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[背筋を走る悪寒は、素早く全身に広がった。わたしは言われも無い寒気に、急いで服を着込み自分自身の身体を抱きしめた。得も言われぬ恐怖が全身に襲ってくる。
本能が危険を察知したように――]
そんな…三十年も同じ姿を保てるなんて…有り得るの?それともこれはよく似た…別の人…?
[別の人だったら、何故私は今恐怖に怯えているのだろうか…。本能が何故ざわめき出すのだろうか?
様々な疑問が次々と浮かぶ。そして飽和しきった脳が出した答えとは――]
でももし…彼が化物と呼ばれる類の生き物だったら…?
[有り得ない…
とは言い切れなかった。それは幼い頃に信仰した宗教観が深く根付いて居るからかもしれない。でも、世の中には時に説明のつかない物が起きる。それは悪魔の仕業だったり吸血鬼だったり、説明のつかない化物だったり様々だ。
だから人々は神を信仰する。目に見えない恐れから逃げ出す為に――]
[わたしはそれ以降余計な物を考えることを止め、無言のまま写真を元通りにし、腕に包帯を巻いてチェストからあるものを取り出す。]
ねぇ、化物って聖水は…苦手なのかしらね?
[小さな飾り瓶に揺蕩う透明な液体を振りかざし、わたしは微笑む。気休めかも知れない。でも、これは今のわたしの…お守り――
その瓶の蓋をゆっくりと開け放ち。わたしは自らの身体に数滴振り掛ける。柔らかい香りがふわりとあたり一面に広がった。]
[不協和音が階下から聞こえる。
わたしはその音を一時的に遮断するように耳を塞いで目を閉じる。
瞼に思い描く姿は――]
ねぇバート…。もしわたしが…あしたを生きて迎えることが出来たなら…真っ先にあなたに会いたいわ――
[左手にだけ嵌めた白いレースの手袋越しに、左薬指にそっと口付けを。
そしてわたしは部屋のドアを開ける――]
[わたしは階下へ進みながら、まだ見ぬ姿へと声を掛ける。]
まぁ、随分派手な訪問ね…。素直にドアをノックしてくれたなら…ちゃんと玄関から招き入れたのに――
[吐き出すため息は呆れた色合い。そこに恐怖なんて…ない]
[静寂を帯びる室内。わたしは気にも留めず階段を下りた場所で口を開く。]
所で訪問者さん、一体わたしに何の用があってここへきたのかしら…。
まさか敵討ちとか…言わないでしょうねぇ…アハハっ!
[そのまさかの姿を想像して、わたしは一人口嗤う。もし好色そうなあの男がそんな真似をしに来たというのなら。わたしは素直に尊敬して差し上げようかとまで思う。]
[静を保ったままの室内。何処からかドアの開く音が聞こえる。]
誘われているのかしら…。
[わたしは一人呟く。
そして罠だと解っていながらも、歩みを進める。
一歩
二歩
三歩――]
[背後から首に巻きつく感触。
その冷たさにわたしはびくりと身を震わせた。
身の危険を察知した身体と、伸びてきた手がわたしの身体を引寄せようとしたのとではどちらが早かったか――]
…っ――
[わたしはくるりと身体を回転させ、目の前にいるであろう人影に小さな鉄の塊を向けた。]
[首に絡む腕と摑まれた右手の痛みに、わたしは顔を歪める。
と、同時に口許に笑みが込上げてきた。]
[ゴトリ――]
[重々しい金属の音が床に叩きつけられる。それでも尚右手の痛みは治まる気配は無い。]
…もしかして…あなたがわたしを…殺してくれるというの?
――神が我が身の許へと…導きたくは無いと願う、穢れたわたしに…安らぎを…与えてくれると…言うのかしら…
[呼吸が苦しくなる。じわじわと體を蝕む死の予感に、それでも尚嗤いが止まらない。]
「殺してくれる」、ねえ……。
確かにお前を殺しに来た。だから、死んでもらう。
だが、それはお前を楽にしてやる為じゃない。
[冷厳な声音が耳に吹き込まれた。]
[と、ふと緩んだ首許。體は生きる為に呼吸を繰り返す。その自分の行動と醜いと思っていると、耳許で囁かれたテノールが空気を緩く振るわせる。]
随分遅い挨拶ではなくて…?ギルバートさん…?
それとも…あなたにはもっと相応しい名前があるのかしら?
[くすり――]
[零れた笑みから聖水の甘い香りが零れる。宗教観で清めた躰が弛緩する。]
楽にするためじゃなかったら、一体どうしてくれるのかしら?
言っておくけど…ちょっとやそっとの事では苦痛には思わないわよ?
[冷やかにささやかれた言葉に、わたしはますます可笑しくなりくつくつと小さな声を上げる。]
[死を宣告された前で、わたしは自分でも驚くほど冷静に居られた。もしかすれば今までの人生の中で一番と言っていいほど冷静を保っているかも知れない。それはわたしが死を恐れていないからだろうか?
別にわたしは常に死を望んで生きてきたわけではなかった。もし死を切望していたなら、あの日シンシアの命を奪い神父達の寝首を掻いて逃げ出した道中、幾らでも自害して居ただろう。でもそうしなかったのは…。]
『誰かに…裁いてもらいたかったのかもしれないわね』
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