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――は?
[何のことだかさっぱりわからなかった。半ば混乱しつつ僕は言い返す]
――いや、けど。死んだ事のある人間なんていないじゃないか。死んだらそれまでなんだから。死んで意識があるならそれは――
いや、そんな、馬鹿な。
無茶苦茶だ。どこに根拠があるんだよ。
死んだからといって意識がなくなるとは限らないじゃないか。誰が確かめたんだ、そんなこと。
……そうだな。
ではそうしようか。
[ネリーに視線を移し、軽く目で促した。
樹木の根元に置いたバックパックを担ぎ上げて、ナサニエルに従う。]
[混乱しながら必死に論理を組み立てようとする僕の思考を、“彼”の追い打ちが粉々に打ち砕いた]
『――いや。お前は人間じゃない。より正確に言うなら、ほんの少しだけ、人間じゃあない。お前は、人狼の血族だ』
……は?
[ギルバートとネリーを車に案内し、エンジンを掛けた。
車内には血のにおいが充満している。ハーヴェイの血か――いや、それだけではないかもしれない。]
……で。
まあ明日の朝になったら安置所にでも行くか。ユーインと同じ墓に入れようが入れまいが、とにかく安置所に入れンのがこの町のしきたりってヤツだし。
[煙草をふかしながら、車を運転している。]
[理解できないことば。
人狼の血族。Kindred of Werewolves.
単語の意味はわかる。
血族。Kindred.
血の繋がった一族。
人狼。Werewolf.
人と狼のあいのこみたいな怪物。
でも辞書的なその知識を呼び出しても、僕の混乱はまるで収まってはくれなかった。それどころか――]
安置所……
[そう言えばそういう風習があるとセドリックに聞いたような、と声に出さず呟いた。
ハーヴェイの首は、バックパックから取り出した防水布で包んで、腿の間に置いている。]
『付け加えるならば、ヘイヴンの住民全体が――』
[聞きたくなかった。耳を塞ごうと両手を押し当てる。けれどその行動はただイメージしただけに留まり、“彼”は続けた]
『――人狼の血族だ』
………ああ。
理由はよく分かンねぇけど、この町のしきたりなんだってさ。
遺体がゾンビになって現れたらどうすんだよ、って感じだよなァ。……ま、ゾンビになっても逢いたいヤツがいるなら話は別だがな。あいにく俺にはそんなヤツいねぇし。
――自宅 朝――
[夜が明ける。何事も無かったかのように、今日も太陽は寝室にも光の恩恵を授ける。
でももう、この家にはその光を喜んで受けるものは誰も居ない。]
[ふと、誰も訪ねてこないはずの家に人の足音が響く。
聞いたことの無い音。わたしは首をかしげながらその音に耳を傾ける。]
[やがて空気は動き、わたしの身体はふわりと宙に浮く。どうやらこの町の仕来りに則って、安置所に連れて行かれるらしい。其れがわたしにとって幸せな事なのかどうかは解らない。
でも、今は素直にその行為を受けなければならない。だってわたしはもう――]
ゾンビ……ああ。あの映画のか。
──死人が生き返るなんてことはないのにな……
もっとも、昔は死んだと思われてたヤツが埋められる直前に息を吹き返した、なんて話、ざらにあったしな。
[やがて車のエンジン音と共に、わたしの身体は心地良い振動に揺られながら安置所に連れて行かれる。
ふと隣を見ると、同じような塊が目に付く。わたしはそれが瞬時にローズだろうということが理解できた。
これでも一応一時でも愛しいと思った相手ですもの。などと変な自信を持ってみた。本当は彼女の遺体に隠した香りに気付いたからなのだけれども。]
[そうこうしている内に、わたしの身体も安置所へ収められた。そこには他にもたくさんの塊があった。]
嗚呼、此処ではみんな一緒なのね…。
[わたしの心には、その時なぜか懐かしい気持ちが湧き上がり、胸が熱くなるような気持ちにさえさせられたように思えた。
わたし自身、この場所に来るのはこれが初めてであるにも拘らず――]
おいおい、マジかよ……
[煙草の先が、ぴくりと動いた。]
………。
まァ、お前は……そういうモン見てても不思議な感じはしねぇけど。何せ、次から次へと「人狼の血」を目覚めさせてンだからさ。
……俺もあんたのおかげて、クスリ無くても、他人が「殺された」っての嗅ぎ付けてイッちまうような、立派な変態サンになっちまったし。
[そう言って、ゲラゲラと笑った。]
さ、俺ン家着いたぞ。
そこの美青年も連れてきな。
[熱い掌が>>7:216内腿に触れ、更に熱い「それ」はずぷりと濡れた音を立てて、簡単に私の内側へと入って来る。
最初の時のような種類の引き攣れるような痛みや恐怖は無くて。
けれども、まだ未開の場所へ大きな質量が押し込まれる圧迫感と、お尻をあげたその恰好の所為で、硬く尖った先端が私の最奥のやわらかい場所押し上げるその衝撃に、私は鳥肌を立てて逃げてしまいたくなる。]
…あ、あ、あ。
パパ、駄目…──。
[私はうつぶせのまま胸を冷たい台座に押し付けるようにして、ただ荒い息を吐く。]
[静止の声をあげていたけれど、私にはパパを止める事は出来なくて。
止める事すら望んでは居なくて──。]
…ずっと。
こうされたかったのか、も、しれない──…わ。
[だから私はパパを試そうとしたのかもしれない。
…パパが欲しくて。]
[何時ものモデルの時のように私のフォルムと魂を記憶しようと言う動きでは無く、熱い男の大きな手がただ欲望と熱情のままに、私を奪う。
口唇が──、舌が──、私の背に触れる筋肉質なその身体そのものが。]
……ああ、私もパパのものよ!
[私は恍惚として囁く。]
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