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学生 ラッセル は 流れ者 ギルバート に投票した。
酒場の看板娘 ローズマリー は 流れ者 ギルバート に投票した。
流れ者 ギルバート は 吟遊詩人 コーネリアス に投票した。
吟遊詩人 コーネリアス は 書生 ハーヴェイ に投票した。
冒険家 ナサニエル は 流れ者 ギルバート に投票した。
文学少女 セシリア は 学生 ラッセル に投票した。
書生 ハーヴェイ は 流れ者 ギルバート に投票した。
流れ者 ギルバート は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、文学少女 セシリア が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、学生 ラッセル、酒場の看板娘 ローズマリー、吟遊詩人 コーネリアス、冒険家 ナサニエル、書生 ハーヴェイ の 5 名。
[涙で霞んでコーネリアスには見えなかったであろう表情は、銃口を突きつけられても尚何処までも優しく穏やかなもので]
――有難う…
[コーネリアスの承諾の言葉を受け安堵の溜息と共に零された筈の言の葉は、銃声に掻き消されて彼の耳に届く事無く]
おいで。
[優しい声音。
いつも憎まれ口しか叩いてこなかったけど。]
お前と一緒に過ごした時は、
かけがえない大切な時間だったよ。
[強引に手を引いて目的地にたどり着く。
抵抗したかもしれないけど……それでも頭を――常のような乱雑さではなく――優しく撫でてビンタも覚悟で額にキスを*落とした*]
[ぽたり、ぽたりと落ちたのは──]
…ごめん。
ごめん、ニコル──
[ごとりと手の中から重たい塊が落ちて、足はゆっくりと倒れたその体へと近づき、しゃがんで、その頬に指をそっと添えて]
…俺、は──
[漆黒の仮の瞳を見ていられないとばかりに瞼を指で伏せれば彼にすがって、声を上げられる限り子供のように*泣いた*]
[明滅する光と闇の渦の中心に立ち、眼前で童子の如く泣く男を静かに見詰める漆黒の双眸は、明滅する光を映し込み伽羅色に煌き、闇の渦を映し込み紫苑に煌く]
謝る事なんて、無い。
――…君は、生きてる。
[室内の極彩色の家具を透かす光と闇を内包する姿は揺らめき、横たわる亡骸と縋る男の傍らへと片膝をついて、もう目蓋を持ち上げる事の無い男の寝顔を、伽羅の煌きと紫苑の煌きを交互に放つ漆黒の双眸が見詰める]
[明滅する光と闇の渦を映し込み漆黒の瞳は伽羅と紫苑の煌きを零し続け、童子の如く泣く男に縋られても脳漿を飛び散らせ転がる男の貌を静かに見詰めて居たが、緩やかな瞬きと共に視線は逸れ其の姿は揺らいで、次に像を結ぶ頃には部屋に背を向け扉の前に立ち]
君に、生きろとは望まない。
でも未だ君は――…生きてる。
[生前と変わらぬ声が淡々と聴こえる筈も無い言の葉を紡ぎ、揺らぐ姿は極彩色の家具達に彩られた先程までの自室から*消え失せた*]
[いつもと変わらない歩調、変わらない表情。
自室に戻って来ればテーブルの上に視線を投げて]
――ただいま。
[そこにあるものに挨拶するというのもおかしな話で。
"瞳は残しておいて"と呟いた声を思い出してゆるりと首を振る。]
――……今は、誰がいるんだっけ。
[と、一層どうでもよさげな声音が室内に*溶けた*]
[途切れ途切れに通路に現れては消える揺らめく姿は、生前より一層に浮世離れした不確かな歩みかも知れず、最早創られた重力に囚われる事も無く壁に遮られる事も無く、カプセルに鎮座する眼球の元へ辿り着く]
――…
――…おかえり…
[背を向けていた扉が開き部屋の主の戻る気配と声に、姿は揺らぎ主たる男へと向ける貌は、仄かな微笑を浮かべ]
――…君が居る。
[誰にとも無く呟かれた投げ遣りにすら響く問い掛けに聴こえる筈の無い答えを囁く頃には姿は揺らぎ、交互に伽羅と紫苑の煌きを放つ双眸は眼球の入ったカプセルを見詰め]
君も、居る?
[聴こえる筈も無い問い掛けに応える声がある筈も無く、静寂を妨げるのは部屋の主たる男の微かな息遣いと活動音のみで、明滅する光と闇の渦を内包する姿は言葉を紡がなければ身じろぐ気配一つ無く]
〔冷たい通路に横たわる亡骸、屈み込んで嘆く男の声。
いつしか遠巻きに佇む白衣姿の此方は、ギルバートと
コーネリアスを暫く眺め遣った後に―億劫そうにインカムのスイッチを入れる〕
…D-7通路に遺体袋とストレッチャーを頼む。
Nicholas Gilbertが死んだ。
〔喉の渇きを憶えながら、伝える声を発し〕
〔声は皆へ向けての文字メッセージに変換される。
続けてまだ泣きじゃくっていたコーネリアスへと声を
かけようとして、インカムからのエラー音に気づき〕
――…、? …
〔システムは、メッセージを受け取るべき者の一人が端末を通信の届かぬ船外へ持出していることを告げる。〕
Cecilia …Vaughanか? 船外…
〔軽い混乱――〕
―回想―
[嘆く男の傍らに膝をつき目覚めぬ男の寝顔を見詰めているうちに、新たな気配が近づいて来るのに姿は揺らめき、伽羅と紫苑の煌きを零す漆黒の双眸は、借り物の眼球を生前の亡骸に施した白衣の男を捉える。
亡骸の男の始末の為に通信をする男の続き紡がれる言葉に姿は揺らめき、次に現れた姿は傍らの白衣の男の抱く軽い混乱と同様の想いを抱いて不思議そうに首を傾げた]
―現在―
[生者には見える事の無い揺らめく姿は其処に何も存在しないかの様に、眼球の入ったカプセルの傍らに静かに佇み目蓋をおろす]
――…
[生前と同じく口唇だけが何事かを小さく囁く代わりに姿は揺らめき声は発せられる事無く、其れを読み取れる数少ない部屋の主たる男にも揺らめく姿すら見えはしない儘に]
―自室―
[眠る気にもなれず、ただ壁にもたれて座り込んで居ると通信が入り眼を通す]
―ギルバートが?
[何故と思うと同時に彼ならありえそうだとも思い―衝撃も混乱も何処か遠いままに返信する]
了解―誰がやった?
[窓辺に立ち、縫い止められたように視線は闇へ。]
……――。
[ハーヴェイから通信が入る。
けれど返事もせず、その場からも動かず、
視線だけは闇から逸らじ彼゙を見つめ。]
[白衣の男の傍らで彼が通信機に向かい紡ぐ言葉を聴いて居た筈なのに、透明な板の向こうに広がる闇を見詰める男の傍らで、其の通信を受け取る気配に姿は揺らぎ、伏せられていた目蓋は持ち上がる]
――…君か。
[半ば予想はついていた口振りで小さく呟き、男の視線が注がれる眼球の仕舞われたカプセルの傍らに立ち、還る筈であった星の色を宿した眼差しを見詰めるも、伽羅と紫苑の煌きを零す視線と交わる事は無く]
〔何れ誰かが運んでくるストレッチャーが通りやすいように、部屋の扉を開け放つ。ふわりと硝煙の香りが其処から逃げ〕
…Cornellius Northanlights.
〔ラッセルの通信に応えるのと、その名を持つ人物への呼びかけは同時に。半ば自殺幇助であろうことは、勘の良いラッセル故に態々告げはせず〕
――解体作業は、僕が適任だろう。
〔医療キットからレーザーメスのコードを引出す
―ピィ、と軽い音。〕
―そう。
[少し意外だったが―良くは知らないが他の者達とは違って彼にそんな度胸があるとは思えなかった―ハーヴェイが嘘を吐く理由も無いと判断する]
…ああ。Russel Saul,あれは…
〔伝えかけて、ふと胸元へ視線を遣る。胸ポケットからボイスレコーダーを取出して、慣れた様子で片手で操作し――インカムのマイクへ近づけてギルバートの声を再生する。
中核部でトラブルがあったら、ラッセルを頼ると好い―〕
お前を高く評価していたようだ。
[交わる事の無い視線に姿は揺らぎながら刹那仄かな微笑を浮かべ、生前カプセルと共に返した煙草へと伽羅と紫苑に煌く眼差しを注ぐ]
其れは――…君の色。
[静かに囁く言の葉は淡々とし過ぎて逆に何処か奥底から溢れる感情を想わせ、揺らぐ姿は顔をあげ部屋の主たる男の奥の透明な板の向こう側に広がる闇と点在する無数の光を見詰める]
ずっと、見えなかった。
……そう。
[誰かに頼りにされてる―そんな事今まで考えた事も無かった]
…………。
[思わず入力しかけた単語を削除してそのまま沈黙だけを送信すると頭を振った。
「ありがとう」なんて言って何になる?
もう、ギルバートは居ないと言うのに―]
[生前の肉体に収まっていた眼球の傍らで透明な板の向こう側を見詰めている頃、揺らぐ姿は通路にも転々と残像を残しては消え、間接的に中核部の事を任せた未だ少年の面差しを残す男の部屋にも現れる]
君なら――…
[生前の口唇だけが囁く物言いに今は姿が揺らぎ、見て取る事も叶わぬ想いは死亡通知を受け取った男へと届く事もなく]
[テーブルの゙彼゙を手に取り、先日彼に渡した煙草を拾うとベッドに腰掛け両方を見つめる。]
……知ってる。
[長い長い間の後にハーヴェイに一言返した。
「瞳だけを残す」条件は彼が喰われること。
煙草を見つめ、けれど吸うこともなく、
その一本だけを胸ポケットに入れた。]
俺も人なら殺されることを選んだのかな――?
[瞳は答えない。]
[眼球の入ったカプセルと煙草を手にベットへ腰を下ろす男の気配に姿は揺らぎ、漆黒の眼差しは男へと向けられる]
[――…知ってる]
[其れは自身に向けられた言葉ではなかったけれど、何処か会話は噛み合っている様な錯覚を起こさせる返答でもあり、揺らめく姿の纏う雰囲気の微か和らぐ間もあり]
如何、かな。
[答えぬ瞳の代わりに届かぬ言の葉を紡ぐ]
…ん。
〔素っ気無い返答と、続く沈黙と。ヒトに理解の薄い此方には、ラッセルの心の機微までは慮れなかったが〕
――僕は、あれの言うことは一応
真に受けてやることにしている。
[男が人間では無いと本人から聴いていた訳でも無ければ、何処かから聴き知っていた訳でも無いけれど、薄々と感じ取っては居たのか事実に対して何の感情の揺れも無く]
俺は、足掻いた。
君も、足掻いた。
[――…其れだけ、と小さく囁きを沿え姿は揺らぎ、消えて現れた姿はベットに腰掛ける男へと手を伸ばし其の頭を擦り抜けて居て、揺らぐ度に手の位置が微妙にずれているのは生前好く男にされたのと逆に男の頭を撫でている様にも見える]
君は未だ、其処に居る。
〔ラッセルと通信を交わしながらギルバートの部屋から出、扉から正面の通路に凭れ掛かる。すぐには返信のなかったナサニエルから一言が届き憮然として呟く〕
そうか。…
……死神とお前は、時に僕へ同じ感情を運ぶ。
〔食堂での会話に途切れた続きを*口にした*〕
[ゆったりと立ち上がり、手にしていた瞳を戻す。
少し思案気に見つめて、結局持ち出さないことにしたらしく。]
託されたのは俺、か……
人は生者に何かを託して死者になるなら
託すものがない俺は死ねなくなった。
[死ぬつもりもなく、誰かに殺されでもしなければ死なず。
そこには頭がないから、その容器をそっと撫でて]
勝手に重力いじるなよ?
[言い残し、部屋にロックをかけ後にする。]
[立ち上がる男は揺らぐ姿を擦り抜けるも何の感覚が其処に残る事も無く、机の上にカプセルの戻される小さな音に掻き消えた姿はまたカプセルの傍らに現れ、容器を撫でる様子に獣の如く目を細め姿は揺らぐ]
死に急ぐ必要は、無い。
[――勝手に重力いじるなよ?]
[部屋の主たる男の言葉に仄かな微笑を浮かべ、漆黒の瞳は扉の閉まるまで其の後姿を見詰め続けて、部屋にロックのかかる音を合図にしたかの様に揺らめく姿は消え失せる]
ハーヴェイ……?
[いつかの会話の続き。
つい先ほどのことなのにどこか遠い。]
――じゃあ、案外死神なのかもな。
[返した言葉は冗談ぽくもあり。
足はゆっくり瞳の彼の部屋へ。]
[生前の自室の扉から少し離れた辺りにも揺らめく姿は立ち尽くし、白衣の男の他者との遣り取りを見守っていたけれど、背後から近づく気配と声に振り返らずとも、眼球を預けた男は揺らぐ姿を擦り抜けて眼前に現れる]
――…死神…
[薄い唇は二人の男が紡いだ単語をなぞる]
[――……浅い眠りは着信を知らせる短い電子音で妨げられて。
告げられる人物の死には嗚呼、と小さく呟いたきり。]
……食べられるモノが、食べられるようになった。
[闇の中でも確かな毛並みを柔らかく撫でて。
ただ一つ足りないものがあるとすれば熱だろうか。
手探りでポケットの中から携帯端末を引き出し。
ウサギにコネクトする。
液晶の反射板の発する灯りがぼんやりと部屋を照らして。]
――……I see.
結局皆、肉の塊。
食って良いか、いけないか。
腐るか、そうでないかの差。
[流れる文字にくすくすと笑って端末を仕舞い込む。]
……死んだフリの私は腐るもの?
[――自分も。]
[通信先の白衣の男へと返す少年の如き面差しを残す男の短い言葉に、姿は揺らぎ消えては現れる姿は緩やかに左右に被りを振り]
人間は――…嘘吐き。
[睡眠と云う仮初めの死に身を浸し死んだ振りをした女の元へも揺らぐ姿は現れ、女の紡ぐ言の葉に揺らいだ姿は白い柔らかな毛並みを纏う機械の傍らに現れる]
食べれるなら、成る必要は無い。
[――…死んだフリの私は腐るもの?]
[誰に向けて投げ掛けられたのか回答の無い儘に消えて行く問いに、揺らぐ姿は生前と同じ様に思案気に緩やかに首を傾ける]
――…真似事は真似事。
[眼球を預けた男が生前の自室へと入っていくのを見詰めるも、通路に立ち尽くした儘に後を追う素振りも無く、未だ其処で躯に縋って童子の如く男が泣いているのかも確かめずに]
[揺らぐ姿はゆっくりとコマ送りの動画の如く白衣の男へと向き直り、生前に男に施された漆黒の瞳が男を静かに見詰め]
俺は、君の処の動物と似てる。
君の処の動物と違って――…
[揺らいだ姿はふと全ての警戒を解いた如くに纏う気配が和らぎ、まるで憑き物の落ちた様に僅か目許を和らげ]
飼い主面した連中は殺してしまった。
〔ラッセルと意見の一致をみたところで、室内のコーネリアスを見遣る。目を細めて、くしゃりと前髪をかき混ぜ〕
ヒトらしくない、か。
〔面白くもなさそうに呟いて、緩慢な仕草で鞄から注射器を取出す。此方へ背を向けた銀の髪持つ青年へ向けて歩き出しながらナサニエルの声を聴き――〕
[室内へ向かおうとする白衣の男の手には注射器が見えたけれど、生前の言葉通り何をするにしても口を挟む気は無いらしく、そして生前の言葉通り躯に縋っていた男の死ぬ姿を見る気も無いのか、決して部屋へ向かおうとはぜず]
[部屋の前に到達。
目的があったわけではなかった。
ただなんとなく、足が向いて。]
光と闇の答えは見つかった――?
[部屋に一歩進み入り、ハーヴェイでもコーネリアスでもなく、そこに在る遺体に問いかけた。]
〔ヒトらしくない――とセシリアの声がまた脳裏を掠める。銀の髪越しに狙いを定め、コーネリアスの首筋へ針を突き刺そうとして――〕
……! …
〔部屋へ入ってきたナサニエルの声に、びくん、と目に見えて肩が跳ねた。…次いで、手にした注射器を緩慢に下ろし〕
――…
[――光と闇の答えは見つかったか――?]
[未だ朽ちて逝く最中の躯に向かい投げ掛けられる問いは、通路に居ても生前からの発達した聴覚にも届き、揺らぐ姿は扉の向かいの壁に嵌め込まれた透明な板の向こう側へと漆黒の眼差しを向け]
そうだね。
見えなかっただけで――…
[透明な板の向こう側で明滅する光と闇の渦を映し込み、漆黒の双眸は伽羅と紫苑の煌きを零す]
ずっと、在った。
…………。
[びくりと震えた肩。
首を傾げてハーヴェイの後ろ姿を見る。]
ハーヴェイ?
[声に出した時には注射器が見えて。]
――何、してた?
[生前の自室から声が聴こえるけれど振り向かず、揺らぐ姿は透明な板へと手を伸ばし――…擦り抜け、宇宙空間に出た掌はコマ送りに握ったり開いたりを繰り返し]
君は――…如何する?
[静かに紡がれたのは誰に対する問い掛けなのか、生前の自室で亡骸を取り囲む誰にも届く事無く、零れ落ちるばかり]
〔――極彩色の室内。一度跳ねてしまった心臓は容易に落ち着かない。ゆるゆると息を吐いて〕
……人殺し。
〔未遂かなと呟きを落とし、ナサニエルへ振り返る。
手にしていた注射器は――「空」だった。〕
〔大きく息を吐いて、動揺から脱したいようにインカムのスイッチを入れる。ローズマリーへと回線を開き〕
――Rosemary Muller…
Cecilia Vaughanの端末が船内に"ない"。
調べたほうが良さそうだ。
〔事務的に伝えた後で、額を押さえ目を閉じる〕
……そう。
[咎めることもいぶかしむこともない声音。
空の注射器に目をやり、ゆるく瞬いて。]
――死神の真似事?
[静かな問いかけ。
どこまでも穏やかに。]
[ローズマリー宛の通信。
目を僅かに細め、見守って。
口は開かない。
ただ、額を押さえて目を閉じた彼の髪に手を置いて、静かに梳くだけ。]
[――…人殺し]
[握って開いてを繰り返していた手はぴたりと動きを止め、背後で白衣の男が零す単語に揺らぐ姿は自室の扉の脇へ、寄り掛かる事は無いけれど生前に船長の部屋の前でそうしていた様に壁際に寄り]
生きて逝く事は、死んで逝く事。
死んで逝く事は、殺して逝く事。
殺して逝く事は、殺されて逝く事。
[静かな歌でも歌う様な囁きは零れて解ける]
[白衣の男が白いふわふわと柔らかな毛に包まれた機械の持ち主の女へと送る事務的な通信に、姿は揺らぎ現れる像はコマ送りで緩やかに首を傾ける]
たぶん此処には、もう――…
[居ない、と小さく囁く頃には眼球を預けた男の声が聴こえ、直ぐに嘆く男の殺される事は無いと判断したのか姿は揺らぎ室内に現れる]
僕が何であるか、お前は知っているはずだ。
〔問う声への応えは半ば応えで、半ば黙秘で。
梳かれた髪が解れるのへ気が至ると、薄目に睨み〕
…不快ではないが、癪だ。
お前たちの在り様は。
〔あくまで耳触り良い相手の声音に、僅かに被りを振る。死神と彼を一括りにした理由の断片を呟き〕
――……ハーヴェイはハーヴェイだ。
それ以外の何者でもない。
[あくまでその口調に棘はなく。
けれど、次に紡がれた言葉はほんの僅かに違い]
換えのきかないいのち。
[薄目に睨まれてもひるむことはなく、]
――癪だったか。
気付かなくて悪かったな。
[言って、最後に髪を掬うようにして手を引く。]
ハーヴェイはハーヴェイ、俺も一人しか居ない。
[゙達゙という言葉に首を傾げつつ。
一人でも、換えはいくらでもきくいのちに
瞳には僅かに何らかの色が含まれ。]
[眼球を預けた男が手のを伸ばし白衣の男を撫ぜる其の手と揺れる髪を見詰めて居たが、白衣の男の声に姿は揺らぎ漆黒の瞳は其れを施した男へと向けられる]
――…?
[揺らぎ紡がれた問い掛けは音に成らず]
[揺らぐ姿は其の姿に成って直ぐと同じ様に躯の傍らに片膝をつき、躯に施された義眼ではなく其処に収まっていた筈の眼球を預けた男の声を頭上に聴きながら、再び其の寝顔を見詰める]
一人と、一人。
みんな、一人。
君も――…
[一人、と揺らぐ姿は何処か満足気に囁く]
ああ。換えは利かん――僕の患者の命もな。
選択は今や、各々の価値観で為される。
〔ギルバートの血肉が本当に彼の言った効果を齎すのならば、実験動物たちの為に伏せておかなければならなかったが…ナサニエルの纏う雰囲気に僅か胸の内も漏れ〕
悪い? …違う。それも記憶の一部だ。
〔持ち上がる髪が彼の手指の動きに従って降りてくる。
その陰で目元をむずつかせるような気配があり〕
その通りだ、Nathaniel Regel.
だから僕、はお前、を殺して喰わないと――
〔「決めている」。口にすることが甚だ不本意そうに、だが彼の奥へ翳りゆらめくような双眸を見据えて*言い置いた*〕
そう……だな。 いいんじゃないか?
お前はお前の守りたいものを守るといい。
[各々の価値観。重きを置くものの差。
彼女を逃がしたのも自分の下した判断。
食料を逃がしたと思うやつもきっといる。]
記憶の一部……?
[反射的に聞き返した声は無理に問うようでもなく、
けれど確かに興味は惹かれて小さく首を傾げた。]
[続き紡がれた言葉には純粋に驚いたような目で見返し、すぐ取り繕うように室内の別の場所へと視線を彷徨わせた]
託されたものがなければ殺されてもいいと思ってた。
でも、今は託されたものがあるから、死ねなくなってさ。
……だから、命を取りに来る奴に容赦はしない。
[室内のそこかしこにはわせた視線を再び戻し]
……ハーヴェイを殺さずに済みそうで良かったよ。
[不本意そうな声音にくすりと*笑って*]
[頭上で交わされる会話の間に姿は揺らぎ消え次に現れるのはベットサイドの月白色の机の傍らで、コマ送りの揺らぐ姿は興味が湧いたのかホログラム時計の文字に振れて、背後で目の前の男を喰らうと云い置く白衣の男の声を聴きながら漆黒の双眸は歪まぬ文字を見詰める]
殺して、喰う?
[揺らぐ姿は全く同じ位置で振り返ったかの様に生前の自室に居る者達に向き直り、白衣の男を見詰め揺らぐ姿はコマ送りに其方へと歩み]
殺さずとも、肉は其処に有る。
[数歩の距離から一旦は躯を見下ろし揺らぐ姿は立ち止まり、白衣の男へと顔を向け漆黒の双眸は不思議そうに殺意を口にする男を*見詰めた*]
[――死ねなくなった]
[眼球を預けた男の言葉に姿は揺らぎ視線は其方へと向くも、漆黒の双眸は矢張り不思議そうに暫くの間は其処に立つ男を見詰めて、やがて何を想ったのかふと仄か微笑えみ]
君は――…
[揺らめく姿は其の部屋にも現れコマ送りに辺りをゆっくりと見回し、元はこの船の責任者たる男を漆黒の瞳が捉えると、生前に船長と呼ばれた男は誰にも見止められる事の無い筈の姿を見止められ息を呑み驚愕の色を浮かべる]
君には、世話に成った。
何故――…死んだ?
[揺らぐ姿が問い掛け首を傾ける頃には漸く、男にも扉は開かず目の前で首を傾げている船員が自身と同じ境遇なのだと悟り、深い溜息を吐いた後に運の無い事故だったと語る]
そう。
[引き金を引いてしまった、と重苦しく頭を抱える船長と呼ばれた男を前に、揺らめく姿は緩やかに被りを振る]
君が死ななければ、誰か――…
[殺してた、と何の抑揚も無い声が囁く]
[男は自身が死んでから戸惑い、慌て、混乱し、残る船員達に必死で声を掛けて周って、叶わぬと知ると此処に閉じ篭っていたのだと云う。
訥々と語られる言葉を相槌も打たずに部屋の壁に嵌め込まれた透明な壁の向こうを見詰めた儘に黙して聴き、話が副船長たる女の連れて出た脱出艇に及ぶと漸く姿は揺らぎ船長と呼ばれた男へと向き直る]
血液は、渡しておいた。
運が良ければ、生き延びる。
[生前に脱出する同僚に頼んだ飲料水への混入薬の中身は血液で、船長の命に依り幾らかを抜き小瓶を渡したけれど、精製する間も無かった其れは紅く同僚は多少不気味がった後に、何故医療機関船員でも無い者から薬が配布されるのかと不思議そうに其れを受け取っていた。
彼等が毒々しい色の其れを信じて服用したかも疑わしいが、服用したところで無事に帰還出来るかも疑わしい状況には変わりは無い]
[船長と呼ばれた男は脱出艇の船員達や船に残る船員達の未来を想い描いたのか盛大に被りを振り、力無い笑みと共に謝辞と労いを紡ぎ向けられる背は漆黒の双眸には生前より随分と小さく映る]
[――是から如何する?]
[紡がれる問い掛けに姿は揺らめく事も無く、船長と呼ばれた男の小さく感じる背中を見詰め]
――…還る。
[――還るなら何故、此処に居る?]
未だ、少しだけ見届ける。
[船長と呼ばれた男は相槌を打ち、自身はこの船に想い入れが強すぎて何処へも逝けぬらしきを語り、今更ながらに気をつける様にと忠告まで呉れる。
揺らぐ姿は僅かに纏う雰囲気を和らげ消え去り際に呼び止められ、「君」と呼ばわれた事を思い出してか自身の名を紡ぎ、揺らぐ姿に当人の名を覚えているのかと問う]
[そうか、と船長と呼ばれた男は静かに答え]
[――――――、―――。]
[揺らぐ姿は仄か微笑み部屋から消え失せた]
――Got it.
[ハーヴェイからの通信に短く答えて。
ウサギを抱き上げたまま暗い部屋を出かけて――]
……。
[一度部屋の中に戻ると、テーブルの上の首輪をポケットにいれる。]
……壊れたか、無くしたか。
うーくんトレースできる?
[きょとりと首を傾げるウサギに、こちらも首を傾げて。]
[照明を消した暗い部屋の隅にじっと蹲って]
―まだ大丈夫。空腹は感じていない。後1日は持つ―
[ギルバートを喰らう―それが何故か躊躇われて。食堂にも部屋にも行く気が起きなかった―]
[呟いて数歩歩いてから足を止める。]
――……船内に無い、といったか。
ということは必然的にセシリアの端末は外……か?
[軽い眩暈のようなものに眉間を抑える。
アーヴァインを喰っていくらかマシになっても極度の飢餓状態には変わりない。]
……端末が君みたいなのなら兎も角。
アレの端末が一人歩きするなんて話はついぞ聞いてない、な?
[軽く首を捻った後、足を脱出艇の格納スペースへと向ける。]
[生前の自室で目蓋をおろしているのと同じ頃に、揺らめく姿は白い柔らかな毛並みを持つ機械を抱き上げた女が部屋を出て行くのを見守り、揺らいだ姿が消えかけた頃に再び部屋の扉は開く。
女の行動を見届け室内が無人に成ると姿は揺らぎ、コマ送りに消えては現れる姿は壁を擦り抜け女の数歩後を追う]
〔容認し合う先にある矛盾には今は言及せず、額へ当てた手を浮かせて大丈夫だと伝えるように振る。自分のように鈍感ではない筈のナサニエルを逆に案じる沈黙があって〕
記憶。…思い出と言うのかもしれん。
〔口数少なに付け加えて、手にしたままだった注射器のキャップを戻す。そんな些細な仕草で相手の動揺は見ない振りを〕
託されたもの、な。…
〔一度ギルバートの屍を見遣るも、そればかりではなかろうと朧に感じ取った紫苑の行方には口を噤む〕
殺さずに済みそう、程度にしておけ。
〔愛想の欠片もなくナサニエルへ答え、コーネリアスへと視線を向ける。今の遣り取りで自分に殺意が向けられていることを彼も気づいたのだろうから〕
――お前は、僕が守りたいものに含まれない。
〔銀の髪持つ青年の膝元へ、タブレットを放る。義務は果たしたと告げる代わりに、常の突き放したような視線で彼を見下ろした〕
[同じ頃に少年の面差しを残す男の部屋で揺らぐ姿は、暗い部屋で隅に蹲る男の前に立ち静かに男を見詰め、男の口唇から零される呟きに姿は揺らぎ貌を覗き込む様に首を傾ける]
肉は、有る。
[コマ送りに揺らぐ姿は男の前に片膝をつき]
君は――…何色?
……誰もアンタに守ってくれなんていってない。
[少し赤くなった瞳で緩やかに睨み付けながら]
…そもそも、誰かに守ってくれなんて頼んだ覚えなんてない。
ニコルにも代わりに死んでくれって頼んだ覚えもない!
[感情の高ぶりのままに強く声が響くか]
……みんな、勝手だ。
[生前の自室に立ち目蓋を下ろしていた姿は揺らぎ、開いた漆黒の眼差しは一度は其れを施した男へと向けられ、更に童子の様に泣いていた男へとおりて]
そうだね。
[静かに同意の言の葉を紡ぎ姿は揺らぐ]
君も、思う通りにすると好い。
[白衣の男の手のレーザーメスと生前に自身に向けられた銃を視界に捉え、姿は溜息でも零す様に揺らぎ其の場から消え失せる]
――
そんな声をしていたんだな。
Cornellius Northanlights.
〔一度散じた殺意を呼び込む作業に困難さを憶えつつ、コーネリアスの感情が迸り出すのを受け止める。〕
…では僕も言わずにおこうか。
〔「代わりに死んでくれ」とは――〕
〔細いコードが宙へ翻って弧を描く。アタッシュケースを自分の体の前へと突き出して盾としながら、コーネリアスの瞳を狙い〕
〔"ヂッ"――蒼白い閃光を彼は見ただろうか〕
[青白い光、それが視界に飛び込んできたのを見たのが左目の最期の光景]
───っ!
[左目を灼いた痛みに声をあげなかったことは彼なりのポリシーにもとづいたものか。
赤い涙を流す左目を押さえながらわらった。
銃は床に落ちたまま]
……殺したいならさっさと殺せよ。
俺を貪り食って生き延びればいい。
どうせ、もうここに居続ける理由もない───
[光を見続ける右の瞳だけが強く光るだろう]
[生前の自室から姿が消失し亡骸の周辺で殺戮の始まろうとする頃には眼球の収まるカプセルの前に揺らぎ像を結ぶ姿もあり、漆黒の眼差しは対の眼球を前に黙し静かに見詰め合う]
――…泪を零せれば良かったのかな…
[薄い口唇だけが紡いだ筈の言の葉は誰に読み取られる事も無く、届かぬ呟きすら誰に宛てたものかも判らずに]
[悠然と、そこに争いなど存在しないようにゆったりとした歩調で彼に近づく。
殺意などなかったから注意は向いてなかったかもしれない。
銃をの所までたどり着けば拾い上げ、無機質に眺めて。]
……――。
[銃をくるくるまわしながら赤い涙を流す彼を側面に感じ、彼が吐いた言葉に瞬き回転を止めて握り直す。]
――じゃあ死ねば?
皆生きるのに必死。
生きる気のないやつにかくる情けはない。
[視線は正面を向いたまま――
腕を側面に延ばして引き金をひく。]
[どれほど闇の中に蹲っていただろうか―ふらりと立ち上がるとロックも外したまま廊下に出て当所無く彷徨い始める―]
船長、ギルバート…次は誰?
[囁く声は空気を微かに震わせ消えていく―]
[少年の面差しを残す男が立ち上がり擦り抜けていくのに、姿は揺らぎコマ送りに部屋を出て行く男の背中を振り返り、ゆっくりと立ち上がり男の後を歩き始める]
たぶん――…
[彼、と小さな囁きも男に届く筈は無く、一人分の足音だけが響く通路に零れて消える]
…死ぬさ。
俺に生きる気がなくても俺の肉を冷凍にでも放り込めば、まだしばらくはみんな保つだろ。
[ナサニエルの言葉を俯いたまま耳にする。
その口元はとても穏やかに微笑んでいるか]
…───。
[かすかに唇が揺れて空気を吐き出す。
ニコルとの約束は結果的に破ったことになるのだろうか、と頭の端で考えようとしたけれど、響いた銃声によってその意識は硝煙の香りを感知すると共に*ブラックアウト───*]
[脱出艇を使うためのコントロールパネルの前。
うーくんと制御システムをコネクトする。]
――……誰か出た形跡があるな。
しかもつい先刻……
[居なくなった、といわれた該当人物だろうか。
思案顔でうーくんを抱き上げる。]
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