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[ステラやローズの表情を見るのは本当に久しぶりのような気がした。ローズとはついこの間アンゼリカでボブの荷物もちで行ったばかりなのに。]
[ぽかんとしたソフィーに笑いながら]
ソフィーさんもう体は大丈夫そうですか?
前にアンゼリカの前で倒れていたでしょう?
俺心配してましたよ。
[少しだけ笑顔を向け、一呼吸おき]
リックやウェンディは?ニーナでもいいですが。
俺買い物したいんだけど…
[そこまで言いかけてステラの言葉を耳に留める]
噂?
―雑貨店・回想―
ソフィー、待たせて済まなかった。
なにも変わったことはなかったかい?
[ソフィーや奥の部屋にいるニーナに声をかけ、二人の無事を確認するとようやく安堵した。
倉庫で板ガラスを探し、割れた窓を修復したり後片付けをしているうちに、そこを訪れる者の数が増えていることに気づく]
[目を細めて会釈するハーヴェイに、古い記憶が疼きだす。あぁ、そういえばバードを慕っている…]
そうね、先日アンゼリカでお会いしましたわね。あの時はあまり長居出来ずに立ち去ったので挨拶もそこそこでしたけども…。
そう…。いつもならあれだけれども…でも辛そうよ?倒れないように――
[慈悲深さは教師としての仮面かそれとも捨てたはずの宗教絡みか…。
深入りにならない程度に気に掛け、わたしは会話へピリオドを打った]
―雑貨店―
やあ。千客万来だな。
[これが常なら、この店はとても繁盛することだろう。そんなことを思いながらそこに居る皆を見渡した。二度目の土石流災害から僅かしか日が経っていないのに、随分会っていない気がするものだ。それだけ様々なことが起きていたせいだろう。
顔ぶれの中で、最も意外だったことは、その中に火星人旅行者――ではなくギルバートの姿があったことだった]
おや、ギル。
君は町の中に取り残されてしまったのか?
――災難だったな……
なかなか復旧の目途が立ってないから、いつになったら帰れるかわからないぜ。
[そんな話をしながら、ガラスの破片を片付けている]
いえね、ちょっと耳に挟んだのよ…。わたしの教え子が教えてくれたんだけど…。
[わたしはソフィーとハーヴェイの食い付きの良さに、少々驚きながらも、あくまでも噂と釘を刺した上で口を開いた。]
可笑しな話なんだけど…その…ウェンディがね、リックの身体を…持ち掲げて何処かへ走り去っていったって言うのよ…。
――有り得ないでしょう?逆なら兎も角ウェンディがリックをよ?
[わたしは誰かに否定して欲しかった。そんなこと有り得る訳が無いと。笑い飛ばして欲しかった。]
[心配して声を掛けてくれたハーヴェイには]
はい──、何とか快復しました。
その節はご迷惑をお掛けしたみたいで、すみません……。
[申し訳なさそうに言ってから、何となく睫毛を伏せた。
ハーヴェイを前にすると、どうしてもアンゼリカで聞いたローズマリーの嬌声を思い出してしまい、頬が熱くなりそうだったのだ。]
[ステラの言葉に、思わず目を丸くした。]
……………はァ?
何だそりゃ………。
どこかのホラー映画の話か?
……にしちゃあ、リックだのウェンディだの、聞き覚えのある名前だしなァ……
[ネリーは周辺の人々に挨拶をしつつ、隅のほうで小さくなっていた。人々が会話を交し合う。
そのなかにいろいろなヒントが隠されているような気がする。
ステラのウェンディがリックを抱えていたという話。あれはまぎれもなくウェンディだった。しかもそのウェンディをギルが……
さらにヒューバートの声。あらためて聞くと聞き覚えがあるような…ないような…]
ウェンディが?
[ステラから耳にした話はマーティンから聞いたリックの最期よりずっと具体的な話で、私はしばし絶句した。]
……ああ、そうだ。
…エイヴァリー…先生。
[ステラの腕をそっと取り、少しだけ話の輪の外側へ連れ出す]
忘れないうちに。
落とし物を拾って預かってたんだ。
君にとって大事なものだろう?
[そう言うと、彼女にカードケースを返した]
[ヒューバートの姿を見、一瞬目を細めたが一礼し]
先生…ご心配をおかけしました。
少し家に忘れ物をしてたので…
[無難な言い訳をし、ステラのいう「噂」へは驚いたように]
…ウェンディが?あの小さなウェンディがリックを抱えて?
[信じられぬというように聞き返す]
[ノックはされたけれど、人が入ってくる様子もなくて]
…?
[重たいからだを寝台から下ろせば雑然と人の集まる店へとネグリジェのまま姿を見せる。
いつもの彼女であれば有り得ないようなことだったが]
[自分の反応にステラが僅かに戸惑っているのを感じ取り]
あ、いえ、最近おかしな事ばかり起きるので、
何か少しでも手懸りになればと……。
[言い訳するように続けたが]
え……、ウェンディが───?
[返って来た話の内容に、呆然と言葉を失った。]
[顔をそらすかのようなソフィーに少し困ったように]
まだ調子悪いんじゃないんですか?
倒れていたんですから大事にしないと…
お父様もいるんですし。
[ナサニエルの言葉に、正直自分もそう思ってしまいたいという願望を乗せて]
そうよ…ね、何処かのホラー映画じゃあるまいし…
[力なく笑い、バートに腕を引っ張られたわたしは、導かれるままに少しだけ話の席から身を外す。
彼から差し出されたのは、なくしたはずのカードケース。
でも何故これを彼が持っているの?]
あっ…ありがとうございます…バート…いえ、バンクロフトさん。何処で無くしたのか見当つかなくて…。ずっと探して居たんです。
[一瞬だけ垣間見えそうになった昔の顔。でもわたしは必死に隠して。教師としての振る舞いを崩さずケースを受け取り礼を述べた。]
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