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[視線の先にいる男の容姿を僅かに観察したように揺れた瞳は一度瞼の裏へと隠され、微かに唇がわなないて何かをつぶやいただろうか。
その後数拍もおかず呆然とした表情は引き締められ]
…どうも。
うちの店に何か、御用ですか。
[じっと青い瞳は笑みを浮かべる男から視線をそらさずに問いかける]
[丁度紅茶を飲み干した頃、来客の訪れを告げる硬音が聞こえた。]
――はい、今、開けます。
[わたしは緩く溜息を吐いて。テーブルにティーカップと本を置いて客人を招き入れるべくドアを開けた。]
どうぞ、お入りください。
──現在 工房──
──シャキ、シャキ、シャキ。
[母屋に隣接する、三方に窓を備えた質素な造りの小さな仕立て屋の工房内に、裁ち鋏の薄い刃が噛み合わさる音が静かに響く。]
──シャキ、シャキ、シャキ。
[一週間前の嵐はヘイヴンの各所に酷い爪痕を残したが、ソフィーの自宅兼工房は比較的高台に位置していた為か、一階の床と貯蔵庫が浸水した程度で、他に目立った被害はなかった。
とは言え、濡れた絨毯や位置のずれた家具、床に残った泥などを掃除するのは中々に重労働で、女手一つで元の生活を送れるよう整えるのに今日の昼までかかってしまった。]
ネリー、ネリー。
[優しい声色で呼びかける。]
ちょっと外でもドライブしない?
こんな状況だから、気晴らしってわけにも
いかないだろうけどさ。たまにはいいんじゃあない?
[唇に笑みを浮かべたまま、やや頭を傾け、ゆっくりと彼女に近付く。その動きは彼女に余計な警戒心を与えないように気遣っているようにも見える。]
いや。買い物はもうしたんだけどね。
……君、ここの人?
[唇から煙草を外すと、その手で店を指した。
琥珀色の瞳が興味深そうに女性を見詰めた。]
[ネリーは気を紛らわせるためにクラシックレコードを聴くことにした。手にしたのは『名作クラシックベスト300選』
曲は『ジュ・トゥ・ヴ』(あなたが欲しい)
安物の再生機に針を当てて曲を流してみる。本当はボブの私室、スタジオとも言うべき所に行けばもっともっと豪華なものもあったが、さすがに躊躇われた。
黙って入って音楽をかけて逆上を招き、ボブに組み伏せられてしまった事があったからだ。]
[優しい声がネリーに響いた。まるで父親が娘に問いかけるようだ。]
あっ旦那様。いいんですか?
私もどことなくもやもやしてる所があったんです。ドライブ、行きたいです。
[扉の上を暫定的に支配していた影が歪む。
扉が開いた音がした。]
………………。
[家の中に招かれ、男は無言で歩みを進めた。黒革のトランクの重みが、ズシリと右腕にのしかかる。]
[「案内せよ」と言わんばかりに、男は無言でステラに目配せをした。]
[微かにスカートを指先が捉える。
それは、見知らぬ人物に対する恐怖心だったのだろうか。
もしかしたら、もっと別の理由もあるもかもしれないがそんなことを把握している余裕がまず本人になかった]
そうですか。
ここの人間というのは、この街の人間、それともこの店の人間、どちらの意味ですか?
……まぁ、どちらにも当てはまりますけれど。
[琥珀色の視線から微かに逃げるように、そこではじめて青い瞳が青年からはずされて自分の黒い靴の爪先へと落ちる]
おお、そうかいそうかい。それはちょうど良かったね。
[ドアを開けて、笑顔をネリーに見せる。]
外出るには、アルファロメオ汚れ過ぎかな。
ささっと一緒に洗車して、行っちゃおうか。
[服に纏わりついた犬の毛を払いながら。]
[壁にならんだ棚には色とりどりの反物が色別にグラデーションを描くように整然と並んでいた。
それらは全て腰の高さ以上の位置にある。
生地を選び易いようにと施されたささやかな工夫が、大切な布達を泥水から救ってくれる事となったのは幸いだった。]
──シャキ、シャキ、シャキン。
[巨大な木製の作業台に広げられた目の細かい黒い生地からいくつかの小さなパーツを切り出した所で一旦鋏を操る手を止める。
そよと頬を撫でる風に誘われ窓の外に視線をやると、空の果てに僅か残った菫色が、民家の屋根の向こうに消えて行く所だった。]
簡単に拭くだけでいいからね。
先に、車のトコ行ってるからさ。
[サングラスを調えて、ゆっくりと車の置き場へと
移動する。彼には、日常の光すら眩し過ぎるのだ。]
[トランクを手に中に入る彼の姿を見て、わたしは一度だけ目を伏せて深呼吸をした。
何故これ程までに思い出したくも無い記憶をなぞらなければならないのか。自分でも呆れる程疑問に思う。
しかしながらここまでしなければ、表面上のわたしを保つ事は不可能でもあり。]
[やがて開かれた瞳は、案内を求める彼の視線を捉えるから。]
こちらです。どうぞ――
[奥にある、ベッドすらあるかどうか判らないような質素な部屋へと彼を案内した。
忌まわしい記憶をなぞるために、わざと演出を施した。]
ええ、分かりました旦那様。
[心なしかネリーは心が躍った。主人は普通の人に比べて強い日差しにどうしても弱い。それは私がカバーしていかないと、と思った。
動きやすい服に着替え、簡単に洗車を進める。
先日の水害に比べれば大した事のない作業だ。]
んん……
[俯いた女性の視線を追って、上半身を傾ける。下から覗き込む形で深青の瞳に視線を合わせた。声に僅か楽しむようなトーンが混じる。]
そこの店の人か、って聞きたかっただけなんだけどね。特に意味は無いよ。
……俺が怖いのかな?
もう、こんな時間?
……いけない、明日の朝食用のパンを買うのを忘れていたわ。
[早く行かないと雑貨屋は閉まってしまう。
慌てたソフィーは鋏を脇に置き、切り出したパーツを丁寧に重ね、急ぎながらも丁寧に余った生地を巻き取って棚に戻すと、全ての窓にきっちりと鍵を掛け、最後に壁に設置されたスイッチを操作して工房の明かりを消した。]
ま、こんくらいでいいんじゃあないかな。
……ここ、どっかにぶつけたっけなあ…?
[車の後部の、不自然なヘコみを眺めている。
すぐ首を振りながら、助手席を開ける。]
さあ、行こう?どこか行きたいところはあるかい?
[そう尋ねながら、運転席に乗り込む。]
[男は、ステラに案内されるまま、部屋に入った。]
………………。
[ステラが部屋に入るのを確認すると、部屋をぐるりと見回した。簡素で、何も無い部屋。少なくとも、「ベッドでまぐわう」為の部屋で無いことだけは確かだ。]
[男は、ステラを見据えて呟いた。]
………服を脱げ。
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