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―森の中にて―
………で、どーすんの?
こんな森ン中で生首持って立ち話?
[地面に座り、火のついていない煙草の先を歯で上下させている。]
ネリーはお前に話があるみたいだし。
話す場所だけ貸してやるよ。
俺ン家にでも来れば?
――は?
[何のことだかさっぱりわからなかった。半ば混乱しつつ僕は言い返す]
――いや、けど。死んだ事のある人間なんていないじゃないか。死んだらそれまでなんだから。死んで意識があるならそれは――
[その日も"私"達は細心の注意を払って行為に没頭していた。
気になることは最近、村にとある捜査か何かで警察が頻繁に出入りしている事だった。ステラは繊細な為、平穏が少しでも乱されると情緒不安定になる子だった。その度に"私"は彼女の為に曲を弾き、歌を唄い、精神を宥めていた。]
[数時間前までステラの為に歌姫になって居た"私"は、今は神父様達の慰め者として淫らな声で歌を唄っていた。享楽に狂う甘美な歌を。]
[その歌がどれ程部屋を満たした頃だろう。
恍惚に溺れ霧のかかった白昼夢を見ていた"私"の視界が、突然真っ赤に染まった。
その直後、切り裂くような断末魔――]
["私"は一瞬何が起きたのか解らず、ただぼんやりと視界をスローモーションのように動かしていた。
流れ行く景色の中には、苦痛で顔を歪ませた男達と。
黒いヴェールと服に身を包み、手元を真っ赤に染めた――]
ス…テラ…?
いや、そんな、馬鹿な。
無茶苦茶だ。どこに根拠があるんだよ。
死んだからといって意識がなくなるとは限らないじゃないか。誰が確かめたんだ、そんなこと。
……そうだな。
ではそうしようか。
[ネリーに視線を移し、軽く目で促した。
樹木の根元に置いたバックパックを担ぎ上げて、ナサニエルに従う。]
[混乱しながら必死に論理を組み立てようとする僕の思考を、“彼”の追い打ちが粉々に打ち砕いた]
『――いや。お前は人間じゃない。より正確に言うなら、ほんの少しだけ、人間じゃあない。お前は、人狼の血族だ』
……は?
[言葉は"私"の認識より早く、目の前の人物を把握していた。
それは紛れも無くステラその人だった。
手には短剣を握り鮮血を滴らせて微笑みながら佇んでいた。
その姿は誰よりも美しく――
そして高貴だった。まるで背徳を犯した者を罰しに来た天使のように。]
[一瞬だけ彼女の姿に見ほれてしまっていた"私"だが、次に天使の裁きが振り下ろされるのを見て、咄嗟に彼女に向かって走りこんでいた。そして振り下ろそうとした手を何とか摑まえ、ナイフを奪おうとした。]
「どうして!どうして止めるの?!シンシア!あなたの為にわたしは裁きを与えに来たというのに!」
[狂ったように叫ぶステラを"私"は何とか押し止めようと手首を掴む。抵抗する彼女。押し止めようとする"私"。
しかし同じ同性という所為もあってか、圧倒的な力の差が無く。
やがて悲劇が起きる――]
[ギルバートとネリーを車に案内し、エンジンを掛けた。
車内には血のにおいが充満している。ハーヴェイの血か――いや、それだけではないかもしれない。]
……で。
まあ明日の朝になったら安置所にでも行くか。ユーインと同じ墓に入れようが入れまいが、とにかく安置所に入れンのがこの町のしきたりってヤツだし。
[煙草をふかしながら、車を運転している。]
[理解できないことば。
人狼の血族。Kindred of Werewolves.
単語の意味はわかる。
血族。Kindred.
血の繋がった一族。
人狼。Werewolf.
人と狼のあいのこみたいな怪物。
でも辞書的なその知識を呼び出しても、僕の混乱はまるで収まってはくれなかった。それどころか――]
["私"はステラを止めようとして、過って彼女の胸を短剣で刺してしまったのだった。力強く。そして深く――]
[體という器が無くなった今でもしっかりと覚えている。ステラの胸に吸い込まれるようにのめりこんで行った金属の手応えを。
すっと抵抗無く達した心臓。一瞬だけステラの目が見開いたまま"私"を凝視した。しかしすぐにその目は微笑みに細くなって――]
「あぁ、わたし…シンシアとようやく一つに…なれ…たのね…」
[一音ずつ弱々しく鳴る心臓の音を手に感じながら。"私"はステラの最後の言葉に小さく頷いて、気を失っていた。]
安置所……
[そう言えばそういう風習があるとセドリックに聞いたような、と声に出さず呟いた。
ハーヴェイの首は、バックパックから取り出した防水布で包んで、腿の間に置いている。]
『付け加えるならば、ヘイヴンの住民全体が――』
[聞きたくなかった。耳を塞ごうと両手を押し当てる。けれどその行動はただイメージしただけに留まり、“彼”は続けた]
『――人狼の血族だ』
………ああ。
理由はよく分かンねぇけど、この町のしきたりなんだってさ。
遺体がゾンビになって現れたらどうすんだよ、って感じだよなァ。……ま、ゾンビになっても逢いたいヤツがいるなら話は別だがな。あいにく俺にはそんなヤツいねぇし。
――自宅――
["私"は再び自分の亡骸を眼下にしながら、遠い昔の記憶を一つ一つ丁寧に思い出していた。
ステラの命を奪った後再び意識が戻った"私"は、ステラの修道服を剥ぎそれを身に着け、私の服を遺体の傍に置いて村を抜け出した。
今思えば咄嗟の事とはいえステラの身代わりになろうと思った上での行動だったのだろう。そして"私"は逃げる間に自ら記憶の改竄を行い、シンシアの名を捨て、ステラと名乗るように言い聞かせていた。自らを憎む対象にすることによって、少しでも"ステラ"の罪を軽くしてやろうと思って――]
でも…結局は"ステラ"自身も悩み苦しむ人生となったけどね…
["私"は自嘲気味にため息を吐いた。
その頃にはもう、空は白み夜はもうじき明けようとしていた。]
――自宅 朝――
[夜が明ける。何事も無かったかのように、今日も太陽は寝室にも光の恩恵を授ける。
でももう、この家にはその光を喜んで受けるものは誰も居ない。]
[ふと、誰も訪ねてこないはずの家に人の足音が響く。
聞いたことの無い音。わたしは首をかしげながらその音に耳を傾ける。]
[やがて空気は動き、わたしの身体はふわりと宙に浮く。どうやらこの町の仕来りに則って、安置所に連れて行かれるらしい。其れがわたしにとって幸せな事なのかどうかは解らない。
でも、今は素直にその行為を受けなければならない。だってわたしはもう――]
ゾンビ……ああ。あの映画のか。
──死人が生き返るなんてことはないのにな……
もっとも、昔は死んだと思われてたヤツが埋められる直前に息を吹き返した、なんて話、ざらにあったしな。
[やがて車のエンジン音と共に、わたしの身体は心地良い振動に揺られながら安置所に連れて行かれる。
ふと隣を見ると、同じような塊が目に付く。わたしはそれが瞬時にローズだろうということが理解できた。
これでも一応一時でも愛しいと思った相手ですもの。などと変な自信を持ってみた。本当は彼女の遺体に隠した香りに気付いたからなのだけれども。]
[そうこうしている内に、わたしの身体も安置所へ収められた。そこには他にもたくさんの塊があった。]
嗚呼、此処ではみんな一緒なのね…。
[わたしの心には、その時なぜか懐かしい気持ちが湧き上がり、胸が熱くなるような気持ちにさえさせられたように思えた。
わたし自身、この場所に来るのはこれが初めてであるにも拘らず――]
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