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[ステラが個人で管理していたキャビネットから持ち出した、ファイルケースを大きな机の上に置く。
私は椅子に腰をかけると、隣のハーヴェイと話をしながら写真を一枚一枚改めていった。
その手が、一葉の写真を前に止まった。]
これは……
[ニーナと一緒に映る一人の少年。おそらくは、ラルフとおぼしきその貌を漸く見いだしていた。脳の奥がチリチリと痛痒を感じ、それが確かに記憶に重なる人物であると直感する。
しかしなぜ、と私は思う。私はなぜこの少年の記憶を消したのか。
そこに映っていたのは、整った顔立ちではあったが鋭く尖った印象は特になく、凡庸といっていい雰囲気の好感の持てる少年だったからだ。]
いや――
……そんなバカな……
[突如戦慄が首筋を伝って駆け抜けていった。その面影はつい最近出会ったばかりの人物と奇妙に重なることを、直感が唐突な閃きをもって指し示したからだ。]
“兄さん”――
……そういう…ことか……
[顔をあげ、私は虚空を睨んでいた。その奥深くにある人物の姿を思い描きながら]
[ヒューバートが記事を覗き込み、驚愕した表情をする。隣で整理を手伝いながら資料探しをしていたが、ふと覗き込むとそこには先程見た─]
これ……この人……
ニーナさんの…お兄さん…?でも…
[恐らく直感したことは珍しくヒューバートとシンクロしただろう]
[2ヤードにも満たない距離。這って進んだ時ほどではないが、随分と時間が掛かる。私は荒い呼吸を繰り返し、漸くニーナの柩に辿りつく。]
──…ああ。
だめ、きちんと閉じられた蓋を開けるだけの力が…今の私には。
[私は柩に縋るようにして床に崩れ落ち、台座の横に倒れこんでしまった。目眩と吐き気が酷い。]
[シーツに零れ落ちた唾液はそのままに、ナサニエルは雌犬の秘孔を指で探っている。生々しい肉感が指をぎゅうと締め上げ、指を伝って掌にその根元まで液体が染みた。]
………どうした?
上も下もぐちゃぐちゃ………
そんなに気持ちいいんだ?ふぅん………
[指を締め上げる場所を、さらに刺激する。]
ううん…う…
[言葉を発する事は出来ないが、気持ちいいと言っても、そうじゃないと言っても理屈を突きつけられて弄ばれるのは明らかだ。
わざと顔を背けて頭の角度を下げて、保留の意志を見せる。]
あ!あうあ!いあ…
[拒否も悲鳴も許されず、一番見られたくない肉芽を、直で嬲られ、頭がぼやけそうになる。
どこかを楽にしようと試みる。胸の金属は外せないか――手を伸ばす。]
ダメだっての。
[蜜だらけの孔を刺激していた指を外して、雌犬がニプレスを取ろうとする動きを制する。]
[ナサニエルはタンクトップを脱ぎ、上半身の肌と、そこに刻まれたタトゥーを露にした。横に寝かせた雌犬の身体を四つん這いの体勢に変え、その下に潜り込んだ。
――雌犬の意思だけでは、何もさせないために。]
…俺はもう少しここに。
一寸自分も調べたいことがあるんで。
何か一人じゃ持ちきれないものとかあるのならいきますけど。
それと、先生。
[少し神妙な顔をして]
…先生は、お化けとかって信じますか…?
人間以外のものって…
あふう…
[ボールギャグからヒュウッと音が出る吸う音か吐く音なのか。四つん這いの姿勢になると鎖の長さが足りないのか、少しお尻を突き上げる形になってしまう。]
――そうか
[ラルフの写真をポケットにしまうと、残るというハーヴェイに頷いた。]
お化けか……
――信じたくはなかったが……
[「死体が生き返って――」 あの言葉が頭蓋で反響する。]
――いや
今はわからないな。
信じたいような、はたまた確信しているような……
……やはり信じたくないような…
…そんな心境さ。
[自分で巧く説明できないんだが、と笑った]
……ん?
どうした?可愛い雌犬サン?
ほら、こんなに尻が欲しがってる。
[雌犬の涎がダラダラとナサニエルの身体に垂れ落ちる。]
………なぁ?
俺のヤツ、ブチ込んで欲しい?
─町を囲む森の中─
[鬱蒼と生い茂る樹々は深い闇を宿し、雲間より出ずる月の明かりもここには届かない。
そこは夜の領域。人ならざるものの棲む世界。
虫達の合唱と夜鳥の啼き声に、湿った落ち葉を踏み締める微かな物音が混じる。
男は闇の奥を見通し、*ゆっくりと歩いて行く。*]
―地下―
[地下に降りていく。永い時に置き去りにされたようなその空間はひんやりとした冷気に満たされ、幽かに黴臭かった。
薄靄の中の底知れぬ沼に足を浸していくように、闇の中を降りてゆく。
階段の底まで降り行くと、突き当たりには青錆の浮いた扉が立ちふさがっていた。
錆びた金属の耳障りな擦過音を伴って古びた錠が開く。]
――うわっ
[扉を開いた私は、思わず小さな叫声を漏らしていた。
眼前には暗澹たる冥暗の中よりおぞましい怪物の姿が浮かび上がっていた。
それが一枚の絵画であることにはすぐに気がついたが、それでも深閑とした夜に地下の暗黒の中で対峙するには怖気を震うほどの禍々しい迫力がその絵には籠もっていた。]
はぅ………
[ネリーは少しでもナサニエルから離れようとしつつ、顔をベッドにうずめた。覚悟を決めているのか。
じらし上手のナサニエルだからまだ何かあるのか。期待の心を持ちつつ、ネリーは一言だけ鳴いた。]
わん…
………ん?
声が小さくて聞こえないんだけど。
欲しくないの?ふぅん……
[自分から離れた雌犬を観察して、ニヤニヤと笑っている。]
じゃ、おしまいにしようか。
[ゴヤの『我が子を喰らうサトゥルヌス』
おぞましい表情の巨神が一杯に目を見開き、両手で握りつぶさんばかりに抱えた人間を喰い千切っている。おそらくは、複製画なのだろう。
サトゥルヌスは、鎌で父ウラノスを去勢させ権力を奪う。
予言で、自分がしたのと同じように我が子に支配力を奪われると言われ、次々と我が子を喰らって殺した。
それは、おそらく複製画だったのだろう。だが、大事なことにはそれは一般的に知られている“修正”がほどこされたものではなかった。通常塗りつぶされている陰部は、我が子を喰らう恍惚に呪わしいまでに激しく屹立していたのだ。
私は僅かに感じた嘔吐感を怺えながら、壁際のスイッチに触れた。
地下の書庫の奥深くまでやや頼りない電灯の燭がともっていった。]
ああう…!
はっ…はっ…
[身体が軽くなった。人の力で自分を抑えつけるものがなくなったからだ。どことなく視姦されてると思う。]
あん…わん…
[まだ小さい呟きを見せる。]
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