…考えすぎだ。
[ばかばかしい、と小さく呟いてクレープを食べ終える。
胃の中に落ちてゆくクリームが酷く甘ったるくて重かった]
−教会−
[魅力的な女性を招きいれ、紅茶を入れる]
仕事、大変だねえ。
本当は取ってあげたい所なんだけど、生憎僕は日本語の新聞はあまり好きじゃないんだ。
また気が変わったら頼むよ。
[カップを彼女の目の前に置く。
その瞳の力はまるで魔術のようだった]
[噴水に腰掛けた少年…。否、ライダーの姿がある。ランサーは何も言わずに噴水に近づき、ライダーの反対側に立ち、香野達を待つ。]
− テレビの前 −
[沖田総司との死闘の後、宗冬は手押し車作りに興じていた。映画を観ながらのながら作業である。]
これが完成すれば、私は歩く攻城兵器となろう。ふふふ。
[宗冬は思わずほくそえむ。
そう言えば娘が訪ねてきてしばらくして滝田真は家を出ていったが、これはもしや…]
妖術師殿も隅に置けぬということか。ふふふ。
イテッ!?
[金槌で思わず指を打ってしまった。ながら作業は良くないということが歴史的に証明された一瞬で*あった。*]
[手の中にあるクレープの包装紙をくしゃりと丸める。
食べ終わったならゴミ箱へ捨てて、どこかへ行こうと思い立ったがゆえに。
鼻の上、クリームをまだつけたまま。
もう一度くしゃりと手の中で丸め立ち上がったところで背中に気配を感じる。
それは天の報せ。
ゆるゆると、振り返る]
…。
[水の向こう側、見えた人影に僅かに瞬き]
― 東ブロック・テニススクール ―
[ 激しい戦いだった。サーブ→リターンエースだけで一話分が終わってしまうほどに激しいその試合はきっと3セット終了時でコミックス一冊分に達したであろう。週刊連載で概ね三ヶ月に匹敵する。なんということだ。]
まだまだだね。
[ 勝ててよかった。本音はこれだったが、余裕のフリをしてそんなものを表に出したりはしない。
握手を求める道場破りに内心やだなぁと思いつつも爽やかな笑みで応え、がっしりと握り交わしてから帰る姿を見送ったちょうどそのとき。ひとりの青年がコートに姿を現した。]
ああ、手塚くん。今日は早いね。言い難いんだが実は暫くの間、私事ながら忙しくてさ。今週の指導はひとおり君に任せてもいいかな。
大丈夫大丈夫。僕が見込んだ手塚くんだ。君なら絶対できるって。信用しているから。今度焼肉おごるから許して。
[ とかなんとか、サブコーチとして雇っている青年に有無を言わせず用件を言い渡し、久仁彦は素早く着替えてテニスコートを後にした。]
・・・・・・
君は、自分が売り歩く新聞についてどう思うのかな?
全てを知る権利と、知らずに生きると言う幸福。
誰かの不幸を知るが蜃気楼のように実感も無いのに、まるで体験したかのように涙する博識者と、身近な知人の不幸にしか涙を流せない傍観者。
この新聞は、果たして真実を伝えているのかね。
真実とは何なのか。
・・・・・・ いや、幸せそうな笑顔を浮かべて悲劇の知らせを売り歩く君を見つめていて、聞いてみたくなっただけだ。気にしないでくれ。
[暫くそうやって静かに紅茶を口にし、彼女は去っていった]
―昼・樹那病院前―
[マリアとすれ違って病院に向かうと、頭の中に耳慣れない男の声が響いた。]
……?
[周囲をきょろきょろと探したが、当然何もわからない。
それぞれに自分とは関わりのない意思を持って歩く人ばかり。]
んー、……ま、いっか。
お爺ちゃんが男の人の呼び掛けに応えるわけないし。
[本来の用件を済ませるべく、病院内に入っていく。]
…槍兵。
[水の音にまぎれて聞こえる声]
…よく、わからない。
俺にとってクレープといえば、蕎麦粉を使ったものが普通だ。
甘いものもあるが、基本的には食事だ。
[ゴミ箱へ紙くずを投げ捨てればそれはきれいに弧を描いて収まる]
…ああ、そうだ。
……昨日のあれ。美味かった。
初めて食べる味だった。…貴公は、あれがすきなのか?
[窓から彼女が歩いて去っていくのを見つめ、一人呟く]
悩む必要など無かったな。
全ては終わる。まもなく。
不幸も幸福も、この世界には残らない。
[セイバーからの魔力の引き上げが急激に上がっていく。間違いなくあの放送が原因だろう。その魔力の流出がむしろ*心地よく感じていた*]
−商店街・喫茶店−
[パリーン]
・・・・・・
[セイバーは激怒していた。何とこのアンリ・マユをも恐れぬ愚考。先ほどの侍のような清清しい戦いを想像させることの無い果たし状。
むしろ、ここ数日下界の娯楽にうつつを抜かし過ぎていた事に気がついたが即座に心の棚に上げ、全ては雑魚への激怒へ注がれた。
そしてティーカップを破損した。
店員から何かを心配する声が聞こえたが、そこは下界のしきたりに従い懐から千円札を一枚テーブルに叩きつけ店を出る]
ふふふふふふ・・・・・・ ふははははは!
よいではないか。それ程の命知らずとは知らなかったぞサーヴァント共!
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