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──養鶏場の近く・車内(回想/山崩れの前)──
[元々、叔父の頭が弱かった事もあって、副主任がしっかりとしていた為、養鶏所での仕事はすぐに終った。
本の様に背表紙が厚く黒い手帳。日記の続きをエリザは綴っている。今、ここで全てをカミングアウトしなくてはならないと思っているかのように。
雨足が強くなった事に気付き、一度事務所に戻って自宅に電話をかける。家族が心配しているかもしれない。どちらでも良いわと言った際、マーティンが取り次いだのはシャーロット。]
…大丈夫、ママも今から帰るわ、ロティ。
本当に酷い雨ばかりね。
[車内に戻り、日記を書き終え手帳を閉じ、エリザは息を付く。
夫と娘の居る家に帰りたい、と少し彼女は思った。日記の内容が気になるのか、かばんには仕舞わず助手席に乗せたまま、車を発進させる。
その手帳が一時間もたたずに、アーヴァインに遺品として回収される事を*彼女は知らない*。]
──回想 - 7年前──
[事故の起きた時、私は寝入ってしまっていて、気付いた時には全てが終わった後だったから、何が起きたのか詳しくは知らない。
ただ、車はガードレールを突き破って崖を滑り落ち、途中の木の幹に衝突して爆発、炎上。母の遺体は見る影も無く焼け焦げて顔もわからないような状態だったとだけ聞かされた。
父はろくに話も出来ない程憔悴し、私は全員に負った打撲の治療の為診療所に入院していたから、母の命を奪った事故の原因が些細なハンドル操作ミスだとわかったのも、事故から一週間以上が経過した頃の事だった。]
[母の葬儀の喪主を務めるのは本来父である筈だったが、その父が一向に回復しないので仕方なく手を差し伸べてくれたのが父の叔父にあたる人だった。
食事も満足に摂らず部屋に閉じこもりきりの父に代わって叔父は手際良く葬儀の手配を進めてくれた。
葬儀の当日になっても部屋から出て来ようとしない父は、他人から見れば取るべき責任を放棄した情け無い男に見えたかもしれない。
しかし、生前の二人の仲睦まじい姿を最も間近で見続けて来た私には、父の深い悲しみが痛いほどに伝わって来る気がして、なんとかして父を葬儀に引っ張り出そうと口角泡を飛ばす勢いで開かない扉に向かって声を張り上げる叔父を制し、私は一人で葬儀に参列する事を決めた。]
[葬儀を終えて戻ったソフィーを迎えたのは、明かりの灯らない家と静寂だった。
父の部屋を覗くと、扉に背を向けオブジェのように座り込んだままの父の背中が見えた。
一言声を掛けようと思わなくもなかったが、ソフィー自身まだ母を失った悲しみから立ち直るには日が浅く、慣れぬ葬儀で心身ともに疲れ果てていた為、一先ず休息を取る事にした。
部屋に戻ったソフィーは、靴を脱ぐのも忘れてベッドに倒れこむと、数分と経たぬうちに眠りの淵へと落ちて行き、次に目を覚ました時、まだ辺りは暗いままだった。
腕時計を見ると、まだ2時間しか経っていない事が判る。
重い身体を引きずってキッチンに立ったソフィーが、数日間何も口にしていないだろう父の為、ボイルしたソーセージとザワークラフトをトーストに挟んだだけの簡単なものをトレイに乗せて再び父の部屋を覗いた時、居る筈の父の姿は*消えていた*。]
─回想─
[ローズマリー達を待ちながら、彼はまた独り思いに耽る。]
[ギルバートは、「人狼」が生来持つ音声を伴わずに発する「声」──同族間の微弱なテレパシー──は、野生動物の間で普通に見られる鳴声によらない意志伝達と同じと考えていた。
彼はその声を自在に発することが出来たし、また強制的に意識から遮断することも、「耳に入ってはいるが聞いていない」状態にすることも可能だった。
が、未熟な「人狼」は往々にして自分の発する「声」や「聴覚」を意識的に制御できない。その傾向は、成長してから「人狼」に転じた「先祖帰り」に最も良く見られた。
子供の時から段階的に発達していく生まれつきの「人狼」や、頭の柔軟な思春期前に血を開花させた幸運な者達と異なり、成長しきってからの「先祖帰り」はそれまで無かった感覚や能力を一挙に持たされた結果、非常に混乱してしまうのだ。]
──酒場2階 - ローズマリーの部屋──
[ローズマリーの部屋に運ばれたイアンは、
車上とはうって変わって落ち着きを取り戻していた。
人が来ても焦点の結ばれぬ瞳は相変わらず。
見慣れぬ部屋にも、目の前の娘にも一切興味を示さず、
ただ、普段座っている揺り椅子を揺らす如く、
一定の周期で酒場の床を足先で*押しているのみだった*。]
[それにしてもこの町には「血族」が多い。側に寄っただけで人狼の血を引いているとはっきり分かる者だけでも数十人は居る。それ以外にも微妙に感覚的に引っかかる者が多数居た。かつて彼が訪れたどの村々よりもその数は多いだろう。
更に近世になっては人間の移動が激しくなってからは、一地域で人狼の血が拡散せずに保たれるということが少なくなってきてきた。もはや一村に「血族」が固まって存在している時代ではないのだろう。
その代わり、ある一定人口以上の街ならば、何処に行っても「血族」が居た。非常に希少だが、「先祖帰り」に遭遇することもあった。]
[この町には一体どれだけの数の「血族」が居るのだろう。
町の横たわるこの谷間には、それらの放つ微妙な思考のノイズ、声にもならない音が満ち満ちていた。
そのために、本来の「人狼」が放つ「声」が拾えないでいる。変化しきっていない未熟な「人狼」の発する声は小さ過ぎて、ノイズにかき消されてしまっていた。]
[だがそのノイズも、時間が経つにつれ次第に薄れてきた。]
[彼は目覚めたばかりの「人狼」に向かって、遠吠えを放った。
その「声」は人間には決して聞こえないだろう。
が、「人狼」ならばそれは、耳を圧する咆哮に聞こえた筈だ。]
─回想─
[しばらくしてローズマリー達がソフィーの父を連れて戻ってきた。
「ギルバート」と名乗る男は、何事もなかったかのように二人を出迎え、2階に彼を運ぶのを*手伝った。*]
――酒場・アンゼリカ――
[帰りの車中、わたしは言葉にならない声を上げるお父様の気持ちを落ち着かせるために、後部座席から身を乗り出すような恰好になりながら幾度となく話し相手になった。
元々奉仕は嫌いではなかったし、人の役に立ちたいと幼心から抱いてシスターという道を歩もうと決意していたので、お父様の相手は苦痛ではなかった。
むしろ教職では味わえない充実感を与えられたようで、とても満ち足りた気持ちになっていた。]
[やがて到着した酒場。二階へと運ぶ動作はさすがに筋力低下が見られる身体とはいえ壮年期の男性は女手には重く、ギルバートの…男手の助けがこれほど頼もしいと思ったことはなかった。]
あの…ありがとう。お陰で助かったわ、ギルバート…さん。
[ロッキングチェアに座らされたお父様が、さして混乱もせず静かに宙を見つめている姿を確認してから、わたしは改めて彼にお礼を述べた。その時見つめた瞳に。背筋がざわついたのは気のせいだっただろうか?]
――二階 ローズマリーの部屋――
[愛想よく微笑むギルバートから静かに視線を外し、食事の準備をするといって階下に向かったローズを見送って。わたしはソフィーの寝顔を見つめた。
寝汗で額に張り付いた髪筋を梳いてあげる。あどけなさが残る唇に視線が止まった時、わたしは先程お父様に施した行為を思い出して溜息を吐いた。]
[あれはいつの頃だったろうか。ヘイヴンという町に慣れ始めた頃、わたしは村にある小さな仕立て屋に通い詰めるようになっていた。勿論初めは服代を少しでも浮かせようとしてだったが、時が経つにつれ店を切り盛りしている年下の女性と意気投合した結果とも言えた。]
[ソフィーと名乗る女性は同性のわたしから見ても好意が持てる女性で、嫌味がないところにとても惹かれた。と言ってもこれは恋情対象ではないのだけれども。
時同じくして親しくなったローズとは正反対の女性。わたしはローズには性愛と軽蔑を、ソフィーには敬愛と私淑の念をそれぞれ持ち合わせていた。]
[そんな憧れだった彼女の、心の影を覗かされたのは偶然だったのだろうか。それとも緻密に計算された神から与えられた必然だったのだろうか。]
「父と関係を持っているの…」
[そのような意味合いの言葉に、当時のわたしは酷く神を恨んだ。嗚呼、何故主はこれ程まで人々を苦しめるのかと。
そして願った。もし許されるのなら、このわたしがソフィーの…彼女の苦しみ全てを請け負ってしまいたいと。]
[だから先程、わたしは少しも躊躇う事無く彼女のお父様と口付けを交わすことが出来た。時が許したのなら、そのままわたしは躰を許していた事だろう。それが彼らの…その場限りな救いにしかならなくても]
……それでも主は…純潔を穢すとまぐあう行為を忌み嫌いますか?
[寝苦しそうに寝返りを打つソフィーを見つめ。わたしは恨みとも取れる言葉を、天に向かって吐き出していた。]
電気…切れたっぽいな…何でだろ?
冷蔵庫も缶詰はいいとして…他のモンは食べないと腐るなぁ。
電話も駄目、か。
[ガチャガチャと電気製品を弄るが全滅。ため息をついてどうするかと思案にくれる。外は相変わらずの天気で更に憂鬱にさせるが、ここで物に当たっても仕方ない]
どうするかな。まずはこの服洗うのが先決か。
[幸い水道は大丈夫なようだったので、服を換え、きていたものは手洗いで洗い出す。乾くのはいつになるか分からないが]
先生もシャロもあれから大丈夫だったのかな。
雨やんだら気晴らしにでも先生の所行くか。
[借りてたアトリエに製作途中の模写があったはずだし、と一人呟き]
―回想―
[左腕を庇うように押さえていたステラ。災害への対処せざるを得なかった労苦は彼女の体に負担となって降り積もっていたのではないか。あるいは、行方不明者の捜索を手伝って怪我でもしていたのだろうか。
そうでなくても、元々体が弱かったことを思い出す。
この雨の中徒歩で返してしまったことを内心で悔いていた。
ギネスビールを置き受話器を取ると、手帳を頼りにほとんどかけたことがないその番号を回した。3コール、6コール。彼女は出ない。
電話口でどれくらい佇んでいただろうか。
不在か、あるいは電話にでるつもりがないのか。]
……ファファラ
[帰宅の途上でなにかあったのだろうか……膨らみそうになる不安を打ち消す。今更、彼女を追いかけるわけにはいかなかった。彼女は意志の籠もった足取りで走り去っていったのだ。
時に儚げに見える彼女の、しかしその奥に感じる芯の強さを信じることにした。それは、いかにも都合がよく狡い考え方だったに違いない。それもまた、自覚していることだったが。]
―回想/少し前―
[雑貨屋から車を巡らし、ポットをローズに返しにアンゼリカに寄った。私はそこでソフィーが倒れたことを耳にした。酒場に入ってよいものか逡巡していたシャーロットにも話し声は届いていたかもしれない。
なにか手伝いを申し出ようとも思ったが、ソフィーを運んだのはハーヴェイで、ギルバートもそこにはいた。男手は足りているようだった。
「なにかあったら気軽に電話してくれ」とだけ伝えると、娘の肩を抱いて車内へと戻っていった。]
―アトリエ・一階作業場―
[シャーロットは自室にでも戻っていたのだろうか。彼女の姿はそばになかった。
私は雑貨店から持ち帰ったダンボールを抱え、吹き抜けにかかる白い金属製の螺旋階段を降りてゆく。二階分の天井高のある作業場に降り立つと、床にダンボールを置き中身を出した。]
「二ダース!? 二個じゃなくて?」
[正気を疑うようなレベッカの表情を思い出す。
私がダンボールの中から取りだしたのは、卑猥そのものの形をした機械仕掛けの屹立、ディルドだった。電動モーターが内蔵されたそれはリモートコントロールができる最新型のもので、形態上邪魔になるコードなどの付属物ははみ出てはいない。
いくつかの種類を参考品として購入し、分解してみた結果最も目的に叶ったそれを私はひとまず2ダースほど購うことにしたのだった。]
これをレベッカの思い出にはしたくないな。
ていうか死にてえ……
[軽くどんよりした気持ちになったものの、電源スイッチを入れ、蠕動し始めたそれを見ているうちに純粋に機械的な好奇心にいつしか囚われる。その動きから派生する連想が翼をもたげ、空を羽ばたき始めた。
微かな翳りは一瞬で掻き消え、歓娯が胸を膨らませた。]
……おもしろい
[箱から取り出す僅かな時間ももどかしく、次々とディルドを取り出してゆく。
少し離れたところには、水族館の水槽に用いられる透明の強化アクリルを使って自作した、充分な強度のあるテーブルが置かれている。足につけられた台車用のキャスターのストッパーを外し、作業場の中心に移動させた。]
[24本のディルドはアクリルのテーブルの上に、横隊陣形の兵士たちのように等間隔で整然と整列していた。念のため底部を両面テープで固定する。
私は世紀の-あるいは性器の-一瞬を前に深呼吸し、無数のスイッチをONにした。]
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