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お、気前いいじゃん。ありがとう。
グラスと一緒に埋めておこうかな。扱い方も教えてくれてサンキュー。
……じゃ、また明日な。
[背中を向けたままクインジーに手を振ると、*広間を後にした*]
[紡がれかけた言葉も
赤く染めてしまった手も
名前を呼んでくれる声も
聴こえないのか届かないのか
碧い双眸の浮かべるは人形の瞳か硝子球か
見開かれた瞳から――]
[ふわり]
[白い結晶が零れて]
[碧の双眸から零れ落ちる白の煌めき]
[ゆっくりと青の瞳が瞬き揺れる]
[空から舞い降りる結晶は激しさを増し]
[ゆらりとランタンの焔が揺れる]
…………メイ?
[再び、少女の名を呼んで、そっと、手を伸ばす]
[落ちた結晶を、掬い上げようとするかのように]
違うよ…お婆ちゃんは…そんな事しない…
[途切れ途切れに紡がれる言葉は無意識か]
[ふわり]
[ナサニエルの掌に受け止められた結晶
体温でも溶ける事無く其処に留まり
名を呼ばれ見上げる瞳は何処か焦点がぼやけた硝子球]
…ナサニエル?
[青い瞳を覗く瞳は徐々に光を取り戻して
我に返り見開かれた碧い瞳はまた揺れる
――ガサッ
口元へ引き寄せられた手から落ちるバスケット]
違う…違う…の…
[ゆるゆると弱弱しく首を振って]
[扉を開けると、佇む人影がふたつ。
吹雪く中でただ立ち尽くすナサニエルとメイを見つけ、様子がおかしいことに気付くが]
…寒いのに何やってんだ。
戻ってこねーから、みんな心配してたぜ?
とにかく、まず中に入れ。
[何も聞かず、とりあえず部屋の中に招き入れる]
[途切れ途切れに紡がれる言葉も]
[少女が首を振り否定する理由も]
[彼には理解出来ていたか否か]
[それでも]
…うん。
[己の掌に落ちた結晶へと一度視線を落とし]
[揺れる碧の瞳に静かな青の瞳は向けられる]
[――うん
ただ一言に見上げる目は細められ睫毛が震える
ナサニエルの視線が掌に注がれる間も目を逸らせず
青の瞳の静かで戦慄く桃色の唇はなかなか言葉を紡げず
扉が開く]
あ…
[ゆっくりと向き直ればクインジーの顔を見て
脅えたように見開かれた碧い瞳はまた揺れる
目を逸らすように落としたバスケットを拾い上げて]
[...はさっさと室内に戻ると、キッチンで甘くて暖かいミルクココアをふたつのマグカップに用意し、テーブルに置く]
ほれ、暖炉の前に来て火に当たれ。
風邪引いちまうぜ?
[しかしその場から動かず、怯えたようなメイの表情を不審気に見て]
何だ?別に取って食ったりはしねーって。
ぐずぐすしてっと、米俵みてーに抱えあげちまうぞ?
[つかつかとメイに近寄ると、バスケットを持っていないほうの手を掴み、部屋の中に引き入れる]
[結晶が仕舞われるのに視線を移し見つめて
声にナサニエルを見上げれば戸惑いながらも頷く]
…うん。
[もたもたしている間にクインジーの気配が近付いて
脅えて動けないままに隻眼を見上げる
捉まれた手は矢張り氷のように冷たかっただろう]
駄目っ!
[思わず振り払ったけれどきっともう気付かれてしまったと
かばうように捉まれた手をもう一方の手で覆うも
泣き出しそうな表情で立ち尽くして]
[クインジーがメイを連れて中に入るのを見れば]
[彼もまた、ランタンの火を消して、扉を閉めて]
[遅れて広間に向かう途中、聞えた少女の声に、瞬く]
[振り払われた手のあまりの冷たさに、一瞬どきりとしながらも]
ほら、そんなとこ突っ立ってんから、そんなに冷えるんだ…。
[有言実行、ひょいっとメイを抱えあげると、部屋の中に運んでゆく。
触れた所から伝わるメイの体温が、沁みるような冷たさであることに気付かない振りをして]
…ココア、大丈夫か?
[暖炉ではなくテーブルの椅子にメイを下ろすと、マグカップを目の前に置いた]
ナサも入れ。ココア飲め。
…ん。
[クインジーに一つ頷き、メイの様子を些か気にした様子ながらも]
[タオルを取って来れば外套に付いた雪を拭い、暖炉前の椅子に掛け]
[もう一枚はメイの傍のテーブルの上に置いて]
ありがとう。
[寒さに赤らんだ手で、白いマグカップを包む]
ごめん…冷たい…から…
[一歩、後退れば背後の気配に振り返る
――瞬く青
誰に対してか何に対してか桃色の唇が開きかけたところで
ふわり、一瞬の浮遊感に訳が判らず瞬き]
…え?
[クインジーに抱きかかえられているのに気付く頃には
もうテーブル席の椅子におろされていて]
あ………ありがとう…
うん、ココア、好き。
[ふんわり微笑もうとしたけれど巧くはいかなかった]
[幾分落ち着きココアに手を伸ばすメイを見て安堵し。
しばしためらった後、ナサニエルに尋ねる]
…何かあったのか?
[自らはキッチンからテキーラを持ち出し、ショットグラスに注いで飲み始めた]
[ココアのカップを桃色の唇に寄せふぅふぅ
視界の端に置かれたタオルにゆるりと視線を移し]
ありがとう、ナサニエル。
[漸くケープも羽織ったままなのに気付き
脱いで椅子の背もたれにかければタオルに手を伸ばす
クインジーの問うのにゆっくりナサニエルへと視線を移し]
[濡れた帽子も椅子の角に引っ掛ければ青の髪が僅か揺れ]
うー…ん…
[クインジーの質問には曖昧な声と共に視線を巡らせるも]
…何も…?
寄り道、して…メイと、会ったから…
一緒に…戻って来て、…途中、吹雪が強くなった…
…………それだけ。
[淡々とした口調で答えれば、再び、カップに口を付ける]
[青い髪が揺れるのに碧い瞳が揺れる
ナサニエルの答えるのを聞けばタオルを頭からかぶり]
…迷子になっちゃって。
[小さく呟いて首元で丸まっているリリィを拭いてやる
碧い髪からはパタパタと水滴が零れて]
[ナサニエルの話はどうにも要領を得ず、さすがに何も分からないが、この状況でメイに何かを聞けるとも思えず]
そうか。
[とだけ答え、テキーラを呷る。
原因はナサの送り狼じゃなく、俺にあるっぽいのか、と思いつつ。
しかし心当たりがまるで無くて戸惑う]
[テキーラの熱が食道を炙るも、肝の底が冷えたような感覚が残り、すっきりとしない]
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