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──お前の全てを消し去ってやろう。
過去も、思い出も、苦痛も、未来も……その身体ごと全部。
[三日月のごと、弧を描く唇に嗤いを乗せて、いっそ優しささえ感じる声音で、強く囁いた。]
[リビングの机の上に、書き置きと鍵が残してあった。]
「ネリーへ
安全な場所に逃げたいなり、危険な場所に行きたいなり、お前が何処かへ行きたいのなら、この合鍵で家のドアを閉めるように。
――帰る場所が見つかったなら、鍵は直ちに返せ。」
――――――
「ハーヴェイ…… もし私が無事に帰ってきて
その時、何もかもが解決していたのなら
――君に云えなかったことを云うよ。」
今はもう、深い眠りに落ちているであろう彼の寝室の扉の前で、私はそっと呟いていた。
眠りに落ちているであろう彼に、その言葉はきっと届きはしないだろう――そう思いながら。
安らかな眠りと闇の静寂が彼を安息から妨げない事を願って――私はアトリエを後にした。
――
―車中―
ハーヴェイ……
君は私を軽蔑するだろうな。
私の身も心も灼き尽くしてもやまぬほどの熱情の正体を知ったなら。
[生命の危機を感じるその時、人の生存本能は著しく昂ぶるものなのだろう。
黄金の光と闇から押し寄せる波濤。
私の中の獣欲は叫びを上げ、ひたすらそのかつえを充たそうと私自身を突き動かしていた。]
[全て消し去る─その言葉が彼から紡がれ、耳に届いた時
一瞬だけ笑顔を浮かべた。不安と儚さにゆれた、壊れそうな笑顔。
僅かに胸の鼓動が高鳴ったのは望みがかなうからだろうか。
それとも……]
[私は気がつくと飛び起きていた。
身体中が汗みずくになっている。玉の汗を全身に浮かべている。]
な、なに…? この気持ち…
[カチカチと歯が鳴っている。]
確証もない。信じたくもない。けれど…
[下着だけ身につけ、ナサニエルの家を這うように歩いた。
書き置きを発見する。]
[目の前の肉体から漂う馥郁たる香り。]
[緩やかで大きなうねりが、腹腔の奥深くから湧き上がる。
甘い痺れが稲妻のように尾骶骨から脳髄へと駆け上がる。
根源的で不可分なその本能に、ゆっくりと呑みこまれていく。]
──バンクロフト邸・客室(ステラ発見前)──
[ニーナの悲報を聞くや、ソフィーは倒れそうになった。
報せをもたらしたヒューバートの口から、ニーナの遺体が喰い荒らされたような状態だったと聞いた為だ。
度重なる不幸な事故、恐ろしい事件。
失踪したまま戻らない父。
これらをニーナの死と関連付けて考える事は出来なかった。]
そんな……そんな……。
どうして一人で外に……ニーナさん……。
[ヒューバートの手を借りてソファに腰を下ろし、瞑目する。
少し出掛けるので一緒に来るかと聞かれても断った。
一人にする事を心配してくれたようだが、とても行く気にはなれなかったし、家人が居るから平気だと言って断った。
今は一人になりたかった。]
[私はナサニエルの書き置きを読んだ。
思わず顔が引き攣った。リックにアルバムを見せられたと同じぐらいの動揺が拡がる。]
あの人…あの人は「血族」を知っている!?
[主を失った部屋の中、音の濁流は構わず流れる。]
Blood rack barbed wire
(血塗られた拷問台 有刺鉄線)
Politicians' funeral pyre
(政治家の火葬のための薪)
Innocents raped with napalm fire
(罪なき者がナパームの炎に犯される)
Twenty first century schizoid man....
(21世紀のスキッツォイド・マン)
[机の上には、何かに怯えるような顔をした有色人種の顔が描かれた――青を基調としたレコードジャケットが置かれている。
"IN THE COURT OF THE CRIMSON KING"――KING CRIMSON]
「逃げろ」
[初めて言われたものではなかった。今更ながら、意味が、意義がよく分かる。私には誰よりも力がない。たぶん、逃げおおせる力も乏しい。
忠告通りに従うのが正しいと思う。しかし行ってもそこへ行き着ける確証はないし何より危険だ。だが一生見逃してしまうだろう何かもある。]
[一度抱き締めた腕を解き、柔らかい口接けを与えながら、手をハーヴェイの胸の辺りへと滑らせていく。
一つずつワイシャツのボタンを外し、前を開いた。]
……お前が、欲しい。全部、くれ。
[口接けの合間に、熱い吐息と共に告げる。]
ロティ――
[間もなく、陰鬱たる森林に分け入る。安置所からわずかに隔たった処にある廃屋の陰に目立たぬよう車を停めると、人の気配を伺いながら安置所へと歩みを進めた]
―安置所―
[「新しい作品?」 そう好奇心に目を輝かせて問いかけてくれた娘に、今は私は最初に作品を見せたかった。
死そのもののように冷たく厳粛な冥暗の中で、私はそこに奈落へ通じる穴が口を開けているかのように一歩一歩慎重に歩みを進める。
どれほどおぞましい深淵がそこに横たわっていても、彼女を求める歩みは小揺るぎもしなかった。
私はシャーロットがどこに居るか知っている。一度辿り着いたその場所を忘れ去ることなどありえない。
やがて、常闇の中に延ばした指先がそっと柔らかな肌に触れ――
――私は彼女を抱きすくめていた]
…ギル……
[風をさえぎっていたシャツが肌蹴られる。
あらわになった白い肌が僅かに震えた。
暖かさを求めるように腕を首に回し、自分から深いキスを送る。銀の糸が細く垂れた]
いいよ…全部……お前に……
[バンクロフト邸から─恐らくヒューバートとハーヴェイを乗せた─車の音が遠ざかると、ソフィーは客室を出て、マーティンに一言断ってバスルームを拝借した。
浴室に入ると温度調節もせずにシャワーのコックを捻る。
降り注ぐ冷水が火照った肌の表面を滑り落ちて行った。]
[シャーロットの身体を抱きしめたヒューバートは、彼女に着せたドレスが所々泥と埃に塗れ擦り切れ、真新しい鮮血が染み付いている事に気付くだろうか。
ただし、彼女自身の身体には何処にも新しい傷は見当たらない。]
[トヨペットクラウンのハンドルを握るナサニエルの口許は、先ほどの曲の歌詞を朗読するかのように小さくパクパクと開く。]
[彼には、或る望みがあった。
――恍惚を求めるが故に。]
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