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[風がナサニエルの背中を押す。
もしこのシャツを脱ぎ捨て、背中の翼を解放したら、俺は空を飛べるかもしれない――ハーヴェイの様子など目に見えぬかのように、ナサニエルは煙草の煙が昇ってゆく空を見上げながら柔らかな夢想を描いた。]
[一筋の紫煙を吐き出した時、ナサニエルの耳にハーヴェイの言葉がそっと侵入する。]
ユーインと……?
[小さな声で問われた内容には答えず――否、答えようとしてもその隙を与えられない何かを感じ、ナサニエルはハーヴェイに近付いた。]
ハーヴェイ。お前……どうした?
顔、さっきより青いぞ………?
[ナサニエルは灰皿の上で煙草の火を消し、メンソールのにおいを身体に纏ったまま、ハーヴェイの顔を*覗き込んだ*]
同じ、寝室に?
[一瞬イアンと自分との関係と重ねてしまいどきりとしたが、ルーサー・ラング牧師の事件の後であり、16と言うまだ幼さを残す歳である事から、然程不審に思う事無くすんなりと受け入れた。]
では、ヒューバートさんに気付かれる事無く、
事を成し得た者がいるという事ですね……。
[ヒューバートを疑う気持ちは一切なかった。
彼がどんなにシャーロットを愛し慈しんで来たかは、彼と彼の娘が一緒に居る所を見た事のある者なら、よく知っている事だった。]
[しかし次の言葉には]
ハーヴェイさんが──…?
[問うように、小さく呟く。
では、彼なのだろうか。
一見すると大人しそうな、整った顔立ちの青年。
彼に、何か動機が?]
『昨晩の出来事にやましさがなかったとしても、今は――』
『あの暗がりの中で私は……』
[微かに首を振り、意識から遠ざける。――暗冥の中のその甘美な悦楽の記憶を]
ハーヴェイ?
ハーヴはロティを気に入っていた。
だから――
そんなはずはないさ……
[私は彼を信じていた。だが、奇妙なことに、そういえば彼の姿は見あたらなかった]
[ソフィーは先日のハーヴェイとの会話を思い出した。
自分と同じく、アンゼリカで聞こえた声に動揺していた。]
『違う……。』
[あの時の、気まずさから逃げるように冗談を言っていた青年は、とてもこれから人を殺そうとしているようには見えなかった。]
そう──、ですよね。
ハーヴェイさんはそんな事をする人には、見えない……。
[だからヒューバートの言葉には、素直に頷いた。]
[事件についてひとしきり話をした後、イアンの捜索や町の今の状況の確認に出ることにした。
彼を連れて帰ることを考え、シボレーのセダンを出す。
なにしろ不穏な事件ばかりが起きている。今の状況を考え、ショットガンの入った布のケースを肩に担いだ。シャツの上からホルスターをかけ、拳銃を吊る。ジャケットで拳銃は隠れた。
一瞬ソフィーに銃を持たせるべきか迷う。シャーロットを襲った惨劇が脳裏を過ぎった。]
ソフィー。君は拳銃を扱えるかい?
そうか、わかった。
[扱い慣れていなさそうな彼女にかえってぎこちない動きを強いることになるかもしれないと考え、予備の手持ちを持っていくことでその代わりとすることにした。
彼女をシボレーへと導き、車を出した]
―車内―
[助手席に人の気配があると、そこにシャーロットが座っているのではないかと錯覚してしまう。それだけ、彼女と共に積み重ねた時間は長かった。
イアンのことや町で起きている事件について互いに考えを巡らせていたのだろう。車を走り出させて姑くの間、ソフィーとの間には沈黙が横たわっていた。
幾ばくかの逡巡の後の幽かな聲が、沈黙を破った]
ソフィー……
父親を持つ娘のあくまで参考意見の一つとして聞きたいんだが……
――娘にとって父親とはどういうものだろうね
不躾な訊き方になるけど、
イアンのように働かなくなってしまったらどんな風に感じるものだい?
あるいは――
父親が自分に強すぎる関心を持っていたとしたら。
[ヒューバートに促されてロメッシュに乗り込む直前、崖に張り付くように建つバンクロフト家の建物を仰ぎ見る。]
シャーロット───。
[結局彼女とは雑貨屋で話したのが最後となってしまった。
贈ったドレスは着て貰えたのだろうか。
僅かな時間に彼女との様々な思い出が甦り──、
その死を悼むように、しばし黙祷してから助手席に乗り込んだ。]
[強張った声音。
ハンドルを握る手が、その手触りを確かめるようにそっとなぞられた。]
……ソフィー…
たとえば、の話だよ。
[憂患を和らげるような柔らかな口調。
眼差しは遠くを見つめている]
[何とか平常心を取り戻し]
父親とは何か──、難しい質問ですね。
私にとっての父は………、…何でしょうね。
私が幼い頃の父は母ばかり大切にしているように見えて、
私は膨れてばかりいましたけれど……。
母が死んでからは、仰ぐべき師であり、
同時に、今にも壊れそうで、守ってあげたい人でもありました。
何でしょうね、多分、普通とは違うのかもしれません。
ただ、父がどんなになろうとも、
心を閉ざしてしまってからも、父は、父でした。
つらくは……
――ないのかな
[それがなにを差すものか、あえては指摘しなかった。
客観的にみて、父を支えて一人で店を守っていかなければならないことは大変なことではあっただろう。]
[それは本音だった。
二人の間に何が起きようと、それだけは越えられない事実。
自分は、あくまでも娘である事から逃げられない。]
──すみません、うまく言えません。
[申し訳なさそうに苦笑した時、隣でハンドルを操る男の柔らかな口調が耳に届き、ソフィーは顔を上げた。]
……そうか。
そうだろうね。つまらないことを――
[――聞いて済まなかった、と私は詫び、微笑んだ。
思慮深い緘黙。その閑寂の中には、言葉にされないいくつもの意識が交差していたように思う。
私は、意識のチャンネルを変えるように、カーラジオのスイッチを入れた。
ウェイン・ニュートンが『Daddy, Don't You Walk So Fast』を唄っていた。
シボレーは今は荒涼とした町の中へと*消えていった*。]
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