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―道端―
[ギルバートのほうを向いて]
そいつは災難だったね…… 彼は多分悪いやつじゃないんだが…… いや、私も彼のことを知っていると言うほどのものではないんだが……
[ナサニエルのほうを向き直ると]
前もキミは同じようなことを言ったな。いいか、薬物なんてものは所詮人の身体の働きを助ける程度に過ぎない。そんなものに頼るのは止めなさい。大体…… まあ、今はそんなことを言っても仕方が無いか。
[ギルバートのほうを向き直って]
彼を家まで送るのなら、私が代わってもよいよ。キミが付き合うこともあるまい。どうするね?
ありがとう、シャーリィ。
少し──届け物があって、そこで足止めを食らっていたのよ。
この雨のせいで。
[軽く肩を竦めながらボブの車へと乗り込みかける。
伯父親子が共に何かあればといってくれたのはとても心強いことで、嬉しそうに微笑んで頷くとそのまま扉を閉めてボブに発進を促す]
どうしてって…それは…あなたが…っ!
[続きを言いかけて言葉を飲み込む。
片手を上に向けさせられ、もう一方の手はやや自由を取り戻す。幾分楽になったかと思うと、リックが自らの脇腹を向き頭を下げている。
恐怖がネリーを覆い、息で露わになっている腹部、横隔膜が大きく動く。]
はぁ…っああん!
[下を向いているリック。僅かばかりに動く腕。
チャンスはもうなかろうか。ならばとネリーはリックにお返しとばかりに、頬めがけて平手をのばした。]
いやー……………
[医師の言葉にしばし黙り込み、ぽつりと呟く。]
アスピリンはダメなのな。
胃が痛ぇし、味は無いし、ロクなことねぇや。見た目はラムネ菓子なんだけどな。
……市販品だからいけないのか。
ンン……
[と、少し考えるような素振りを見せた後で、]
貴方にお任せしても良いんですが……一人で運べますか?
[意味ありげな苦笑を見せた。]
[車中では、はじめのうちはずっとこの言葉を繰り返していた。]
あの小娘…私を馬鹿にしているな。
どんなに、どんなに頑張っても…呪いかこれは。
私を誰だと思っているんだ……。
[ぶつぶつ呟きながら、一見すると車は
雑貨屋の方に向かっていると思われる道を進む。]
[一人、親族同士の慰めあいとはまるで場違いなことを考えている。
今の自分には理解できるものではなかったから。
ボブの車に乗って去っていこうとするニーナには挨拶程度の言葉しかかけることが出来なかった。
そしてぼんやりと皆のやりとりを聞いているように聞き流していたが、ふとシャーロットが犬に手を伸ばしている]
駄目だよシャロ、なれないのに触ろうとしたら…
[注意し終えるか否か、犬はシャーロットの腕を噛んだ]
この犬、なにを…!
[追放そうとする間もなく、犬はボブの所へ駆け戻る]
ちっ、飼い主があぁだと犬も同じか。
シャロ、腕…大丈夫かい?
[ナサニエルの言い訳を無視するように、ギルバートへ]
ああ、ブレイクさん。私の車にコイツを放り込むのさえ手伝ってくれれば、私のほうであとは引き受けよう。
一応、医者なのでこの手合いの扱いも経験が無いわけじゃない。安心してくれ。
[肩をすくめて、ナサニエルのほうを見る]
どうだい? 車まで運ぶのを手伝ってくれるかい?
[ボブの呟きに覚えたのは不穏な感情だったけれど、やがて座っているだけの状況は酷く疲れた体の求める睡眠欲に勝てず]
(……だめ。眠っては…だめ…、早く帰らなきゃ、いけない、のに…)
[どんなに抗ってもそれは堪える事が出来なくてやがて青い瞳の前に瞼の帳が落ちて──
その車が、店のほうへと向かっていると信じたまま]
俺は力仕事は結構得意だしね。
貴方が医者なら、町は今酷い状態ですから彼以外にも急患出てるかも知れませんし。ずっと一人の患者に掛かりきりって訳にも行かないでしょう?
病人治すのは貴方にしか出来ませんが、それ以外のことは俺でも手伝えますから、着いてきますよ。
ほっとけないしね。
[と、快活な笑顔で笑い掛けた。]
……ねえ、ネリー?
こんなことをして、何か解決になるとでも思ってる?
むしろ逆に、僕を怒らせることになるだけだって、思わなかった?
[見上げる片目を細め僕は哂う。三日月のように―肉食獣のように。そして、ネリーの柔らかな膨らみに犬歯を立てた]
[隣では、ニーナが眠りに落ちているようだ。
車は、雑貨屋の方から次第に逸れていく。
誰も近付かないような、そんな人気のない
場所へと向かっているようだ。]
近道だなんだって、言い訳考えてたんだが。
手間ぁ省けたってもんだな。
ああ、どうしてくれようこの不快感。
[紙幣の束を取り出す。”仕事”の時間には早い。
しかし、車も彼も走り出したら止まれないようだ。
明らかに、雑貨屋とは別の方へ向かっている。]
[ヒューバートから目配せで戻るように促され、自分も車に戻る。
この後バンクロフト邸へ自分の荷物を取りに行くのは何となくはばかられたが、ここで別れるのも何となく気まずい]
先生、ご自宅までご一緒させてもらっていいですか?
[どうするかはこの答えで決めればいいことだろう。しかし先程打ち付けた頭がまた痛み始める。
自分も早く戻り何かしら手当てをした方がいいかもしれない。
髪に隠れて血も流れていなかったが、打ち付けた箇所には大きな傷が覗いていた─]
[着いたよ、と揺すっても起きる様子のないニーナ。]
オイ!着いたってのがわかんねえのか!!
私の声、届いてるか?おまえさんつんぼか?
オイ!オイ!いい加減に起きやがれよ!!
[苛立ちが、そのまま発言に反映。]
[どんな言葉をかけても、頬を叩いても今のリックには何も届かないのか。
ネリーは深く絶望した。自由になっている手が力を失いかけ、宙を彷徨う。]
なんで、なんでこんな事に・・・っ! あんっ!んふ・・・
[リックに歯を立てられ、自分の意思とは違う溜息が漏れ始める。腕は力なく垂れ下がり、顔はできる限りリックから逸らす。]
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