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[サングラスの黒人が、イタリア製の車を運転している。]
Woah, Woman, oh woman, don't treat me so mean...
[1960年代に発表された、有名歌手の曲を口ずさんでいる。
弾き慣れた楽譜を、思い出すかのようにしている。]
[ドンッと、鈍い音と車に少しばかりの衝撃。
洗車の暇もなかったのか、汚れたエンブレムの
”fa Rom”の部分がこの衝撃で読めるくらいになった。]
……んー、猫か犬かでも轢いたかな。
ウチの子じゃあなければ、まあいいか。
[何か動物でも轢いたのだろうなどと思いつつ、
鼻歌交じりに、店を*目指す*。]
[ローズマリーは掃除を終えると「OPEN」の看板を扉に下げた]
お店もお掃除して、ちょっと気分も晴れたわ。
ボブがOKしてくれたから、わたしだけってこともないし。
音楽が聞こえたら、きっと誰か来るに違いないわ。
だって、しばらく、なんの楽しみもなかったんですものね。
誰だって気晴らしが欲しいはず。
…そう、わたしだって…。
――町内――
[しなければならない事が多いと、正直何から手を付けて良いか判らない。
屋外へと進むと、照りつける強い日差しに汗がじわりと滲む身体から、かすかに黒水仙の香りが立ち昇る。
禊を終えた後につい無意識の内に忍ばせてしまった鼻腔をくすぐるその甘くも清楚な香りに、己の醜さを垣間たようで恥ずかしさに頬に熱が帯びるのも手伝って、わたしはほんの少しの時間途方に暮れていた。]
もぅ…!親や子を亡くした人も居るというのに…。なんて不謹慎…。
[窘めるように自らの頬を叩いて、自戒にする。でも何処かでやっぱり浮ついてしまう心は隠せなくて。
わたしは更に溜息を吐いて気持ちを落ち着けなければならなかった。]
[自分自身、そこまで浮ついてしまう理由には心当たりが有った。それはしなければならない予定の中に組み込まれている家庭訪問。
その訪問先に――
あの人が居るのだ。一時の愛を重ね、恋慕し、そして今のわたしを作り上げてくれた彼の人が]
でもその前に。生徒達の状態を確認するのが先ね。
きっと先に逢ってしまったら…。隠せないもの。
悦びと…恋しさを――
[焦げ付くような思いを高鳴る胸に重ねて。
わたしはきつくシャツの胸元を、両手で握り締めた。
そして深呼吸をした後、再び目的を果す為に生徒達の家へと歩みを進めた]
─学校敷地内・校庭─
[古い石造りの校舎の前に停車したトラックから次々と荷が降ろされて、水や食料、毛布といった生活必需品が校舎内に運び込まれていく。
そのうちの一部は、町の住人達の手で薄汚れたフォードのピックアップトラックに積み替えられていった。]
[他の職員や町民達と、物資の数量確認や配布手順を話し合っていたアーヴァインは、横合いから自分の名を呼ばれて振り向いた。
見ると、荷降ろしを手伝っていたミラー家の次男が少し困ったような顔をして、傍らに見知らぬ若者を連れて立っている。
年の頃は20代前半といったところ。薄汚れたシャツとジーンズ、埃だらけのカウボーイハットとブーツ。肩にかけたバックパックが偉く場違いな雰囲気だ。
アーヴァインの視線に気付くと、若者は帽子を取って軽く会釈し、人懐っこそうな笑顔を見せた。]
[子供達の状況は、思ったより悪くは無かった。
数少ない生徒がこれ以上減ったりしたらどうしようかと本気で悩んでいたので、これには素直にほっと胸を撫で下ろした。
子供は可愛い。理屈抜きで愛情を注げる。
元が元だけに、再びこういう人と触れ合うような職業に付けたことにわたしは素直に感謝している。
でも決して神の導きだとは思わない。
思いたくも無かった。逆恨みかも知れないけれども。]
これからも色々と大変でしょうけども、新学期には是非元気な顔を見せてくださいね?
[常套句を常套句だけにならないように。
わたしは一言一言に心を込め、彼らとその家族に手を差し伸べ心の中で祝詞を呟いた。]
[この町の人々は宗教に対して一種の嫌悪感を抱いているものも少なくは無い。
しかしその環境は、逆にわたしのように宗教を、過去を捨ててしまった人間にとっては居心地の良さを感じてしまう。
事ある毎に神に祈りを捧げてしまう、長年培ってきた習慣は、幾ら忌み嫌おうとも抜けることは無いので最近では都合よく利用させて貰おうとまで考えている。
わたしの幸せは自分でもぎ取る。しかし愛すべき人々の幸せは願わずには居られない。
もし、主が寛大で罪深き人をも受け入れてくれるならば。これ位の幸せを願っても罰は当たらないだろう。そうでなければ崇め奉られる存在で在るなと。そう思うのだから。]
[若者はポケットの中からクシャクシャになった紙片を取り出すと、アーヴァインにそれを渡した。レポート用紙を切り取ったと思しい紙面には、ヘイヴンの住所が書いてある。それは自宅にほど近い、ローズマリーの酒場だった。
若者は、そこに住んでいるローズマリーという女性に会いたいのだ、と言った。彼女は自分の遠縁の親戚に当たるというのが彼の言だ。
ミラーの次男が横合いから歯切れの悪い口調で、アーヴァインが自宅に帰ると聞いたので案内したらどうかと思った…と付け加える。
アーヴァインは途惑いつつ若者をまた見詰めた。
好奇の色を湛えて輝くその楽しげな瞳が、澄んだ琥珀色であることに気付いた時、彼は道すがら彼をローズマリーの家に送り届けることを承諾していた。]
ではまた後日改めて…。
[最後の訪問を終え、一時的に職務から解放されたわたしは、人影がまばらな場所で大きく伸びをした。
別に接する姿勢は作り上げているものではないが、でも何処かしら緊張はしているようで。
蒼穹に向かって腕を伸ばすと、背筋から小さな悲鳴が上がった。]
さすがに疲れが溜まっていたから…。あちこち軋むわね。
暑さも手伝って少しばててしまいそう。
このまま一旦家に帰ろうかしら?それとも――
[その時ふと脳裏に浮かんだのは、この町に訪れてから親しくしているローズの顔。
災害では然程ダメージを受けなかったとは風の噂で耳にしていたが、でも数日も逢っていない事も手伝って、一度思い浮かべてしまうとなかなか気になって仕方が無い。]
顔…出してみようかな?
忙しそうだったらすぐ立ち去ればいいんだし…。
ちょっと位良いわよ…ね?
[胸に霧のように漂う感情には目隠しをして。
わたしは更に強さを増した日差しの下、ローズマリーの営む店へと爪先を向けた。]
冒険家 ナサニエル が参加しました。
―ヘイヴンの一角、小さな家にて―
[男は、小さな家の書斎に置かれた粗末な簡易ベッドで眠っている。]
[彼がひとりで暮らすその場所は、ひどく夢見がちな場所であった。
まず、彼が目を覚ますその部屋の色は、常に一定のものではない。或る時は真っ白な光を受け入れ、また或る時は暗く淀んだ闇が在った。或いは、ベッドに縛られたまま動けないままの日もあった。
また、住人は彼ひとりでは無い時もあった。
彼を取り巻く者は、時に深刻な顔で話し合い、時にゲラゲラと笑い、また時にひどく泣き濡れていた。勿論、彼も行動を共にする時もあれば、それを追いだそうと必死に抵抗する時もあった。
彼の口からは、しばしば煙が吐き出されていた。その煙は、たいがいは真っ白なものであったのだが、時に煙はゲタゲタと彼を嘲笑い、或いは彼を優しく慰めることもあった。]
[とりあえず一通りの手配も済み、漸く開放されたアーヴァインは、若者を連れて保管用の救援物資を積んだピックアップトラックに乗り込んだ。これらは損傷の激しい町役場の倉庫に代わって、しばらく自宅で保管することになっていた。
ガタガタと軋む音を上げながら、トラックは通りを抜けて走る。
助手席の若者は、窓から見える壊れた家などが示す災害の痕を興味深そうに眺めている。]
[建物の一歩外に視界をやると、その景色もまた、彼の部屋と同じく一定ではなかった。
或る時は、無限に広がるお花畑であり、その最果てに眩いばかりの光が見えた。また或る時は、足元に七色に光る真っ黒な虫が無数に這いずり回っており、彼の皮膚と肉を間に入り込み、彼の身体を蝕んでいくこともあったのだった。]
[彼は時にその部屋で、世界を支配する「全知全能の神」となることもあれば、或いは生きている価値すら与えられない虫けら以下として認められることもあったのだった。]
[彼はギルバート・ブレイクと名乗った。
ローズマリーとはどういう親戚なのかとアーヴァインが尋ねると、若者は急に噴き出し、笑い転げた。
怪訝な目を向ける彼に、ギルバートは笑いながら、彼女とは何の関係もない、と答えた。
彼女の弟と友達なだけでね。手紙を届ける為に寄ったのさ。
親戚て言っといた方が同情されるかと思って。ここに来る時も運ちゃんにそう言って乗せてもらった。
アーヴァインは些か呆気に取られて若者を見た。
その彼の眼を、若者の琥珀色の視線が射抜いた。]
――酒場――
[ドアに掛けられた札が『OPEN』になっているのを確認して、わたしは3つ、ノックをした。]
ローズ?居る?わたしよ、ステラ。
今ちょっとお邪魔しても宜しいかしら?
[ドアを開ける前に必ずノックをして声を掛けるのは、到来を知らせるよりもわたしなりの防御策かもしれない。無意味に傷付かない為の…心を護る為の防御]
[粗末な簡易ベッドの上で、人影がもそりと動く。]
―――………ドサッ。
[床に落ちた衝撃で目を覚ました男は、虚ろな目をしたまま、ベッドの横に置いてあったゴミ箱を引き寄せ、その中に顔を突っ込んだ。]
―――う゛ぇぇぇぇぇぇっ………
[ゴミ箱の中に収納されていた無数のメモ紙の上に、男は容赦なく吐瀉物を浴びせ掛ける。]
[ブラインド越しに挿し込む光を頼りに部屋を見渡すと、そこが無数の本を抱えた本棚に囲まれた書物の林であり、その『林』を構成する『木々』の足許には無数のメモ紙が晩秋の木の葉のごとく堆積している光景を見ることだろう。]
[男は、手許に落ちていたメモ紙を手にして、自分の口元を拭いた。]
……………。
[男は床から立ち上がると、昨日の『最悪の長旅』と吐瀉物まみれのゴミ箱を引摺り、トイレへと向かった。]
[スリルは、いつの時代も男を魅了するか。
彼のサングラスは、伊達でかけているわけではない。
まして、そのスピードは過ぎるという形容が似合った。]
Hit the road, Jack and don't you come back no more...
[目の前に、ピックアップトラックが見えた。
正確な表現では、追いついたのであるが。]
せっかく気持ち良いところなんだがなあ。
[この道は、自分が支配すると言わんばかりに、
サングラスの男はムッとした様子であった。
イタリア車特有のパッシング音が響く。]
[その後は何をギルバートと話したのか、アーヴァインはあまり覚えていない。
たわいもない世間話であったのだろう。
ただ、写真を撮るのが趣味であることは話したかも知れない。気が付いたら、彼をモデルに写真を撮らせて欲しいと頼んでいた。
若者が柔らかく笑いながら、太腿を叩いた時、何故かホッとしたのを覚えている。……]
[背後からのパッシング音が轟き渡るのに、やっと気付いたようにピックアップトラックはもたもたと脇に逸れて停車した。
満載した荷物の重さに見あった鈍重な動きだ。]
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