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――マーシュさん
[絡み合った二人の身体をクッションを使ってわずかばかり持ち上げるようにしながら、彼に話す。]
これは言っておきますけど、うちの製品の不良ではないですよ。事故を起こせば顧客の命に関わる大問題ですからね。義体の暴走や不正規な運動が生じないよう、徹底的な試験が行われてるンです。
[性行為をしないという建前で売り出されるガイノイドも、数万回もの模擬性交による信頼性テストに合格しなければ出荷されない。それらの事実は“純潔”信仰を有する客層の心情に配慮して社外秘にされてはいたが。
わかってるわかってる、問題にはしない――と彼は言う。それよりも早くなんとかしてくれと。
俺は、別室の書斎からケーブルとハブを持って来た。]
[series Matildaの首筋、延髄にほど近い位置にあるコネクタを指でさぐりあてると、ケーブルを接続する。
原因を特定するため、有線でトラブル発生前後の記憶をダウンロードした。]
(うわ、こいつは――)
[思わず顔を蹙める。
マーシュが赤ん坊で、あやしていたお姉さんにイタズラをされているうちに事に及ぶという筋書きの遊技だったようだ。わけがわからない。俺はひどく頭が痛んだ。
マーシュの元にやってきたこの娘はまだ半年も経っていないというのに、実に様々なパターンの性的幻想につきあわされてきたらしい。膨大な記憶がそこには残されている。]
<ダウンロードを継続しますか?>
[俺は一瞬躊躇した。普段なら、客の秘め事を覗き見ようとはしない。職業的な倫理の上からも、個人的な信条からもだ。
だが……。
脳裏にマーシュの娘の姿が浮かぶ。エイミー・マーシュ。
俺は<Yes>を選択していた。
膨大な容量のデータが文字通り光の速さで流れ込んでくる。閲覧は先送りにし、それらをclosedのストレージへと避難させた。]
[――さて。
問題は、現実的な対処についてだ。
トラブルは俺自身には少々解決が困難な問題を含んでいる。
俺はコンダクターに助力を仰いでみることにした。
series Matildaのケーブルをマーシュの屋敷のサーバに接続し、series Matildaを経由してトビーにコールを送る。]
《コンダクター、今大丈夫かい?
――すまないが、少しばかり力を貸してもらえないだろうか
オンラインでの対処だけで済む。そう時間はかからないと思うんだが――》
[そうして、*返答を待った*。]
── 現世<Mundane> / 西南部→シャロンの車で移動中 ──
[ドリスから遠ざかるため、まずは教団本部との距離よりも、車を走らせやすい道路を優先的に選択し兎に角飛ばした。
静止したトラフィックを、障害物レースの様に避けて走る。
シャロンの車は持ち主の性格に似て、馬鹿馬鹿しくて笑いがこみ上げてくるほどにスピードが出る。車に同期して、直接運転モードにすると、運転に使用しない手足が(何時ものように)疼いた。
今の──セシリアの中で渦巻いているのは、]
【安否のみしか確認の出来なかったMasterの容態。】
【──元々、最近は病状が芳しくなかった。】
【粛正に似た──電脳ふくむメガロポリスの機能停止】
【Masterがこの事態──先刻のAIの召還をふくめて──に関与しているのか?】
【信者たちの状態および、本部の損傷と修復については、メガロポリス停止に関与した者の攻撃がない限り、ある程度予測がつくので──今は置く。】
【嗚呼、手帳を持って来てしまった所為で、以前にシャロンがセクサロイドについて話していた事を思い出す──嫌だわ。】
[シャロンの声がリアルに再生される。]
「大昔の動物愛護団体とわたしって似てるなって思う事があるのよ。
過去の法律では、誰かのペットを殺すと器物破損罪になったの。
同時期の世論に、イルカやクジラは哺乳類だから食べるのは野蛮だと言う団体もあったらしいわ。
ねえ、似てるでしょ?
あくまで機能のために存在するロボットAIと動物。
動物愛護って言っても、都市に居る全部の野良犬や猫が保護出来るわけもなし。動物達は処理場で薬殺ののちに焼却されるの。
人格の付与されたセクサロイドと、知的な動物であるクジラやイルカ。知的なものとして扱うべきだと主張すると、やっぱり似てるじゃない?」
【事務所の地下には、ビルの高さよりも深い倉庫があって、行き場の無い人形たちがメンテナンスされながら、待機してる──。
シャロンは彼等をプロデュースする。
過激にして陽気なショーにして、世間に問題提起を行う。
…・・それは知ってるわ。】
[その話の続きは、セシリアがシャロンに対してある種の親密さを感じさせる内容ではあったのだが。]
【今は、考えたくない──。】
嗚呼、Master・・…
[身体にぴたりと寄り添うように設計された流線型のシートに背を押し付け、セシリアは息をつく。薄く開いたくちびるから零れた言葉は、]
ただ、私は
MasterのAIでさえ有れば──良いのです。
[何が一体、セシリアには堪え難いのか。
混乱を解決する手がかりを求め、セシリアはあの日の訪問者から渡された手紙を開いた。当然のごとく、走行上の障害物を除いて、周囲の静寂と安全を*確認してから後に*。]
── 現世<Mundane> / 西南部→シャロンの車で移動中 ──
―― South/Webcafe"BruteForce" (南部/電脳喫茶) ――
[受付嬢こそ昏倒していたものの、座席の確保には何ら障害は無かった。むしろ下層住民だと明かさずに済んだ分、手間が省けたかもしれない――そう考えながら男は接続を開始する]
状態良好――全没入(フル・ダイヴ)、開始(オン)。
[首筋に設置されたジャック=イン端子を通じ、一マイクロ秒毎に何千億の電子が行き来する。交換される情報に交歓する意識]
―― Public/White Mist (解放領域/白の靄) ――
[接続処理を完了して降り立った空間は一面の白。
認識可能な対象はただ己自身だけだった。手探りのごとく周囲に探査コマンドを送出するも、大半が応答が無い]
何だ、こりゃ。これもあの影響か……?
[眉を寄せたものの、靄の彼方で黄色い光が点った]
『――マスター! 探しましたよ? っていうか……さっきよりも濃くなってますね、これ。まるで蜘蛛の大群が巣を張り巡らせてるみたい』
領域そのものが侵蝕されている、という事か……。
『――半時間前にはまだかすみ(haze)だったんですよ。この分だと、次に来たときは霧(fog)ですね。それも極め付きの濃霧』
そうか。なら、急がないとな。
[アーヴァインの個人空間に対象座標を設定、門(ポータル)を呼び出してノックする。Mainとして使用している"Gateway 2.0"本来のものに手を加えた覗き孔(ドアスコープ)機能で転移先を確めた]
―→Closed/"the Inquistion" (専用領域/"審問所")
―― Closed/"the Inquistion" ――
[遷移を終えて回復した意識が把握した場は、さながら大地震に見舞われた書庫のようだった。変数空間だけでなく定義領域にまでぶちまけられた屑(トラッシュ)データが至る所で誤作動を誘発し、保管していたファイル群は今にも溢れ出しそうになっていた]
ヒュウ。野郎、ここまで適当なデータ管理してやがるとは思いもしなかったな。まるで聳え立つクソの山だ。
『――マスター。何か、変ですよ…管理者(root)権限の破片が、ほら。あそこ』
[幾度か目をしばたたかせて見つめると、細長い直方体の鍵が半ば砕けているのが見て取れた]
おいおい。まさか……だよな?
[思わず呟いて、慎重な足取りで近寄っていく。二本の指で摘み上げた鍵には、紛れもない【アーヴァイン】の個人認証サインが刻まれていた]
……はぁ。じゃあ奴の言ってた事もあながち妄想じゃなかった、てこと、か。オーケイ。奴は狙われた。そしてここに死んでいる。
だがよ、"Celia"。それで俺はどうすればいいんだ?
例のファイル自体が残ってなきゃ、手がかりも何も無いんだぞ?
[八つ当たりに近い軽口を叩きながら、データの残骸を脇へ寄せる。右胸の辺りから斜めに引き千切られたような男性のアイコンが現れた]
……なあ、アーヴァイン?
『――ええっと…でも、たしか…ここらへん、に』
[中空を掴むような手つきで幾度も探す少女の様子を、男は気のりしなさげに眺める。その間にも指先から、アーヴァインの受けたと思しき攻撃の様相(タイプ)を知ろうと試みた]
【どこの攻撃PGMだ…基幹構造としては…自壊命令? 或いは期限誤認? web上の実体を阻害したり破壊する形式ではないように見える、が……?】
『――あ! あった、ありましたよ!』
[悩み込んだ思考を遮るように、"Celia"の弾んだ声が響く。見れば彼女は、先ほどと同じ形状の、青く半透明な六角柱の水晶を手にしていた]
[512ビットのハッシュ関数を照合し、同一性を確認する。無記名だった所有権に個人認証サインを書き込み、専用化を行った]
オーケー、お手柄だな"Celia"。
それが見つかれば用は無い。引き上げるとしよう。
『――え。でも、アーヴァインさんは……このまま?』
仕方ないさ、こんな事情じゃな。それにもうじき、此処は壊れるだろ。定義領域の虫食いがこれだけ進んでちゃ立て直しようが無い。自分で集めたファイルに埋もれるなら奴も本望だろうさ。
[乾いた口調で言い切って、退出のための門を開く。円形に描き出されたゲートに乗って一瞥を投げ、彼と少女はその場から姿を*消した*]
―→ Mundane/South Ward/Webcafe"Brute Force" ――
── 現世<Mundane> / 西南部→シャロンの車で移動中 ──
[ハイスピードで運転を続けながら、手紙を開く。
セシリアが、調査員を名乗る訪問者から受け取った“手紙”は、いわゆるアナログ形式で送られる公的な重要書類の様な、素っ気ない外見のものだった。
書類の外見に反して内容は、教団の幹部ですら知り得ないセシリアの特殊な成り立ちに関連した緻密なもので、(セシリアも知っているが一般には公開されていない)Masterの過去、“スクール”について、またセシリアの知らぬ事──例えば“S2”や“Alchemist”と言う単語をふくめ、随分と挑発的な印象を受けるものだった。
調査員は、当然のように尋問のため監房へ放り込んだが、それも送付者には想定内の出来事であったのか、翌朝には調査員は氷が溶けるように──あるいは魔法のように──消えていた。
セシリアは手紙を誰にも、Masterにも見せる事無く、ボディスーツの内ポケットに忍ばせ持ち歩いていた。]
これは──、な
[白い紙片は発光し、メガロポリスを3D化したホログラムの地図に変化した。
地図上には、何かまるで人の存在を表すかのような点滅するドット。高速で西南部から移動している球形が、車に乗っている自分だと言う事に気付くのに、何秒もかからない。数えてみると12個の球体が動いたり、静止したりしている。
指先でドットに触れると、IDのようなものが薄く浮かび上がって来た。いくつか触れてみたIDはどれもおぼえないものばかりだったが、そのうちの──南部に向かって移動している1つのドットが、先刻遭遇した“黒(ドリス)”に思えた。]
【では、Masterでは無い。】
[セシリアは顔の上部をすっぽりと覆う漆黒のシールドの奥で、オーキッドカラーの瞳を大きく見開き、地図を凝視しながらそう呟いた。地図とMasterの事に気を取られ、道路上で横転し停止したまま車に危うくぶつかりそうになる。]
──ッ!
[プラグ接続の状態で、無茶なドリフトをすると全身に衝撃が走った。]
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