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─翌日─
[その後は、強いショックを受けていたニーナを宥めて寝かしつけ、一晩中側についていたのだった。
何とか眠りに落ちたニーナを寝室に置いて部屋を出ると、家中を捜索して顧客名簿が無いかどうか探し始めた。
ようやく目当てのものを探し出し、ある人物の自宅と、他に何箇所かの住所を調べ、メモ用紙に書き留めた。
ついでにヘイヴンの地図も一緒に失敬して、目当ての場所に印をつけた後、小さく折りたたんで、ポケットにしまった。]
[最後にもう一度ニーナの部屋に戻り、別れの挨拶をした。──彼は店を出た。]
[彼は狩り獲るべき対象を捜し求めて*歩き出した。*]
─自宅─
[ネリーは簡単に自宅およびその周辺の掃除をした。2度目の水害も大きな被害は出なかったが、犬小屋が荒れたりしたからだ。]
早く旦那様帰ってくるといいのだけど…
─???─
[今更ながらにローズのことが思い出され、一度「アンゼリカ」に戻ったが、ローズの姿は無かった。気配があるのに姿が見えないのを訝しく思ったが、彼女を探している暇は無かった。
客室で手早く身支度を整え、衣服を着替えると、電話脇のメモ帳に一度戻ったことを書き残して再び出掛けた。]
[地図を頼りに目的の場所に向かったが、果たしてその家は留守だった。人の居る気配はなく、しんと静まり返っている。
しばらく考え込んでいたが、ふと思いついてもう一箇所回って見ることにした。]
[ギルバートは、ヘイヴンの標準的な家屋とは全く異なる、近代的な造りの邸宅の呼鈴を押した。]
── →ボブ・ダンソック邸──
[ネリーは呼鈴が鳴る音を聞いた。自宅そのものには現在おらず、ネリーは動物たちの世話に当たっていた。はっと顔をあげる。]
帰ってきたのかしら?
[ネリーは庭のほうから、側面から扉の方へ近づいていった。そこで目にした人は──]
何の御用でしょ──
[ネリーは驚いた。いつだったか、自分が暴漢に襲われた時、颯爽と現れ、暴漢をのしていった男だ。改めて見ると体格にも恵まれているのが見て取れる。]
あ、あの──
[地下の部屋で目を覚ますと傍らにはステラの姿はなく、その部屋に時計も窓もなく、ローズマリーは時間を把握することができなかった]
[のろのろと身体をおこし、散らばった衣類を身に着ける]
今、何時かしら。
[どうしよう、つっ立っているだけでは埒があかない、何か言わないと、とたちまちネリーは混乱しそうになる。]
あの…この前は大変ありがとうございました。
ギルバートさん…ですよね?
[ネリーはギルバートに問いかけた。慌てると意味もなく体面ばかりになる。]
[自分の部屋に戻り、ソフィーとその父親の姿がないことに驚くが、あたりが特に荒れた様子がないことで、だれかと自宅に戻ったのだろうかと、深く考えることを放棄した。]
シャワーを浴びたいわ。
[『ギルバート』はネリーの内心の動揺を読んだかのようにニヤリと嗤った。]
そう。ギルバート。ギルバート・ブレイクだ。
よく憶えていたな。
[ネリーはギルバートに会うのは2度目だ。だが前回とは違う笑みがそこに伺える。ネリーは必死に取り繕う。]
はい…この前は本当にありがとうございました。覚えているでしょうか…? 名前も聞かずに別れてしまった。
あっ、順番が違いますよね、すみません。私はネリー。ネリー・ウィティアと言います。
[シャワーを浴びながらステラとの一夜を思い出していた。
思いがけないステラからのアプローチ。
彼女の持っていた快楽への技量にローズマリーはステラに対する何かが間違えていたのだろう事に思い至る。
彼女の身体を何人の男女が過ぎていったのだろう…。
ローズマリーの胸に紅蓮の炎が広がった]
ああ…名前を聞くのはこれが初めてだな、確かに。
改めてよろしく、お嬢さん。
[口の端を歪める嗤いのまま、帽子を取って丁寧に礼をする。それは何処かからかうような様子が見えた。]
よく憶えているよ。忘れる筈が無い。あんなに助けを呼ばれたんじゃあな。
はい、よろしくお願いします。 …ギルバートさん。
だってあの時は本当にどうしようもなかったんですもの。ギルバートさんが来てくれなかったら私、どうなっていたことやら…
あの、今日はどういったご用件なのですか?わざわざこんな所へ…
[ギルバートはネリーを値踏みするような視線で見つめた。
表情は笑ってはいるが、目は笑っていない。]
[いや、笑ってはいるがそれは、鼠を前にした猫の瞳だ。
琥珀の瞳が、まさしく獲物を追い詰めた猫のように黄金の光を帯びて底光りした。]
ああ。ちょっと聞きたいことがあって……。
[と、ふと視線をずらして周囲を見回し、]
お前の主人は、今はいないのか。
[尋ねた。]
[水滴を拭き取り、着替えて、あらためて自分の空腹に気付く]
なにかあったかしら。
[店に下り、電話の側のギルバートからのメモに気付く。
ステラのことにかまけて彼の事をすっかり失念していた自分に苦笑する。
昨夜はあんなに彼に固執していたのに…。]
[手早くサンドイッチを作りコーヒーで流し込む]
他の人達はどうしているのかしら…
今の時間なら集まるのはあそこかしら?
[ローズマリーは外出の支度をするとブランダーの店に徒歩で出掛けた]
[ギルバートの行動に若干の疑問があったが、突然の来客の驚きが上回っていた。]
旦那様……ミスター・ダンソックですか?ちょっと今いないみたいで…あの、ミュージシャンの方ですか?
時々いらっしゃるんですよ。1度目の災害の時も、ツアーがてらと言いつつ来てくれる古い友人様などが…
[ただ口を動かしていると楽だからなのか、意味のない言葉を発するネリー。]
いや、ミュージシャンじゃないな。旅芸人に混じって旅したこともあるが。
ちょっと確認したかっただけだ。
[平静な視線でネリーを見下ろし答えた。
不意に身を屈めてネリーに顔を近づける。]
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