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―オペレーションルーム→自室―
[束ねていた髪を解いて、再び結いなおす。見慣れ過ぎたオペレーションルームから自室への道順。上の空で歩く]
………。
[プシュ][ロックを解除して室内へ。閉まった扉に背を預けて溜息をついた]
八方塞ね。
…このプロジェクトは大失敗、責任者の首が飛ぶ。
[す、と足を進め、奥の壁にピンで留めてある封筒を手にする。表には「遺言書」と書かれてある。その中身をどのくらい前に書いたのかも、もうおぼろげだ。中を透かすようにかざし、封筒の角を指先でなぞる]
村の設定が変更されました。
[体温を確かめる如く手の甲でナサニエルの頬を撫ぜおり]
濡れたままだと、風邪をひく。
[零される笑みを見詰め緩やかに瞬く頃には、逆にナサニエルの手が伸びて褐色の髪が混ぜられ、視界にはちらちらと過ぎる前髪の零す緋色が映り、矢張り撫でられた獣の如く目を細める]
バイオームは――闇に覆われた。
[何も見えない、と小さく添えられた言の葉は彼に向けてではなく、特有の曖昧な言葉の序にか口唇から自然と零れた呟きだったらしく、ナサニエルに聞き取れたかも定かではない]
カプセルの方は、見た?
責任者は首が飛ぶだけ。私たちは…生存が絶望的。
フリーズドライの缶詰…。
最悪。
[口癖のように吐き出して、封筒を元の場所に戻す。できるだけ、目立つようピンで留めた。万が一―この場合そんなに確率が低くは無いが―命を落としたとき発見しやすいように]
誰がアレを読むのかしら。………誰でもいいか。
[結っていた髪を解くと作業着から普段着に着替え*はじめた*]
[バイオームの状態は深刻なものだった。
その場にいた航行員から説明を受け、一瞬まなじりがきつく上がる。
背後からかかったギルバートの声にひとつうなずくと、振り向いて笑顔を見せた]
そうね。
汚染されているものは土壌も全て処分しちゃいましょう。
作業の指揮を頼んでよいかしら?
[そのまま、彼が作業を始めるのを確認視界の端で確認し、また航行員と話し込み始めた]
[頬に当てられた手と添えられた言葉に瞬き]
風邪ひいてる場合じゃないってのにな。
[少しばつが悪かったのか自分を皮肉り、]
ま、あとはじきに乾くから、次から気をつける。
……バイオームは封鎖済みってとこか。
あるだけ危険な状態だ。一つ片づいた。
[曖昧な表現から状態を予測し、最後の言葉は聞こえていたのか否か、後半の言葉は独り言のニュアンスに近いもので、もう一度だけバイオームの方向を見ると視線は彼に戻し]
カプセルはまだ、自分の目で見てない。
報告を聞いただけだよ。
[一通り状況の確認を終えれば、封鎖作業は他に任せ、通信端末からオペレーターに指示を送った]
舟の現在座標と、近くの補給衛星までの距離を確認して頂戴。
[入れ違いに上がる残り食料の報告を、表面上は笑顔のまま確認する]
そう。ありがとう。
[目は笑っていなかった]
[それでも笑顔は崩さぬまま、バイオームを後にする。
周りに人がいなくなったのを確認し、笑顔を崩した。
苛立たしげに端末のパネルを叩き、船長を呼び出す。
何度かそれを繰り返したが、返答はなかった。
舌打ちし、端末を閉じると舟の中核部へ*向かう*]
医務室は汚染されてない。
[己を皮肉るナサニエルに対するフォローと云うより、風邪をひいても風邪薬は貰えると云う事実を淡々と述べ、以後注意するらしきにはまた頷く代わりに瞬き一つを返す]
イザベラの許可もおりたし土壌まで全部処分した。
其れでも未だ闇は残ってるし危険だろうけど。
[イザベラの指示通り現場で指揮をとり、汚染物の船外破棄作業は完了したけれど、バイオームの残骸は其処に未だあると言外に添えて、戻される視線を受け止め生返事と共に暫し思案の間を置き]
――…
[ノア、とナサニエルを見詰めた侭に、口唇だけが微かに震え]
カプセルを見に行く。
そうか。
[医務室無事の報告を聞いて穏やかな目で彼を見た後、窓から宙の景色を眺めつつ自分の湿った髪を指で少しいじり乾き具合など見て]
土壌から全部か。ご苦労様。
ただ封鎖するよりかは遙かに安全だ。
[ねぎらいの言葉をかけ、けれど届いた声にまた視線を戻すとそのままに]
……ノア?
[声に出したけれど。
カプセルを見に行くと言われて]
俺も行くわ。
[シャワーを終え髪が完全に乾くのを待ち部屋を出る]
まずはカプセルの確認…生存率に関わる。
[カプセルルームに向かう途中ギルバートとナサニエルに出会えば]
ギルバート…ナサニエル。
…2人ともカプセルに?
[そう問いかける]
[ナサニエルの視線が逸れるのを追い掛け、髪を弄る彼の姿から闇を映し込む透明な板の向こうに広がる光景へと、束の間だけ紫苑の双眸はフォーカスを変え瞬く光を眺め、労いの言葉にナサニエル自身へと緩やかに顔を向け直す]
ご苦労なのは、俺よりイザベラ。
[自身の口唇だけが紡いだ言葉をなぞる声に瞬く]
塗装が剥げたら、箱舟に成る。
[ナサニエルの脇を通りながら静かに囁き、共に行くらしきに一旦は立ち止まり彼を促して、彼が足を動かし始めるのを見てまた足音も無く傍らを歩き始め、少し歩けば気配と声に立ち止まり、ラッセルへと緩やかに視線を向け問い掛けに頷く代わりに一つ瞬く]
自分の目で、見てみたい。
ラッセルは、見た?
[カプセルルームに向かう途中、ラッセルの姿を認めれば片手をあげて挨拶。
問われたことにはそのまま]
そ。
カプセルの状態確認しないことにはな。
ラスも一緒に行くか?
[首傾げ、問う]
[ギルバートの問いには首を振り]
まだ。
[ついでナサニエルに問われ頷き]
ああ。同じ目的を持つ者同士が揃って居る以上分かれる必要は無い。
んじゃ行くか。
[ラッセルも合流して再び歩み出す。
――Noahの方舟……頭で反芻し、僅か目を伏せ思案するも、何事もなかったように前を見て歩む。]
バイオームの封鎖は出来たみたいだ。
[端的にラッセルに語りかけ。]
そう。…万一侵入者が無い様見張りたい所。
…その様な精神的余裕があれば。
[食料が尽きれば何をするか分からない―そして見張り役と言う物が最も侵入に近い存在である以上難しいだろうと自分でも思うが―]
侵入者、ね。
[乾ききらない髪を触りつつ]
レーションがあるうちはそれも出来そうだけど
なくなった時がどうなるやら。
[髪いじりをやめ]
見張る体力と精神力の持続が困難か。
[言外に食糧の底を予期した物言いで。]
―廊下→カプセル室―
[普段は静かなカプセル室に今は動き回る人の気配があり、バイオームの様な汚染された毒々しさは無くとも、作業員達には修復の目処が全く立たない焦燥が滲み、会話は多く無くとも室内は妙に騒がしいだろうか。
周囲を見回し人の集まっている制御装置の辺りで視線を止め、傍らで交わされている二人の会話を聴いていたのか、作業員達の様子を見詰めた侭に口を開く]
侵入しても、闇しか無い。
闇に取り込まれるだけだ。
[作業員達へと歩み寄り状況を訊ねるも、焦燥に依る苛立ちに紛れた投げ遣りな回答を受け、思案気に作業員を見詰め静かに瞬いた]
―ああ。
[ナサニエルに簡潔な返答を返しカプセルルームへと]
―カプセルルーム―
[辺りを見回し]
…見込み薄。
[作業員達の耳に入らぬ様に小さく呟いた]
[カプセルルームの様子は常とは違って慌ただしく
苛々した様子の作業員を一瞥し、ため息。]
誰かが闇に取り込まれないように見張る。
とはいえ、ミイラ取りがミイラになったら
それも意味がないけど。
[室内を見つめながらやはり最後は独り言のようで]
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