情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
[下書きの線を軽く消せば、絵を持って廊下へ。定着液をスプレーする。そしてそのまま乾かすために放置し、自分は部屋の中へ戻った。
原稿用紙を前に、少し悩む]
『
本の少し先にあり得るかもしれない未来。
シェルターに入れても入れなくても変わらない。
近くに居る人を信頼して、協力する事ができたならば、きっと未来は明るく幸せな物になる。
未来は1人で手に入れるものではなくて、沢山の人と一緒に手に入れるべき物なんだ。
これが私の【未来】への想いです。
』
…うーん、文章変だけど、伝わればいいか!
[とりあえず絵を写真に撮りデータ化、原稿用紙に書いた文章をメールにそのまま打ち込み、共に両教官に送信。
その後元絵を保健室のヒューバートへ届ければ、
感想も何も聞かずに自室へと*逃げ帰るだろう*]
[工房で独り、工具を手に机に向かう。
傍らにはかぼちゃのプリン。
時折それをスプーンですくい、自分の携帯端末と工房のPCを確認しながら、少しずつ作業を続ける。
時間的に無理があると感じたので、悔しかったが自然物は以前作ったものを流用した。
それもまた、ここで作られたものには変わりない。
品種改良されたエアプランツを木材のように削り出し形造ると、スプレーで塗装する。
ネイルは塗られているが、決して長く伸ばされたことのない指先が、器用に動き、建物をひとつひとつ作成していく]
[ブラインドから夕陽が差し込む頃、出来上がった校舎を、中央のテーブルに置かれた箱庭に配置する。
昨日の昼間、それ以前にも、何度も屋上で見た光景が、何十分の一の縮尺で、キャロルの眼下にあった。
ひとつため息をつくと、手の甲に貼られた絆創膏にも塗料がついていることに気付く。
昨日の柔らかい感触を思いだし、淡く微笑んだ。
自分が初めて触れた、人以外の生き物。
外の世界にも、シェルターにも、あれはいるのだろうか。
昨日の夜に思いを巡らせると、そのまま瞼が落ちそうで、キャロルは慌てメールを打った]
『試験課題【世界】
これが私が誕生し、経験を重ねてきた世界です。
実物は、建築工房に。
注意:全てエアプランツで作られてるので、半月もしたら形は崩れます。』
狭い世界ね。
[呟いて、両教官に画像を添付したメールを送ると、力尽きたように机に伏し、眠りこむ]
[沈み往く夕陽。
薄闇に覆われていく世界。
窓の外の景色を視界の端に映しながら、
爪の間にまで入り込んだ土を洗い落とす。
冷水に晒された指先は、次第に赤味を帯びていった]
[あれから。暫しの間は茫としていたが、不意に思い立った様に屋上の花壇を始めとして収容所中の植物の世話をするうちに、あっという間に時は過ぎ去っていった。
普段から最低限はしているものの、今日程丹念にやるのは稀だった。
生命に直に触れたかったからだろうか。自分でも理由は解らず。
単に身体を動かして、気を紛らわしたかったのかも知れない]
[何にせよ、彼にとっては珍しい事だったのには違いない]
[ぴんぽんぱんぽーん。
甚だしく緊張感のない音が所内をこだました]
【所内放送】
課題提出お疲れ様。晩御飯できてるわよ。
ちゃんと食べなかった子は以下略。
[ぴんぽんぱんぽーん]
[昨夜と同様に、厨房のカウンターにメモが置かれている]
『本日のメニュー
・ライス
・八宝菜
・唐揚げ
・卵スープ(塩控えめ!)
ライスに八宝菜かけて食べるのオススメ
そふぃ』
[料理を目の前にして]
……だから、私は昨日から何に張り切っちゃってるのよ?
[エプロンを脱ぎ、ぺちぺと両頬を叩き]
……さて、本分を全うしてきますか。
[食堂から出ていく]
[ネリーにメール送信]
『Subject:課題未提出
ネリーへ
調子はどう?
出来上がりそうならもう少し待つわ。
Sophie』
[まずは建築工房へ赴き、そしてデータによって提出された課題を確認し、そして最後に到着する保健室]
―――――!
[そこに飾られている美しい絵と花に思わず息をのんだ。ナサニエルが花に添えたカードと、コーネリアスからのメールに目を通す]
……綺麗ね……。
[目頭が熱くなるのを感じ、両手で顔を覆った]
[自室――机の上に頬杖を突きつつ、個人端末を弄る。
一睡もしていないにも関わらず、不思議と感じられない眠気。
代わりにあるのは、朧に霞む記憶が浮沈するかの如き感覚だった]
[昨日同様、響き渡る所内放送。
然し彼はそれにも*気付かない*]
[昨日と同じ、所内放送に顔を上げた。
PCの明りだけがわずかに明暗を教える室内。
携帯の時計に目をやり、眠っていた時間がそれほど長くない事を確認する]
ええと、ソフィーの声、だった?
[前半は聞き取れなかった放送に、少しだけ不安になったが、メールが届いていないのならそう重要な用件でもないだろうと片付ける。
薄暗い工房を、明りをつけないまま歩き、廊下へ出た]
――数時間前・自室――
[私の指がキーボードの上を舞い踊る。
次第に速度を上げ、瞬く間に幾つもの単語が羅列されていった。
目を留めて再構成することはない。
ただ思考と記憶、直観が導くままに、言葉を紡ぎはじめた]
――自室――
[端末に向かい、私は目を閉じた。
時間は既に提出期限を過ぎていた。
書き上げた文書を送信する事の意味と意義――届き得ない言葉に、価値はあるのだろうか。]
“彼ら”には分からないだろう。
けれど――それでも。私はここに遺していこう。
誰に伝わるかは、分からなくても。
Subject:最終選抜1st
―――――――――――――――――――――
【世界とは、フィクションである。】
Nelly Hope
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
人間は、感覚器官を通した脳内の信号でしか世界を捉えられない。
視覚は380から770nmの波長の光まで。
聴覚は約20から20000Hzまで。
嗅覚は嗅覚細胞が約2000万から5000万個。
味覚を司る味蕾は約8000個。
指先の感覚点は1平方cmあたり、
触覚で9から30、冷点は7から9、温点で2、痛点で60から200。
そこから伝えられる電気信号や物質を、
大脳皮質の140億と小脳の1000億個の細胞で処理・変換することでしか、世界と関われない。
その矮小な感覚器官と思考の幻想を、人は現実―-あるいは世界――と呼んでいるだけなのだ。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
『はじめに言があった』という言葉が示す通り、世界を構成するのは名づけられた事物である。
名前を呼びえない存在とは世界の外にある存在であり、それは神の名が神聖なものとされて言及することを禁じた、はるか古代の人間から受け継がれてきた認識だと云えよう。
そして、ある呼称がその対象物を指し示すという枠組みそれ自体がフィクションだという理解は、記号論という形で広く知られたものだ。
ある単語、例えば『猫』が生物としてのネコそのものと同一ではないように、私たちが周囲の環境を認識するときの言葉もまた、恣意的に定められたものなのだ。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
対象物とその呼称との恣意的な関係性は同時に、あらゆる人々の世界認識が同一であるという楽観的な可能性を打ち砕く。
“わたし”が『山』と呼んでいるものは、
ある人にとっては『悪夢』かもしれないし、
またある人にとっては『人生』かもしれない。
自らの世界を構成し認識する行為が、あくまで主観のうちにおいて為されるものである以上、その違いや齟齬を糾弾することは地球上の誰にも不可能なことだろう。
それが可能な者が居るとしたら、【世界】の外にある存在――すなわち、“神”と言い表す他ない存在ではないだろうか。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
話を戻そう。
つまり【世界】は、それを認識する者と同じ数だけ存在するということだ。私の世界と、あなたの世界。似ているように思えたとしても、決定的にその二つは異なっている。
経験や知識、社会的・身体的要素という要素は表層でしかない。
言葉と言葉、個人と個人の間にある断絶と齟齬。
それこそが“わたし”と“あなた”の世界を決定的に区分する。
決して乗り越えられない高い壁。
決して飛び越えられない深い溝。
私たちが理解し認識していると思っているこの世界は、極言すれば虚構の中にある『独り遊びの罠("Solitaire Trap")』にすぎないのだ。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
さて、しかしこの認識を是とする意見は多数派とは云えないだろう。
他人との会話や深い情緒的交流を通じて、その【世界】を理解した、と主張する立場は私も存在を認めるところではある。
だが、それらは結局のところ自己満足と自己欺瞞に満ちた迷妄だと断じざるを得ない。
―――――――――――――――――――――
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新