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この1週間、次から次へと忙しい事が起こるわ。
[先程の揉み合いで少し汚れた服を洗濯したネリーは自宅で猫を膝に抱き、ティーを静かに口に運んでいた。
象牙色のソーサーにティーカップ。セピア色の薔薇模様が美しい。
災害を忘れるためのほんの一服。
使用人が時折このような事をすることは相応しくないかもしれなかったが、使用人としての仕事は問題なくこなせており、ボブもそれに満足なのか別段何も言うことはなかった。
やがて再びネリーは立ち上がった。]
さてと、旦那様、これから*どうしましょう?*
―ヘイヴン・路上―
[買い物を済ませるための寄り道に少々時間を取られ、ヘイヴンについた頃にはやや日が傾いていた。
町の通りには未だ惨禍爪痕が残り、側溝に落ちた自動車が半分泥土に埋もれている。
町の中心部、学校近くにある児童公園の脇で僅かな間車を停めた。今は被災者が避難している校舎近くにはトラックが停まり人波ができている。その様子を脇に見つつ、嵐の記憶が刻まれた家並みを眺めた。]
―児童公園脇―
[町の乏しい予算では充分な維持管理が行われず、児童公園の遊具は錆び付いていた。雑草が繁茂するのを放置し続けた結果、公園というよりは荒野の中に古びた遊具が点在しているように見える。
子供達の城は緑の海の中に沈みゆこうとしているかのようだった。
児童公園には一際高く、古びた滑り台の塔が立っている。遠い昔ヘイヴンの地場産業がまだしも活況を呈していた頃、かつての郷里に懐古の感情を持つ有志たちの手によって建てられたモニュメントだ。
木造の滑り台は朽ち、上へと登る階段の床板には損傷も見られたため、今は使用禁止のロープが張られている。子供の頃はその使用禁止のロープをくぐって悪ふざけをしたものだったが。
あれだけの嵐の中でも、その半ば朽ちたヘルター・スケルターが倒壊することがなかったのはこの町の奇跡の一つに挙げてもいいくらいだった。]
[一際高い高台には、バンクロフト家の母屋が町を見下ろすように立っていた。かつてバンクロフト家は何代も行政委員を務め続け、町政に深く関わり続けていたが、それも父の代までのことだ。
ヘルター・スケルター以上に古い、もはや歴史的建造物に近くさえあるその家屋が木っ端微塵にならなかったのも、一つの驚きだった。町の高所にあり洪水とは無縁であること、土台が頑強な岩盤の上にあることを割り引いたとしてもだ。
その母屋に隠れ、町からやや顔を背け山々の方向を向くかたちで私のアトリエは建っている。アトリエも同じく、被害というほどの被害はなかった。
被害を受け未だ避難生活を続ける他の町民のことを思えば胸の痛む事だったが、不思議とその事実そのものを好運として手放しに喜ぶ気持ちにはなれなかった。
もし、家に大きな損害があったなら、私はそれをこの町を離れるための口実とできたのではないか。町は私をしっかりと掴んで放さずにいる――一瞬よぎった感覚を不合理なものと笑い飛ばすようにビートルズの『ヘルター・スケルター』を口ずさむ。イグニッション・キーを回すと、再びアクセルを踏んだ。]
―町の中心部付近→学校―
[通りには、トラックのものと思しき大きな轍がくっきりと残されていた。私は学校に様子を伺いに赴くと車を降り、荷物の搬入を少しばかり手伝った。
突然、遠くから金切り声が聞こえてきた。]
「ミミちゃん! どうしたのっ なにがあったの!!」
[町の噂好きの老嬢バーサ・レイリーが、愛犬のトイプードルを抱きかかえ揺さぶっている。元は純白だった愛犬ミミは泥によごれ、首のすわりがひどく悪くなっていた。揺さぶられるたびに口からよだれが零れ落ちている。]
「ミミちゃん!!」
[老嬢の悲痛な叫びは常の状態なら同情に値するものだったが、なにしろ実際に大勢の死者・行方不明者が出た後のことだ。行方不明者に至っては、まだ捜索している家族すらいる。
ルーサー――ラング牧師は獣医も兼ねていただろうか、と思いながら彼女に彼を頼ることを薦めその場を後にした。]
―通り・アンゼリカ前―
[ローズの酒場、アンゼリカの前の通りを抜ける時、黒のカーディガンにロングスカート姿の女性の後ろ姿が目に入った。
――彼女だった。
心の奥底に横たわるなにかの衝動がかすかに身を灼く。一瞬の躊躇があったが、私はその衝動から身を切り離すようにアクセルを踏んだ。おそらく自宅に向かっていたステラの後ろ姿は、急速に遠のいていった。]
―勾配→自宅―
[トネリコやオークの木立を縫う勾配を登る。崖に沿う隘路を通れば、眼下には逆巻く渓流が見えた。嵐のすぐ後の土砂が混じった黄土色は透明に戻ってはいたが、水の勢いは未だ盛んだった。
高台の頂上までは僅かな時間だ。鬱蒼と茂る木々の中に立つ古びた屋敷が目に入る。私は屋敷の青錆の浮いた門扉の横を通りぬけ、すぐそばの自動開閉装置のついたゲートに車を滑り込ませた。]
─雑貨店─
[女性のくれた地図を頼りに、教えられた雑貨店に行ってみると、店番をしていたのは彼女が言っていたような少年ではなく、まだ幼さの残る少女だった。
多大な好奇心と少しの警戒が入り混じった少女の視線を浴びながら、マールボロのパックを買う。尻ポケットから出したしわしわの紙幣を置いて、煙草を受け取った。
店の外で早速セロファンを剥がして封を切る。開いた銀紙のなかから芳香が立ち昇る。]
見習い看護婦 ニーナ が参加しました。
[シャワーを浴び終え、黒いシャツに袖を通し、黒いスカートのボタンを留めながらふと思う。
身の回りで人が死ぬといつも思う。
ぼんやりと自分を空想の世界へと手放す。
人はいずれ死ぬ。どんな形であれ、どんなときであれ。
それが明日であったり、一年先だったり、三日後だったり。
安らかな死もあれば、苦しみと悲しみの死もある。
そのどちらを感じる余裕もなくぷつりと迎える死もある。
自分がもう少し幼いころ、家族は自分を残して死んでいった。
ついこの間の水害で伯母も亡くなった。
さて、自分はいつどこでどんな死に方をするのだろう]
…馬鹿みたい。
[最後には決まってこの台詞。
別に死を望むわけではない。けれど、自分の中の空想の翼はいつだっていろいろな方向に羽ばたいている。
髪を梳かし、軽く身支度を整えると自室を出て階段を降りて、店番をしている従妹に行き先だけ告げて扉を開けた]
―自宅―
[ガレージに車を収納すると、フロントトランクから荷物を出した。生い茂る木々に隠れるようなアトリエ上階の入り口を目指す。
両手にいっぱいの紙袋。ひまわりやガーベラ、ブルースターに百合といった色とりどりの花材を抱えている。
地面に楔を打ち込んだような地下へと伸びるスロープの上にかかる、白塗りの橋を渡り、強化ガラスの扉を肩で押した。]
ただいま!
[声をかけると、私はアトリエの中へと*入っていった*。]
――自宅――
[時間潰しにと手に取った本は、以前親しくしていた人から貰った童話だった。
その内容は子供向けにしては割と残酷で、ある男が、村一番の美人の気を引きたいが為に幼馴染の地味な少女に、色んな貢物を作らせるというストーリーだった。
話が進むに連れ美人の要求はエスカレートし、男もまた無理難題を少女に押し付けていく。しかし少女は文句一つも吐かずに、彼の為に努力を重ねる。血のような赤い布が欲しいと言われれば、自らの血液を差し出し命を落としてしまう程健気に。]
…ばからしい。
[わたしはもう擦り切れるほど読み返したその本の結末を見て静かに本を閉じ、黒いロングスカートの膝元にそっと置いた。
そして思い出に耽るかのように窓の外を眺めた。]
−雑貨店前−
[温い風はわずかにしっとりとしていて、その中に土の香りが含まれる。
ここ数日、従弟を手伝いながら感じていた空気が、今日はなんだか違う気がして扉を閉めかけた手が僅かに扉を閉めることを躊躇する。
かすかに、誰かの視線を感じたような気がして]
(……?)
[元来、自分は視線にはもともと聡い方ではない。
けれど確かに誰かに見られているような気がして瞳を動かしていくと、やがてそれは自分へ視線へと向ける男へと向かう。
その深く青い瞳は目を見張ったまま彼から動かず、扉を閉めかけていた手が重力に負けたかのようにぱたりと落ちた]
[アンゼリカへ向かう道、ぶらりと歩きたい気分だったのか、少し遠回り。
還ってきた時。がらんとした家の中、たった一枚だけ残っていた写真は記憶の中で唯一家族全員で撮った物。
それを置いていったということは、それだけ自分を思い出したくなかったのか。
久しぶりに見た鏡、映る自分は歳相応(やややせぎすだが)に見え、顔知る人々も確実に歳をとっている。同じく久しぶりに訪れた町も何か変わったように写る。
ぼんやりと見上げる空だけは記憶と同じだった]
ローズさん、いるかな。
[回り道もついに終わりを告げ、いつもの倍以上の時間をかけてアンゼリカへ着く]
[わたしは傍らのテーブルに用意していた、ぬるくなった紅茶を啜りながらこの本をくれた人物も同じような感想を述べていたことを思い出して、微笑を湛えた。]
[彼女とは教会での日曜礼拝で知り合った。わたしがまだ修道女としての教えを学んでいる時だ。
いつも母親に手を引かれやってくる少女は、実は自分は少年であるという事を、後に年端の変わらないわたしに打ち明けてくれたのだった。
その後わたしは彼の過酷な人生の歩みと解放を目の当たりにするのだが、彼との最後と呼べる別れの時、その美しくも妖しく微笑む少年が漏らした言葉を、わたしは今でも忘れられない。]
「神は何一つ救ってはくれなかったけど、悪魔だけは俺の事を救ってくれたみたいだよ?」
そうね。神は人を救ってはくれないみたいだわ…。
だからわたしは――…
[底に残った紅茶を緩く揺るがして。
まだ弧を描くその液体を、わたしは一気に飲み干した。]
[それは黒い服を纏った若い女性だった。
扉を閉めかけたところでこちらに気が付いたようだ。深い青の瞳が印象的だ。
見詰め返す様子は何故だか、少し茫然としたようにも見受けられる。]
……やあ。
[まだ火のついてない煙草を唇に挟んだまま、愛想良く笑い掛けた。]
[かつての植民地からやってきたオンボロ車は、やっとの思いで「契約」相手の家の近くまで辿り着いた。荒い息を吐きながら、1955年式トヨペットクラウン・RS型は林の中で昼寝を開始した。]
[男は後部座席から黒革のトランクを引きずり出すと、ステラの家へと歩いて行った。]
―ステラの自宅へ―
―自室―
[毎日すべき事は多い。それでも今日、街であったあの愛想のよい男性と、その向かう先が気が気でならなかった。
思わず左手で頬杖をつき、右手をテーブルに置き、人差し指をの爪をテーブルに立ててトントンと音を鳴らす。]
行きたくないけどやはり行ってみようかしら…
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