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そうか、ならば良かった。
じゃあ、もう一度聞こう。君にとって”死”とは、何だったんだ。
僕はまだ悩んでいる。少年の話が聞きたい。きっと僕は、君ほど若くないから頭が固くなってしまったんだろうな。
[目の前にいるEugeneを、わざと”少年”と呼ぶ。
自分にとって、衝動的でかつ純粋なこのEugeneは眩しすぎるのかもしれない。彼のように生きる事が出来たら、どんなに良い事か。
だがそれ故の危うさもherveyにとっては痛いほど分かっていた。
未発達な存在。それを確認するため、Eugeneをあえて”少年”と呼んだ]
lutherと触れたとき、”ああそうか、プログラムは死の恐怖におびえる事も無いんだな”と悟ったよ。
それはきっと悲しい事なのかもしれない。だけど僕は一瞬、うらやましいと感じた。
一生この世界で生きられたらいいのにな。でも僕はそれすらも認めたくなかった。だからこの世界とは出来る限り距離を置いていたのだろう。
死ぬ事だけじゃない。死という全ての概念から逃げていた。情けない男さ、僕は。君に何かを言えた義理などありはしない。
[眉根を顰める彼に、彼女は苦笑]
全くだよ。本気で殺されるかと思ったさ。
[展開されたantiPGMがするすると彼女へと戻り]
そうそう。このボウヤも何とかしてあげないとね。
[帯の一つが倒れ伏すGilbertへと伸び、光る]
[やがて役目を終えたPGMは彼女の周囲から消失した]
[彼女はLutherを振り返り、笑って言う]
でも。
……"悩み"をもつアンタは、まるで人間みたいだね。
[言って、LABOへと歩み寄る]
[LABOの一歩手前でくるりと踵を返し]
──Welcome home,Luther.
私が貴方を破壊してしまっていたら…
[Lutherは、Audreyが触れる左手を握り返し、Audreyの体の傍に返すようにした。右手は帽子を引き下げる。軽く頭を左右に振った]
…──存在していれば、其れで。
[死とは何かと問われて、]
ハーヴェイ、あなたと…。もっと話がしてみたかった。具体的にどんな仕事をしているかとか、そんな事。それがもう二度と出来ないのが、嫌だった。
最初は、傷付き苦痛を味わい死に掛ける事で、生きている事を確認していた様に思う。
アバターの向う側のあなたは、その外見より若く無いの?
…何歳?
[Audrey.HのWelcome home.の言葉とともに、
遥か遠くの方で、重いデータの塵が空を掠めていった。
それは、一筋の流れ星のように。]
それは賛辞なのでしょうか?──Audrey。
[LABOへ一足早く着いたAudreyに睛をやり]
──もう、誰もいない"家"ですが、
私のプロトタイプは…ここでつくられました。
貴方もそこにいた。
[微笑み、LutherはAudreyの元へ歩き出した]
・・・・・・
[ほんの数時間前に会話したばかりのように感じている彼が、もう大人びた口調をしている事に気がついた。自分が意識を失っている間に、いろいろあったに違いない]
32歳だ。Eugeneの友人になるには、少し年齢は離れているかもな。
[Eugeneの質問が続くが、その答えを口にしながら、昔の事を思い出していった]
・・・・・・ そうか。
あれは多分まだ学校というものに行く前の事だった筈だ。
ふと、死というものを考えてみた瞬間があった。多分祖父が亡くなったのがきっかけだろう。
もし自分が死んだらその先に何があるのか。
天国や地獄など親は言っていたが、僕は全く信じなかった。きっとその先は何も存在せず、僕の思考は停止し、闇が広がっている事すら気づかずこの世から存在は消滅するんだろう。そうやって今までも無数の命が虚空に飲み込まれていったんだろうと。その絶対的な不幸に気がつき、部屋の隅で、独り泣き始めた。
家族はその時、変な子だと悩んだらしい。だがそれ以来僕は”死”について恐れる事はなくなったんだろう。
違うな、考える事を止めたんだろうな。きっと。
[現実世界で逢いたい──そして、触れてみたいと。
…思った事は口に出来ない。
友人と言う言葉に、傷付いた様な表情を浮かべた。]
…──ちょうど、2倍…生きてるんだね。じゃあ。
私は16歳になったところ。
"家"に帰ってきたことを祝福する言葉だよ。
さて、このボウヤもこのままじゃ動けないね。
ラボの中で直してやるか。
[よっこらしょ、とGilbertの"体"を担ぎ上げLABOへ向き直り]
今は何だか人が居るみたいだけどね。
攻撃はしちゃいけないよ、Luther。
名前、か。
herveyでは足りないかな。
ならば君の名前はなんだい。
この世界でなら、僕らはherveyとEugeneという名称でお互いを個として認識できる。それ以上の情報は必要ない。
[だが、少し間をおいて]
僕の現実世界での名前は、Michael-greigだ。
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