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[ガコン][ガコ[ギギィ]]
[黒から召喚(生ま)れたAIのダウンロード/乗っ取りが完了]
[現実<Mundane>での手足を得、漆赤の裂け目は*深く深く*]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
[キッチンの奥から姿を現したメイに、双子は口もとを除いて被膜された無機質なおもてを向けた。
顔のない貌。
だが、その唇には不自然なくらい明確な笑みがくっきりと刻まれている。好意的であることを示す記号はそこに提示されているとあからさまなまでに主張するかのように。]
「ごめんなさい。出涸らしのお茶をお出しするような方ではありませんでしたね、メイさんは。」
「――煎れなおすべきでした。」
[人間とちがって気配りの行き届かない愚鈍なAIでごめんなさい、と二人は小首を傾げる。
眼窩のあるところに光点が浮かび、同時にメイの運んできた野菜ジュースの入ったコップに仄かな色の光が一瞬だけ留まった。]
「……野菜ジュースですか。健康志向なんですね。」
「――いつも呑んでるんですか? それとも、デビューに向けての準備をもうはじめて下さってるのかなぁ。」
[双子は顔を見あわせると、うふふあははと小さく笑った。]
お、おまいら――っ
[俺はポカスカとホログラムハリセンで双子の頭をはたく。]
そういうのやめるのよ。
まったくもう、ろくなことを覚えねんだから。
[メイに向き直る。]
ごみんね。
こいつら最近、楽屋で耳にした女の子たちの話し方を悪趣味にアレンジするのがマイブームっぽいのよ。
[パイプを持った少年に、肩をすくめて見せる。]
そちらこそ、Mr.T.N.ことT.N.Revolutionじゃないのよ。
まったくねぇ――。
どしたの、突然。青天の霹靂ってか蒼い霹靂なんつて。
[鷲の細工が施されたパイプを仕舞う仕草に、そうそう、とホログラムのココアシガレットを渡す。]
パイプよかこっちの方が似合うってェばさ。
[頭をはたかれた双子は悪ふざけをやめ、ホログラム装置を作動させた。]
女の子って、この子? この子どこの子家なき子?
同情するなら金をくれってね。
[椅子に座ったトビーの目の前のテーブルの上には、先ほど出会ったコットと名乗る少女の姿が浮かび上がっている。]
[話しながら、『家なき子』ってなんだっけ?とあらためて検索してみる。犬をつれた少女の古い動画がデータベースから浮かび上がってきた。
Kosha Cyberneticsの義体に標準的に装備されている、多言語に対応した思考の言語変換モジュールは、複数のアウトプットメソッドの使用をサポートしている。これらのアウトプットメソッドは、状況に応じて様々な辞書や情報ソースからデータ取得する機能を実装していた。
平たく言えば、TPOにあわせて話し方を勝手に変えてくれるということだ。
思い浮かんだことを言語に置き換える過程で、同時に言語出力プログラムは保持する複数の辞書とネットワークからの検索結果をそこに反映させる。そして、それらの機能は当然のことながら、一定の使用目的に使用するうちその目的に最適化されるようになっている。
スペースシップレースの話ばかりしているヤツは、それに関する検索機能が強化されていくというわけだ。]
[俺はいつしか、ダジャレなしには外で会った連中とろくに話ができないようになっていた。そんな言語変換の癖はどこで身につけたものだったか、今では覚えてはいない。大方、芸能関係の重役連中と話をするうちに身についてしまったものなのだろう。
古い時代、ショービジネスが今よりも色鮮やかだった時の頃の情報を集めるうち、自動検索の優先順位はすっかりアナクロな最適化がなされてしまっていた。
時には、自分の話したことを後で検索しなおして調べなおす必要性があるくらいだ。
時折、俺は考えずにはいられない。
俺は、自分の思考を話しているのか、機械に話させられているのか――。
実際、俺の優秀な言語モジュールは、会話を自動生成してくれさえしたのだ。]
――南部境・カフェ――
[少年の言葉には僅かに眉を寄せる]
女の子の体なんだ。
なんていうのかな、纏ってる雰囲気から、男の子かなって思ったのよ。
それくらいの年頃って男も女も似たようなものだもの。なら、口調とか、容姿以外のものでつい判別すると思わない?
一口で言うならただの勘だけどね。
[双子の会話には手を振って苦笑する]
あたしには出がらしでじゅーぶん。
いいお茶はたまに飲むと美味しいんだけどね。
野菜ジュースは効率のいい摂取方法ってとこかな。あんまり美味しいとは思わないけど。
─ 理想郷<Utopia> / Closed Morgan's Space ─
[目を見開いて行方を見守る]
BRAHMA──お爺様のPGM?
誕生・個性──Re:PROGRAM──RePLACEみたい。
なんにせよ、──どっちにしろ怖いかも。
[AIのレベッカを揶揄する中性的なかれの言葉のシニカルさに俺はわずかばかり苦笑した。]
「なっていないAI」ねェ――
[AIの開発に携わる者としては、興味深い言葉だ。
ふと、世間話のように口にする。]
ねえね。レベッカちゃん。
レベッカちゃんは夢を見ンの?
いや、夢っつってもさ。スッチーになりたいとかお医者さんになりたいとかそいうんじゃなくてね。寝る時に見る夢の方ね。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』っつって。
―電脳世界/Closed Morgan's Space―
謎は謎のままにしておくには、大き過ぎる?
[抜いた「槍」を再度構えて、言う。]
世には触れない方がいいものが多くある。
何の為?気分で隠しているわけではない。
それは、大抵の場合「毒」にも……
「薬」にもなるから。そういうわけだ。
[キッと眼光鋭く。]
「毒」になるなら。君すら排除せねばならぬ。
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
メイちゃんもそう思った?
俺もね、わかんなかったのよ。
T.N.Revolutionのトンビちゃんはどっちかわかりにくいのね。
[メイの野菜ジュースはあまり美味しいとは思わない、という言葉に双子が「まずーい。もういっぱーい!」とまたどこからか拾ってきた言葉を口にしていた。]
ああ。言葉遣いとかは気にしないから大じょーぶ。
[恐縮するヴィンセントへと笑い、手に持っていたサンドイッチと野菜ジュースをお腹の中へと片付けると、食後に冷えてしまったお茶を飲む]
[構えられた槍、そして視線に足元が竦む]
[けれど彼の言葉の一つに、下がりかけた視線を上げる]
気分で隠して──それは、お爺様が隠してらっしゃるってことかしら。
気になる。とても気になるわ。
もう少し、お話を聞いてみたいのだけれど、──教えてくださいとお願いしたら、教えてくださるのかしら?
[真正面から老人を見る][瞳の光は好奇心に満ち]
― 電脳世界<Utopia>/Closed・Morgan's Space ―
[ネットに繋ぎながらもなんの差し障りなく現実で会話できるのは、言語変換モジュールのサポートによるところが大きかった。
もっとも、多量の情報を処理するフルダイブでは困難なことだったが。
siam shade modeで俺は相変わらずコットの影の中に身を潜めながら、そこで行われている出来事を覗き見していた。
siam shadeは密接した影という意味通り、電脳での移動を対象にトレースさせることで簡便に行い、かつ、場への介入を最低限に限定することでステルス性の向上をはかる接続バリエーションのことだ。
しかし、下手をするとこのアングルからでは幼女のおぱんつしか視界に入らない。
光源と設定されている領域を計算しながら、不自然でない程度にスライドしてゆく。
その俺の目に飛び込んできたのは、シスターが老人の巨大な「槍」に刺し貫かれる光景だった。]
う、うおっ!
シスターがヤられちまったァ――
知れば、必ず開けたくなるだろう?
それならば、君に教えるわけにはいかないな。
[Kotの方を向き直り、男根の「槍」を向ける。]
逆に尋ねよう。なぜ君は、彼の下にいる?
君だろう……私の旧い友人の弟子というのは。
君は、私や旧友よりも強くなる素質を秘めている。
[構えは低く。]
それなのに、なぜ君は2番手に甘んじている?
―現世/南部(中央部近く)カフェ―
無能、――でしたら少々困ってしまいますね。
[くすくすと笑う。]
わたくしは"主"のためにあるのですもの。
どなたの完璧でもなく、"主"にとっての完璧になるために。
[だが"主"に関すること/住居に関すること/金銭のことには答えない。]
[礼を言う姿に、驚きを示す。瞬いて。]
――いいえ。わたくしのほうこそ。
お嬢様とお話できて、とても為になりました。
感謝しておりますわ。
[そしてヴィンセントの問いに、少し考えるように首を捻る。]
夢ですか。
見るようにとは薦められましたが――
生憎と、一度も見ることは出来ていません。
情報を流し込めば見られるようになるのではと言われ、試しもしたのですけれど。
不適合なのではないかと思います。
……ところで、スッチーとは何でしょうか?
[データベースにはない単語*だった*]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
幼女もやべえよ。逃げてニゲテー
[つい、現実世界の方の身体から言葉が漏れていた。]
おっとっと。
トンビちゃん。あの子、ちみの知り合いならヤバイことになっちゃうかもかも。ちんちんかもかも。
[そうして、メイの方に顔を向けた。]
ねえね。メイたんはあのじいさまに勝てたの?
どど、どうやって?
[メイが平らげたサンドイッチののっていたプレートを、双子が片付ける。
傍らに立った双子と、メイの身長はほぼ同じくらいだった。
series Mannequinの身体の寸法は、十代女性の平均身長を元に設計されている。電子的な計測をするまでもなく、一目でわかる「定規」であることも彼女たちの役割の一つだった。]
残念ね。
やっぱり自分で探すしかないみたい。
[然して残念でもなさそうな口調]
お爺様は師匠のご友人?
だったら、失礼が過ぎたみたい。ごめんなさい。
でも、お爺様も妙なことを仰るのね?
わたしはまだまだ未熟だわ。いつも師匠に怒られてしまうのよ。
[朗らかな表情]
けれど、いつかはおばあちゃまみたいに優秀な研究者になるの。
ママのお話であこがれた、おばあちゃまみたいに。
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