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――町中――
[せんせいの自宅兼診療所へ向かう途中、わたしはふいに幼い声に呼び止められた。
その声に振り返った瞬間腹部に軽い衝撃を覚え、反射的に視線をそちらへと向けると生徒でもある幼子が何か悲しげな表情でわたしに縋り付いていた。]
まぁ…アデルじゃないの。どうしたの?突然…
[わたしは瞬時に教師という仮面を被り、栗色の柔らかい髪を梳きながらあやす様に語り掛ける。子供はその嘘偽りの仮面を見抜けず安堵したように顔をあげぎこちない笑みを向けた。]
[その後彼の父親もやってきて、ふたりはわたしの姿を見るなり安堵したように口を開く。
「先生に何かあったかと思って…」と。
その口振りから先の豪雨での被害だけではない、何かもっと恐ろしい事が静かに町内で起こっているのではないかと背筋を震わす。それは瞬く間に現実の物となって私の耳を掠めるのだけれども――]
――町中――
[わたしは豪雨の後村で起こった事を教えてくれた親子に別れを告げ、再びせんせいの自宅へと向かって歩き始めていた。
真実を知らされた後、今は亡きせんせいの自宅へ向かった所で薬なんて貰えないのは解っていたけれど…。それでもせんせいと交わした会話が、まだ漂っていそうな診療所へ、自宅へ行く事が、今わたしに出来る唯一の弔いのように思えた。わたしがたった一人だけ素直になれた人に祈りを捧げたくて――]
――町中→診療所へ――
――診療所――
[主の居なくなった家は何て寂しいのだろうか。
わたしは現実を目の当たりにすることによってせんせいの死を改めて知ることとなる。
ほんの数日前、三日も経っていない筈だった。雨の中この場所へ訪れたのは。それなのにもう、せんせいはこの世には…居ない――]
せんせ…ぃ…なんでまた――あなたのような人が天へ…?
神は酷すぎます。信仰深きせんせいの最後を…あのような無残さで奪うだなんて…
[ここに来る途中聞いたせんせいの最後を思い出し、わたしは崩れ落ちた。嗚呼なぜ主は自らに縋りつく者達に酷い仕打ちを行うのでしょう。苦しさに口惜しさにわたしは胸が苦しくなるのを覚えた。]
嗚呼主よ…我はあなたを憎みます…。人を救えず、自らの許へ縋り寄る人々を貶すあなたのその行為を…その心を…憎く思います。人一人救えず、何故あなたは天に在しておられるのか…。わたしはただ、それだけが疑問でなりません――
しかしもし何処かで願いが聞き入れられてくれるのならば…あなたの羔でもあったせんせいの…安らかなる死を…導きたまえ…
[もしこの世界に本当に神がいるのなら。それはどんなに残酷な神だろうか――
もしこの世に救いがあるのならば。それは一体何処へ差し伸べられているのだろうか――
様々な疑問が渦巻く中、わたしに出来た事は亡きせんせいの安らかな眠りをただ祈ることだけだった。]
―回想―
[ゴライアスの返り血がジャケットを浸していたが、それはバスルームですぐに洗い流された。幸いなことに、黒のジャケットに付いた血の汚れはさほどは目立たない。
ダンソック邸を出る前に、最後に洗面台で自分の姿を改める。凶行の名残は一見して見あたるものはなかったが、額と頬に多少の擦傷と裂傷が見られた。雑貨店を出る前に買っておいたバンドエイドを貼っておいた。]
ひでェ話だ……
[ブランダー家の部屋でぽつりぽつりと話したニーナの言葉を思い出す。感情の波さえも奪い去られたような虚静な声音が、かえって痛々しかった。
あの時のシャーロットになにか彼の感情を損ねるところがあったのか、私は思い出すことすらできなかった。敵意を持った者に対してはなにが切欠になるかわかったものではない。
ニーナは、シャーロットの代わりに犯されたようなものだった。そのことをニーナの言葉から知った時、怖気が震った。もっと早くこうしておくべきだったとすら思った。
その意味で、悔いは全くなかった。]
―車中―
「やあ、バート。どこへ?」
[対向して走ってきた、錆の浮いた農作業用の軽トラックの運転席から声をかけてきたのは、顔なじみの男だった。
今は引退したがかつて行政委員の職についていたこともあるオーウェン・ペンゲリー。もう五十を越えていただろうか。
彼の家は代々森林と猟場の管理に携わり、彼自身も猟をこよなく愛していた。
助手席にもう一人いる。ダスティ・ワットマンだった。がっしりとした体格の三十代の男だ。彼は、かつて消防団で訓練していたことがあったため、暴風雨の被害があってから何かと駆り出されていた。
軽トラックの荷台には、工具や簡単な消火器の類が乗せられ、ガタガタと揺れていた。]
今から、雑貨店に様子を見にね。
[そうか、と彼らは頷いた。今日はあいつらはどうしてる? 電気工事の――と聞くと、あいつらはあいつらで走り回ってるよと返事が返ってくる。復旧を目指したゴタゴタは続いているようだった。]
「ちょっと訊きたいんだが、ダンソックの家の方で何かあったかね? 犬小屋に火の手が上がってると言ってきたヤツがいるんだが。」
[私は少し考えて、答えた。]
さあね。
……ただ、あそこは犬の管理が酷いだろう? 随分と苦情があったみたいだ。そこへ来て、この土砂崩れだ。郡の保健所に連絡をとろうにもどうにもならない。
[二人は肯く。]
“有志”がどうにも見かねて代執行したんじゃないか?
[ほんの僅かな間だったが、意志を探り確認するような視線が互いの間に行き交う。それだけで充分だった。彼らは、町の古くからの馴染みだったからだ。]
[ややあって、ダスティが親愛の微笑みを浮かべ、沈黙を破った。その沈黙に横たわる手応えを確かめるように。]
「そう言えば、あそこにはでっかい“黒犬”もいたっけ。よく吠えて、しかもあちこちの“犬”を孕ませるものだから“犬を飼ってる家”は気が気じゃなくてね。」
――そうなんだよ。
なあ。こういうのって、問題あるかな。
例えば、病気持ちの犬だけじゃなく、たまたまそういう“犬”を巻き込んでしまったりしたら?
暴れて抵抗したとかで。
[ないと思うね、とオーウェンは言った。特にこんな時には、とつけ加えて。]
「そいつは町の問題を取り除くために一働きしてくれたんだろう?
俺なら、ビールを奢ってやりたい気持ちになるね」
よかった、私も実のところ同感なんだ。
[それなら、今度皆で一杯呑もう、と私たちは笑いながら約束した]
「最近は動物も愛護だとか権利だとか煩くて、躾すらままならないがね。まったく、やりにくい世の中だよ。」
[二人は小声で何事かを呟く。私は黙って肯く]
軽トラックは走り去って行った。
私はシボレーを走らせる。雑貨店近くまで辿り着く。
不意に胃の逆流に耐えきれなくなり車を停める。
路肩に降りた私は、側溝に嘔吐していた。]
──ブランダーの店──
[ドアを叩くと意外なことにソフィーが顔をだした]
あら、ソフィー、なぜ、こんなところに?
[ローズマリーが問うとソフィーは父親がいなくなったこと、ヒューバートに送ってもらったこと、ヒューバートがボブの家にいったことなどを聞いた]
──ブランダーの店・店舗内──
[ドアの外から聞こえて来たのはローズマリーの声だった。
緊張を解き、急ぎ足で店先へと出迎える。]
ローズさんこそ、どうして此処へ?
あ…、ニーナさんは奥に──…
[店には自分とニーナしか居ない事を説明し、取り急ぎ店先で自分が聞いた事、見た事などを大まかにだが説明した。]
[ナサニエルの家から自分の…ドナヒューの家への道を辿っていた。このなりでバンクロフト家に帰れば何かと余計な詮索をされる。
ならせめて自宅へ帰宅していたと証明できるように、と思ったのかもしれない。どんなに懇意であっても所詮他人の家、こんなときは自宅で力を抜きたかった。
自宅に着くや否、水のボトルをひっつかみグラスにも開けずに一気に飲み干す。
夜中長眠らなかった疲労や水分不足からだったのだろうか、水はあっという間に消えた。
数本あったボトルは全て中身が消えたが、それでも渇きは続く]
もう…ない…のか…?
[水がなくなり、脱力したが、何とか自室へ向かい、ベッドへと倒れこむ]
[店を訪ねて来たのはローズマリー一人ではなかった。
件のギルバートという旅人と、もう一人、偶にアンゼリカで見掛ける青髪の男が一緒だった。チャラチャラと鍵をポケットに仕舞う様子から、車を運転して来たのが彼だと推測出来た。
名前は確か、ナサニエル。
ファミリーネームはサイソンと言ったか。]
[どれ位その場に佇んでいたのか。短い時間かもしれないし、かなりの時間をせんせいとの思い出に費やしていたかも知れない。
しかしこのままこの場所に居てもどうかと思い、私は再び歩みを進める。向かう先は…ブランダー家が経営する雑貨屋。わたしは昨日の振り返りたくは無い記憶と、しかし先程すれ違った親子から聞かされた事実を照らし合わせたくて…。覚えのある道筋を辿る。]
「あのね先生…これは噂なんだけど…」
[そう切り出した幼子の怯えるような眸が脳裏に浮かぶ。]
もし…その噂が本当だとしたら一体…――
[わたしは靄のかかるような思考の出口を捉えるべくもがく様に考え得る事を次々と浮かべては自らの指で打ち消していく。]
『有り得ないわ…そんなこと――
この宗教を気嫌う町に限ってそんなことは…。
でも、気嫌うからこそ…』
――馬鹿らしい。
[わたしは吐き捨てるように溜息を吐いた。そして未だ色々と詮索したがる脳を無理矢理宥め付けると、雑貨屋目指して歩くスピードを速めた。]
――雑貨屋へ――
[気分は相変わらずすっきりしないが、せめて体だけでもと気だるさをおしてシャワールームへ。
服は洗濯機へ突っ込み、洗剤を─手元が狂ったのか、かなり多めに─放り、スイッチを入れ、そのまま自分は湯を使う。
背中の傷が流れる水の軌道を更に歪めていた。
服を着替え髪は濡れたまま、ぼんやりと*外を眺める*]
[洗剤をかなり多めに入れたのはあの部屋の匂いが付いていることが耐えられなかったから。
消えなかった場合は捨てるつもりだった]
ちっ、面倒だな…
[エレメンタリースクール時代のおぼろげな記憶の中で、ナサニエルはいつも教室の隅で本を読んでいるような大人しい少年だった。
しかし、ジュニアハイに上がる直前だったか、或いは上がって直ぐだったか、都会の学校に転校する為に町を出て行った彼が3年前に町へ戻って来た時には、その頃の面影はなく、何処か退廃的で後ろ暗い雰囲気を漂わせた、内向的なソフィーにとっては少々近寄り難い種類の人間になっていた。
当然此方から話し掛けた事も、口を利いた事もなかった為、ローズマリーと共に来たその人の姿に戸惑いを隠せなかった。]
……とりあえず、
店先では話がし辛いでしょうから、中へどうぞ。
[ソフィーは俯き加減に三人を招き入れた。
ローズマリーに寄り添い、肩を抱くように歩くギルバートの態度がやけに気になったが、何も言わずに扉を閉めた。]
見習い看護婦 ニーナは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
――雑貨屋前――
あら。随分賑わっているのねぇ…。
[わたしは店の近くまで来ると視界に入った車と人影に、苦笑を漏らした。
歩みを進める度にはっきりとする人影。その中には素肌を許した仲の人もちらほらといたが、わたしは気にもとめず雑貨屋の入り口をくぐりながら声を掛ける]
こんにちは…随分人が集まっているようだけど、何かあったのかしら…ってこれは…一体…――
[聞いてきた噂は閉ざしたまま店内へと足を踏み入れたわたしの鼻腔を、血生臭い匂いが容赦なく擽る。素早く白いハンカチで口許を覆い、とにかく店の中の尋常ではない様子に顔を顰めながら事情を知っていそうな人を視線で探す。]
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