情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
[ナサニエルは、ヒューバートの待つ部屋に戻ってきた。
扉を静かに開けたその表情は、伏目がちに――]
[少し躊躇したような様子を見せて、「娘」はふと顔を上げた。]
[服の代わりに纏うのは、肌触りの佳さそうな、まだ使われた形跡の無い純白のシーツ。尻の奥には、ローションをたっぷりと塗り付けてあった。]
『ああ……やべぇ。
これ、最高に恥ずかしいぞ。
俺、どうすんだ……』
[女を買ったことも、いかがわしい店に遊びに行ったことも、ないではない。だが、これはそれらのどれとも違っていた。
心を丸裸にされるようなものなのだ。
私にそんなことが耐えられるのかどうか、動揺しながら煩悶していた。
ナサニエルは、包帯を取りに行ってくれた。
服はこの際着ていなくても問題のないものだったが、包帯だけはこの瞬間必要なもので、私はそれがここにあったことに安堵した]
―小部屋―
[ナサニエルが部屋に入ってきた時、その雰囲気は一変していた。
伏目がちな表情、少し首を傾けた時の繊細な為草――]
ろ、ロティ……
[思わず呟いていた。
一瞬、泪で視界が滲みそうになる。
私の記憶の中に焼き付けられた彼女の姿が、そこにありありと甦っていた]
[ヒューバートの「娘」は、哀しげな表情で椅子に座る。――先ほどまで悪態をつきながら、無礼極まりない表情で居た、その椅子に。
身に纏ったシーツが肩から静かに落ちそうになるのを、右手の指先でそっと掬い上げた。]
[「娘」は、月明りが覗く窓の外を、無言でじぃっと見つめて居る――]
[娘がそこに居る。愛おしさに思わず駈け寄って抱きしめたくなる衝動をやっとのことで抑える。
私には為さなければならないことがある。
彼女に伝えなければならないことが――
束の間の瞑目の後、彼女に向かう眼差しにはやや厳しい意志が宿っていた。]
――ロティ。
私は君を罰しなければならない。
罰を受け入れるかい?
[バンクロフト家の掟に従い、一つ一つの言葉を句切るように明瞭で厳粛な声音で告げていた]
[「娘」は、窓の外を見つめていたその視線をゆっくりと下ろし――「父」をじっと見つめた。]
[ためらいがちに目を伏せ、唇をキュッと噛む。]
[双の手が、自分の腕を掴み――そして、静かに、頷いた。]
来なさい……
[私は“彼女”を椅子の前に導き、頭を左側に、腰を右側に、彼女の体を私の膝の上に預けるように四つんばいにさせる。シーツをまくりあげると、真っ白な双球が顕わになった。
今や、その姿はシャーロットそのままの姿に変じていた。
彼女と重ねた時間のすべてを、その光景を私の“目”は克明に記憶していたのだ。その記憶がナサニエルの纏うなにかの気配に感応するかのように、甦っていた。]
なぜ――
罰を受けなければならないかわかるね?
[私の指先が、右手に巻かれた包帯を、その傷が痛まぬようそっと撫でる]
君は、危険を充分に意識することなく、猛犬に自ら近づいた。
その理由が好奇心なのか、他にあるのかはわからない。
だが、それは無用のことだった。
君は、なにを得るわけでもないのに
腕に怪我をすることになった。
それは、罰するに価する行為だ。
[「父」の膝の上にその身体を乗せられ、「娘」はその身を硬直させた。纏っていたシーツをそっと捲られた瞬間、静かな溜め息が唇から漏れる。]
[右手をなぞられた瞬間、「娘」の指がぴくりと動いた。]
「何故罰を受けるのか、わかるね――」
[身を捩らせ、潤んだ瞳で「父」を見つめる。少し思い澱むように顔を伏せ――頷いた。]
[柔らかく白い肌に赤いあとが残される。私は、その痛みを和らげるように、あるいは愛おしむようにやさしくそっと撫でる。
一つめには、と私は続ける]
君は世界が君に与えた価値に対して報いなければならない。所有するということは、同時にそれに付随する義務を負うということだ。
君は何よりも、自分自身の美しい躰を大切に扱わなければならない。不注意や、無警戒や、あるいは怠慢によって損なってはならない。
いつも気を配り、愛おしみ、注意深く守っていかなければならない――
[言葉をかみしめるように、切々と綴る。
彼女にその意味が充分に伝わるように。
そして、私は再びホーンブックを掲げる。]
…………………ッ!
[ホーンブックが鋭く降りる音に身を硬直させ――おそろしいものに「おそろしい」と意思表示する暇も与えられぬまま、臀部に痛みを与えられる。その痛みに歯を食いしばるが、鼻と歯列の間から、大きく素早い息が漏れ出る。]
[右手の怪我に言及されたからか、頭を左右に振り、「父」から見えぬよう、シーツの中に右手を隠そうとする。]
[再び、新たな赤い跡がその肌に刻印される。私は震える指でその跡を撫でた。]
……私は……
自分自身の全身全霊をかけて、君を守護すると誓う。その義務を果たすよう努力する。
だから君は――
――君も、できたらその責任に答えて欲しい
[“彼女”に言い聞かせながら、いつしか私の両頬を雫が伝っていた。
彼女を傷つけたのは、彼女の好奇心だっただろうか。
だが、私は彼女を守ることができなかったのだ。
それは、私の罪でもあった。]
[ホーンブックを臀部に打ち付けられた「娘」は、おそろしさのあまり「父」の膝の上から逃げだそうともがく。]
[自身のからだを傷つけてしまったこと、自身のからだを「父」のために大切にできなかったこと――そんなことが頭を過ぎり、「娘」は羞恥のあまりその頬を真っ赤に染めた。]
[臀部に走る、鈍く鋭い痛み――その場所が赤く染まっていることを、「娘」は見ずともその上に響く熱で、感じていた。]
二つめに、君は、私の忍耐力を過大に評価しすぎてはいけない。
私がなにに耐えられ、なにに耐えられないかを知らなければならない。
[今や、その声は震えていた。
嗚咽で喉が詰まる]
君は、自分自身の怪我の痛みに耐えられると思うかもしれない。
だが、私が君の怪我に耐えられるわけがないのだという事実を忘れないで欲しい。
[そこまでやっと言葉を紡ぐと、もう耐えられなかった]
……ああ、ロティ……
耐えられるわけがないだろう!
君が怪我をすることに――
君を喪うことに……
……あぁああああぁ……
[私は今は“シャーロット”であるナサニエルの背中を抱きしめ、泣き伏していた]
[臀部に広がる赤を撫でられ、「娘」はハッとして顔を上げた。]
[身を捩らせて「父」の顔を見上げる。
――「父」は、泣いて居た。]
………………。
[父の言葉に、ゆっくりと頷く。]
すまない、すまない――
……ぅう、あああ……
[私は何度も詫びながら、泪を零し続けた。
それは、誰に向けられた謝罪だっただろうか。
喪った娘と、この場で娘になってくれたナサニエルへと――
あるいは、無力にも救うことのできなかった数多くの愛する人への
しばらくの間、怺えることのできない慟哭に身を委ねていた]
[ふたつ頷いた時、「娘」の視界に、嗚咽する「父」の顔が真っ赤になっているのが入った。「娘」は、目を細めて父を仰ぎ見る。]
……………………!?
[次の瞬間――「父」の腕が、「娘」の身体を抱き締めた。「父」の体温が、シーツごしに「娘」のからだに伝わってくる。]
[ナイフをシースより抜き放ち、]
[短い、「ヒュッ」と言う呼吸音と共に、]
[身体を丸めて目指す部屋に向かって飛び込み、体当たりで扉をぶち開けた。]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 エピローグ 終了 / 最新