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・・・・・・
[勝負は決した、そう判断し剣を通常のサイズへと戻していく]
アサシンの割にはよく持ったほうだ。
惜しかったな。
[ゆっくりと近づいていく]
[片腕がもげ、切断面からは血が噴出し続ける。
黒い服はずたずたに裂かれ、血を吸い重くシャルロットの身体に張り付く。
小さな息を浅く繰り返しながら、近寄ってくる沖田をぼんやりと霞む視界で捕らえた。]
……マ…スター、に……逃げ……。
[逃げてくれ、そう言おうとしたが、声が上手く出ない。
肺もざっくり切り裂かれており、サーヴァントの修復能力が辛うじてその穴を塞いでいるに過ぎなかった。]
マスター…には、手を……出してはなりま……
[僅かに残った気力を振り絞り、沖田を、睨む。]
貴様さえ消えれば、マスターに用は無い。
さらばだ、この俺の願いの糧となれ。
[大きく振りかぶり、止めとばかりに斬り付ける]
[覚悟を決めていた……迷いがあった自分に、勝利など、与えられるはずがないのだ。
心の底から、そう思った。
刹那空気が揺れた。
ザシュ、と鈍い音がする。
そして、地面に何かが崩れる音。
疑問符がめぐる。
目を、開ける。
そこには、一番見たくない、光景があった。
……沖田敬一郎と自分の間に居る人影。]
うつほ!
[それは己のマスターの姿だった。
自分の度重なる宝具発動で、ソフィーの体内の魔力は相当もっていかれていただろう。
満足に魔術を発動出来る状態ではない中、ありったけの魔術を使っただろう事は、シャルロットの前に張られた薄膜の氷が物語っていた。
ゆらり、と揺らめいたそのソフィーの身体は、血を流して倒れている自分の足元へ倒れた。
明らかだった。
最期の止めを食らう自分を助けようと、駆け寄り至近距離から防御の魔力を力いっぱい放った。
……その放出量は、魔術師としての自分の生命維持を、恐らく脅かすくらい…ではなかったのか。]
[振り下ろした直後、空穂がアサシンとの間に飛び込んできた。
咄嗟にその剣を制御しようとするが、残酷にもその剣は彼女を斬りつけた。
絶命という一撃は取り止めたが、その一撃は彼女にとって致命的なもののように見えた]
・・・・・・ 空穂。
[剣が、体を貫く]
[ように、思った]
[目は閉じなかった。これで、命が終わりなのだとしても。それでも、恐怖などない。ただ、彼女を守ることが出来たのなら。
魔力の壁が、わずかに、彼女と剣を隔てている]
[剣は通った。ただ、引き裂こう、とする一撃は、寸でのところで彼女の急所を守り――致命傷に至らなかった]
……シャルロット、無事、ですか?
[息もできなかったが、シャルロットの名を呼んだ。
痛む体を引きずり、シャルロットの方へと動く]
空穂、もう終わったんだ。
アサシンはじきに消える。君にはもうどうにも出来ない。
[剣を消し、空穂を受け止める]
もう戦う必要は無い。
沖田、敬一郎。
シャルロットが、消えるのだとしても
私は彼女のマスターです。
……マスターが、サーヴァントの傍にいたい、と。思うことは間違いではないはずです。
[幾分はっきりとした言葉で、告げる]
‐南ブロック→西ブロック‐
[マリア達の家へと到着したキャスターだったが、呼び鈴を押しても誰も出ない。
魔力探知で中を探ってみるも、サーヴァントの気配らしきものはなく、何故か不安になったキャスターはマリアを探し始めた。]
【ダメージなんてまだ全然治っていないはず…一体何処にいったんだ?】
[最初に思い浮かんだ場所は、何故か川原だった。
マリアと何度も待ち合わせた場所…もしかしたら、ソフィーが再び治療を頼む為に自分を探しに来たのかもしれない。
だが、そこにマリアの姿はなく、代わりにあった物は…。]
サーヴァントの戦闘の気配…?
[朦朧とした意識の中、瞼の裏に浮かび上がる風景があった。
それは沖田敬一郎の夢……搾取され続けた大地の皹]
(あの、爛れた大地が……現実のものとなるのならば……
私の願いは……人類の誕生は一体……何だったというのでしょう。)
[朦朧とした意識が掠れてゆく……もうすぐ、私は恐らく消滅する。
マスターの声が、自分の名を呼ぶ声が、遠くから聞こえたような気がした。]
(さようなら……うつほ……)
[全身で魔力を練る。否、魔力など既に尽きていた。残った一枚の紙片から、魔力を吸収し、シャルロットに触れる]
Priere ....de l'eau.
[癒す。それはわずかにシャルロットの傷を癒したにすぎない。
自分は、守ることが出来なかった。彼女はもうすぐ消えてしまう。
シャルロットを失うことが、心の中へと深く突き刺さり、涙となって現れる。
失うことへの寂しさと、守れなかったことの悔しさと、傷ついた姿を目にした痛みが、心を抉って行く]
・・・・・・
[意識を失った空穂をそっと抱え上げ]
空穂はこちらで病院に連れて行く。
この世界が滅びる瞬間まで立ち会ってもらうつもりだ。
アサシン、君はもう長くは無いようだ。
消えるまでの時間をゆっくり味わえ。
[アサシンが死ぬ事で、聖杯は本格的に動き始める。
教会は戦場に使いすぎた。聖杯を確保する事も含めて拠点を移動する必要がある。
空穂を抱えたまま、アサシンの前から立ち去った]
‐西ブロック・教会‐
[気配に向かって全力で走る。
迅く、更に迅く…そう思ってもそれ以上速度が上がらない体が恨めしい。]
【くそっ!】
[悪い予感が消えない、むしろ近づく程にそれは確信へと変わる。
きっとそこには、自分が見たくない光景があるのだと…。]
マリアちゃん!
[目の前に広がる、無残に破壊された廃墟。
そしてそこに横たわるのは、どう見ても彼女だった。]
[血塗れのマリアに駆け寄るが、そこでキャスターは言葉を失った。
いまほど、自分の賢者としての知識を憎んだ事はない。
なぜ分かってしまうのだろう、"もう助からない"と言うことが。
愚かでもいい、目の前のマリアを助ける為に全力で治癒をかけ続けたい。
だがそれも全て無駄と悟ってしまっている自分が酷く嫌になる。]
マリアちゃん…。
[キャスターは彼女を静かに抱き寄せ、治癒をかけた。
助からなくてもいい、言葉ぐらいは最後に喋られるようにと。]
[意識が遠のいていくのが判った。
真っ白になってゆく…そう感じていた刹那、身体が軽く揺れ暖かいものに触れる。
左腕がもげた場所から溢れる血のせいか…そう思ったが、遠くに聞こえてきた声は、ヴァイナのものだった。
柔らかな光に包まれ、薄っすらと目を開ける。靄がかかったような霞む視界の中、ぼやけて魔法使いの心配そうな顔が見えた。]
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