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[ピックアップトラックが、脇に逸れるのを見、
猛スピードで、その横を駆け抜けていく。
運転は乱暴。あわや当逃げといったところ。
小石を2,3トラックに弾いたかもしれないが、
意に介さないように、通り過ぎていく。]
[男は、トイレの中に吐瀉物とメモ紙をまとめて放り込み、深く暗い水の渦の向こう側へと押し流した。
処刑しないでくれと哀願する罪無きメモ紙たちもちらほらと見受けられたが、男は冷ややかな目で彼ら(或いは「彼女ら」だろうか?)を渦の向こう側へと容赦無く送り続ける。
――このような事態には、多少の犠牲はつきものだ。致し方無い。]
[次々と吐瀉物と惨劇に巻き込まれたメモ紙を渦の中に押し込むうち、渦の方が疲弊したらしく、時折『ゴボリ』という無様な音を立てて渦を巻くのを止めようとした。
しかし彼は、渦に対しても容赦はしない。何度も何度も繰り返し渦を喚起させ、酷使し、彼(或いは「彼女」だろうか?)をワーカホリックに仕立て上げる。]
[そして長い格闘の末、男はついに吐瀉物(と可哀想なメモ紙たち)を、自分の目の前から抹殺してみせたのだった。]
[ドアが開く音と同時に、聞き慣れた甘い声が耳許を掠る。
くすぐったい感触にわたしは僅かに目を細めて、親しい友達としてのハグを行うべく腕を伸ばした。]
元気そうで何より。店も綺麗に片付けたのね。
大変だったでしょう?掃除とか…。
[労いの言葉と共にわたしは辺りを見渡し、彼女の一番乗りという言葉の意味を再確認する。]
[簡素な風呂場でゴミ箱と手を洗い終えると、男は書斎に戻り、黒い革の手帳を読み始めた。]
[『エピソードを記憶する能力』に一部の欠損が見られる彼にとって、メモ紙はそれを補う貴重な戦力であった。(先ほど、たくさんの『兵士』を渦潮の中に処刑した経緯はあるが、多少の犠牲は避けられない。致し方の無い話である。)]
今日は………
[スケジュールを見直し、今日の方針を決める。ボサボサの髪を整え、アイロンの掛かった襟付きの白いシャツに着替えた。]
[書斎に鍵を掛け、家の玄関にも鍵を掛けると、男はいずこともなく歩き出した。]
[ステラに笑顔を返して]
たいしたことはなかったわ。
ただね、食材があまりないからメニューが少ないのよ。
お酒なら普段どおりにだせるんだけど。
なにか飲む?
書生 ハーヴェイ が参加しました。
やっぱろくなことにならないな、へイヴンって所は。
[久しぶりに自宅へ戻って見れば災害にあう羽目に。
やはりこの土地は自分には災厄しかもたらさないのかもしれない。
外の状態を再確認した後、窓をのぞきながら一人ごちた。
深いため息をつきながらわずかに取り散らかしたリビングを片付ける。しかしその家は一人暮らしの為には何もかもが大きすぎ。
両親が越してから幾分長い月日が経ち、自分が帰宅してからハウスキーパーしか足を踏み入れなかった自宅。自身が戻って数日は経っていたけども、相変わらずがらんとしている。]
…広い家だったんだな、ここ。
俺は小さい所が好きだったんだけど。
[落ち着いたら早く戻ろう、とまたぽつり呟く。夕飯は一人では作る気にはならないだろう]
[ステラのいい匂いを堪能するとローズマリーは自然にすっと身を引き、店内にステラを引き入れた]
カウンターでいいわよね?
[抱きしめられた瞬間、彼女の胸元からうなじから、女性特有の蕩けるような甘い匂いが零れ落ち。
わたしはその香りだけで胸が締め付けられそうになった。]
そう。それは良かったわ。疲労で美人なあなたの顔がくすんだりしたら、復旧作業で汗水垂らしている若い男の人たちはさぞかし嘆くでしょうからね?
[冗談交じりで呟いた言葉に、胸がちりりと焦げ付くような感じを覚えた。
嗚呼どうしてわたしはこうも――]
あ、食事はね。お腹が減っていないからまだ良いわ。
それより飲み物が欲しいの。えーっとねぇ。シティ・コーラルって言いたいところだけど、実はまだ仕事が残っているの。
だから、カクテルを作る時に使用する炭酸水で良いわ。
ごめんなさいね、わがまま言って。
[名残惜しむように上体を剥がして。
わたしは空いている席に腰を下ろした。]
あら、ソーダでいいの?
レモンでも絞る?
その方が身体にいいんじゃないかしら。
ステラ、あなたちょっと疲れてるみたいだもの。
[ローズマリーはレモンをスクイーズするとソーダで割ってだした]
[出し過ぎと言われても仕方ない速度で、走る。
しばらくして、目的地の前に着く。
走っている最中とは、極めて対照的に慎重な
駐車を行うと、上品そうに車から降りる。]
……うんうん。
[さすがに、略装だがそれなりの身なり。
酒場の戸を、コンコンと叩く。]
あら、誰か来たみたいね。
ステラ、ごめんなさい。
[カウンターから入り口へそして扉を開け、ボブが来たことを知った]
あら、いらっしゃいボブ。待ってたわ。
[ボブに歓迎のハグ]
[差し出されるレモン入りの炭酸水のグラスを手に取り]
ありがとう。気遣ってくれて。
疲れ…そうかな?
ちょっとだけ…夢見が悪かっただけだかも…。
[少しだけ視線を伏せて、わたしは無理に笑顔を作って見せた。
嘘の笑顔を作るのだけは得意になった。歳を重ねるごとに。嫌な癖だとは思う。
出来れば、あなただけには綺麗な笑顔を見せたいと、常日頃から思っているから。]
ところでローズ、こんなに早くお店を開いたりして…。大丈夫なの?ほら…色々と大変だったんじゃない?
だからもうすこしゆっくり休んだ方が良かったのかなぁって…。
お客としては、早く開いてくれて嬉しいんだけど、その…友達としてはやっぱり心配だから…。
[会話が思いつかなくて。でも彼女の声を聞きたくて。
わたしは当たり障りの無い話を振ってみる。
そんな自分が…少しだけ情けないと思う。]
―屋外―
[ちょっとした日差しに足を取られながらも、その罠に負けることなく男は歩く。小道の端々には、ひどく前衛的な姿へと生まれ変わった木々が風にそよがれ、思うがままに揺れている。]
[影。琥珀色。]
[誰だろう。]
[別に誰でも構わないのだけれども。]
[ハグに、ハグで返す。]
いやぁ、申し訳ない申し訳ない。
[中に、ローズマリー以外の人影を認める。]
愛車で飛ばしてきたけど、どうやら一番乗りは
お客さんに譲ってしまったようだね。
[濃い褐色の顔に浮かぶ、白い歯が笑いの形。]
牧師 ルーサー が参加しました。
―町外れの小高い丘―
[ルーサーはヘイブンを一望できる静かなこの場所が好きだった。独りで考え事をしたいときなどは決まってここを訪れ、思索に耽るうちに夜が明けることも度々あった。]
このようにして、あなたがたの魂に及ぼす神の精霊の偉大な力により大いなる回心を経ていない者はすべて、また、生まれ変わり新しい人間に作り変えられていない者、罪業の死より蘇って更生させられていない者、経験したことのまったくない光と生命に直面したことがない者はすべて……
[彼は覚えずに呟いていた。]
怒れる神の御手の内にいる……、か。
[ヘイブンを見下ろす彼の目はどこか力なく、どこか寂しげだった。]
ううん、気にしないで。
[宙に浮いた会話は虚しくカウンターにばら撒かれ。
わたしは胸が軋むような感覚に陥った。
その痛みを紛らわすかのように。グラスを傾ける手を早めた。]
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