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[どうしようか悩む。ネリーにはする事が多すぎる。ボブの行方、シャーロットやイアンの事。もしかすれば自分の身も危ないのかもしれない。]
あの、私はどうすればいいでしょう…
ウルフハウンド……?
[それはどんな犬種だったか。
以前叔父に見せて貰った記憶を引っ張り出す。
確か、比較的愛らしい容姿の犬だったように思う。]
…はい。
でしたら、途中で家に寄って頂けますか?
父の洋服を持って来ます。
[少し安心して、頷く。]
ありがとう、ソフィー。
そうしてくれると、私も安心できる。
君に何かあったら、イアンに申し訳が立たない。
[ハーヴェイの言葉には]
折角うちに来てくれるのに無用の心配を煽ってしまうことになりそうだが、うちは警備は厳重とはいえないんだ。
敷地と建物の広さに比べると、使用人が随分少ないものでね……
ボブに何があったかは想像もつかないよ。
[娘の訃報を告げるヒューバートの辛そうな表情には]
ヒューバートさん……。
[慰めの言葉が見つからず、哀悼の意を示すべく瞳を伏せた。]
ネリー、ボブがすぐ戻ってくる宛がないんなら、しばらくうちに来てはどうかな。
来客が増える分、手伝ってくれる人がいると随分助かる。
もちろん、給金も出すから。
――雑貨屋――
[ソフィーにそれとなくイアンの状態を尋ねたわたしは、逆にソフィーから思いもよらない質問を投げかけられた。]
昨日の朝…此処に…?
[彼女の声は小さく、まるで誰にも聞かせたく無いような雰囲気を纏っていて、つられて私も小声で聞き返す。
そして記憶を辿る――
昨日の朝…それは……]
[しかし返答に困り始めるより先に、ソフィーはわたしに対する質問を切り上げてしまう。口を噤む彼女にそれ以上深く口出しする事も無いだろうと思ったわたしは、お茶を濁すように曖昧に相槌を打ち、その話は無かった事にした。]
旦那様はどうなってるか…動物達も残っているから時々様子を見に行かないといけないのですけれど…それでもいいのなら、少しお邪魔してもいいですか?
そんな、給金は別にいますぐは…!
[ネリーは気がつくとソフィーの手を横から握っていた。シャーロットが何者かに襲われたなんて信じられない、否、行方が掴めない人が何人もいるのだ。
少し暖かい感触が欲しいと思った。]
皆でヒューバートの家に、ねぇ……
[ぽつりと呟くと、さすがに長時間のニコチン切れに痺れを切らしたのか、ポケットから煙草を取り出し、火をつけた。]
………悪いが、俺は気が乗らねぇなァ。
確かに皆で集まってたら気は楽になるかもしれねぇけど。でもヒューバートの家が……それこそ誰かに焼き討ちにでも遭ったら、皆で共倒れになりかねねぇだろ?
特にあんたの家はこの辺じゃァ派手だし、人の出入りも多い。いつ狙われたっておかしくない。
皆で交替で見回りでもしようってンならまだ分かるが……な。いざ暴漢なり何なりが襲ってきた時、戦力になるのが何人居るかって話だよなァ?
[その後ソフィーから帰ってきた父親に対する情報は、わたしの想像した物と対して変わらず。そうは遠くへ行けないだろうと結論付けたナサニエルの言葉に、わたしも素直に頷いた。
猟犬の鼻を使いイアンを探し出すというバートの話を耳にしつつ、ネリーの主人が行方不明の事、そしてシャーロットが命を落としたことを集まった面々の口から聞き、わたしは自然と身震いが起きるのを感じた。]
『せんせいの死といい、リックとウェンディの話といい…ここ数日で随分物騒な事が立て続けて起きているのね…』
[自然と蒼褪めていく表情。しかし誰にも悟られたくは無いと気丈に振る舞いつつ、バートのソフィーとネリーを招き入れる話には、無言ながらも彼女達の後押しをしたいと思った。
ソフィーに至っては父親の行方も気になる。いざとなったら指揮を取れるような人物の許に身を寄せていた方が彼女にとっても安全だろう。そう思いながら。]
ヒューバートさん、はい。それではある程度目処が立つまでお願いしてもいいでしょうか…?
[さらにナサニエルに目を向ける。ギルバートと並んで屈強そうだ。
ひとつ気になる。彼は何を生業としてるのだろうか…?]
[ナサニエルの言葉を、よく理解できない、というように肩をすくめて受け流す]
単純に、リスク管理の問題だよ。
焼き討ちされたとしよう。一人で居るより、複数の方が気づける可能性が高い。
状況への警戒能力、情報の共有、役割の分担、精神的安定、どれをとっても孤立しているより遥かにいい。
常識的にはより安全な方法なのだろうと思うけどね。
じゃぁ是非戦力一人としていらしたら?ナサニエルさん?
ナサニエルさん俺に帰り道で野たれ死んだら後味悪いって言ってましたけど俺は一人のアンタが襲われたらそっちでも後味悪いですけど?
[シャーロットが死んだというくらい気持を振り切るように軽い冗談もこめているだろうか]
「ボブに何があったかは想像もつかないよ。」
[ふと耳に届いた言葉。
その何気ない一言に、何故か胸騒ぎを覚えた。
そして、それとは何の関係もないが、不安に喚起されたように、シャーロットが死んだ夜、ハーヴェイ青年がバンクロフト邸に泊まっていた事を思い出した。]
『──もしかしたら、
私は間違った選択をしてしまったのでは……?』
[不意に、漠然とした不安に囚われ、逃げるように空を仰ぐ。
先程まで晴れていた空は再び分厚い雲で覆われ様としていた。]
エイヴァリー先生。
貴女もよければ……
一時的にでも。
考えておいてください。
[今は、過去のことが露見しないよう気を遣わなければならない妻は家には居ない。彼女の身を案じる気持ちからそのような提案が自然と口から出ていた]
シャーロットの事は…その…なんていったら良いか…。
あの時の姿が…最後だなんて――
[目の前で気丈に振舞っているバートは、健気に見えた。わたしは会話の邪魔にならないように、そっと彼へ弔いの言葉を探したけれど見つからず…。ただ視線を伏せたまま彼の心情を推し量った。わたしには子を亡くした親の気持ちと同量の悲しみなんて、到底持てる筈も無かったけど…でも、出来る事ならば彼と悲しみを分かち合いたいと思った。
勿論無理な事は百も承知で――]
ふぅん………
ま、正直、俺はどっちでもいいけどね?
[耳に指を突っ込み、眉をしかめた。]
……っていうかさ。
単純に俺は「みんなで一緒に暮らしましょ」っていうの?団体行動ってイマイチ得意じゃないし。
そんだけ。
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