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………生きてる?
あァ、あのヤブ医者に言われたこと、まだ気にしてんのか。
幸か不幸か、俺はピンピンしているぜ。安心しとけ。
『先ほどの幻覚を除いてな――』
[最後の一言は、口の中に押し込んだ。]
[一瞬少し複雑な表情が過ぎる。
が、すぐにニッコリと微笑んでローズの側に寄り添う。]
……ンン。
一緒に行くさ。ローズを危険な目にあわせる訳にはいかないしね。
おま……!
ローズマリーがあらぬ想像すんだろうが……ったく。
ローズマリー、ブランダーの家に行きたきゃ行くぞ。
ギルバートも、ついてきたかったらご自由に。
あらぬ想像も何も意味不明なことを口走るなよ。
何のことだかさっぱり分からないよ。
なあ、ローズ?
[と全く平静に怪訝そうな顔をしてみせる。]
[ギルバートの言葉を無視して、トヨペットクラウンのエンジンを掛け、二人の前に乗り付けた。]
………ほら、乗ってくなら乗れよ。
お二人さんは後ろにどうぞ。
[ギルバートに肩をすくめて見せて]
二人ともなにを言ってるのかさっぱりわからないわよ。
ナサニエルの酔いつぶれはいつものことだし、死ななかったのもいつものことでしょう?
[隣に座ったギルバートに話しかける]
ギルバート、ブランダーの店の様子がおかしかったのよ。
扉は閉まっていたんだけど窓が割れていて中に犬と血痕があって。
いったい何があったんだかよくわからないの。
リックとウェンディもいないし。
どういうことなんだか…。
[ニーナは時折うわごとのように兄を呼ばわった。
恐い夢でも見ているのかと心配げにニーナを見つめていると、店の前に一台の車が停車した事に気が付いた。]
『ヒューバートが帰って来たのだろうか。
それとも、別の誰か──…。』
[不安を覚え、スツールから腰を浮かす。
寝ている少女を庇うように立ち上がった時、複数のドアがほぼ同時に開く音が聞こえて来て、窓の外へと*探るような視線を向けた*。]
[「ブランダーの店」と聞いて、ローズに昨夜のことを説明すべきか一瞬考え込んだ。
だが、黙っていてもニーナに訊けば分かってしまうだろう。
「朝までナサニエルの家にいた」かのような言葉を吐いた後に説明しなくてはならなくなるのはちょっと困ったが、とりあえず時間はぼかして、ニーナが店に侵入した狂犬に襲われたこと、たまたま近くを通りかかった自分が悲鳴を聞きつけて助け出したことだけは簡単に話した。]
あら、そうだったのね。
ギルバート、大変だったわね。
じゃあ、あの店には今はニーナだけなのかしら?
リックやウェンディは見なかった?
飛び出したっきりずっと帰っていないみたいだけどな……
[車窓の外を流れる景色を見遣り、顔を背けたままローズの手を握ろうとした。]
[ギルバートに握られた手にもう片方の手を添えて]
そう…。
誰か探しているのかしら…。
ルーサーさんは暴徒に襲われて、アーヴァインは屋敷が焼けて。
なにかおかしいわ。
前の嵐の時にはこんなふうではなかったもの。
[ギルバートに不安げな目を向けた]
災難続きだからね。無理ないかも知れないよ。
閉じ込められたようなものだし、町の向こう側がどうなってるか分からないのだろ?そりゃ不安にもなるさ。
そのせいでおかしくなる人が出ても不思議じゃあない。
[宥めるようにローズマリーに語り掛け、その不安を宿す目を優しく見詰め返した。]
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