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[ナイジェルの礼に軽く手を上げ、歩んで見えるは牧師の姿。]
随分楽しそうね。
何か良いことでもあったかしら?
[小首を傾げてそう尋ねる姿は本気の質問でもないようで。]
紅茶、飲んでたのね。
私もいただこうかしら。まだある?
[いつものように微笑んで。]
嗚呼・・・
よく似た笑い方をした人を
何だか知っているような気がする・・・
誰だったかしら?
――思い出せないわね。
思い出せないということはさして重要でもない――か?
[足音に気付くと笑いを引っ込めて。
それでも見られてしまったのであろう。
小さな舌打ちは笑顔の裏に隠しておく。]
……ええ、まぁ少しだけ。
紅茶ですか?
ありますよ、まだ。
[厨房でティーカップをもう1つ持ってくると、ティーポットから紅茶を注いで。]
[牧師の何を見ようとも追求する気もないのだろう、別段気にした様子もなく注がれた紅茶に対して ありがとう、と微笑む。]
起きたのが遅くってね。
食欲もなかったのだけど、今さら何かほしくなって。
[穏やかな口調で話し、紅茶をおいしそうに飲む。]
――執着するものなんて何一つないけど、紅茶は好きだわ。
[ソファーに掛けなおすと自身のカップを手に持ち。]
皆さんまだお休みのようですしね。
一時的に食欲がないだけでしたらいいですけど。
具合が悪いとかでしたら、ちゃんとお休みになってくださいね。
[当たり障りのない話を。
紅茶を啜りながら。]
……然様ですか。
執着するものがなくとも好むものがあるというのは喜ばしいことではないかと。
[皆まだ降りて来ていないのを聞けば、ふぅん、と気のない返事を。]
食欲は一時的なものよ。
起きぬけはどうもね。
[と言って紅茶に口をつける。]
まあ、好きなものが何にもないよりはいいのかもしれないけど――。喜ばしいとまでは、ね。
[イマイチピンとこない様子でとりあえずの返事を返す。]
まあ、好きなものを口にできるのは嬉しいけど。
然様ですか。
[頷くと、空になったカップを置いて。]
何もないのは――つまらないでしょう。
生きる上で楽しみの一つもないのは、ね。
[一般論ですよ、と肩を竦めて。]
……一般論。一般論か。
私の嗜好はきっとその一般の人とは違うから。
紅茶は……そうね。やっぱ喜ばしいかも。
[考え事をしながらのティータイムは、手元の紅茶を冷ましたようで残りをくいと飲み干せば]
おいしかったわ、ごちそうさま。
[と礼を言う。]
そうですか?
――普通の人に見えますけれどね。
[事実はどうかしらないが。
得体の知れない女を少し見つめて。]
……お粗末様でした。
茶葉にお湯注いだだけですから……美味しいのは茶葉のおかげですよ。
普通かもしれないし、違うかもしれない。
その物差しを私は持ち合わせていないし、測るつもりもないけど。
……何でこんな話したのかしら。
[牧師様のお力かしら?と洒落っけを混ぜて。]
[既に半日以上が過ぎようとしていた。
ネリーは自分用の個室を勧められ、柔らかいベッドを味わうとそのまま意識はまどろみ、意識を明確に取り戻したのは昼過ぎだった。]
これは夢なのかしら?
[手足に残る怪我の痕が嘘ではないことを彼女に告げる。
少し傷ついているかもしれないけれど、精神的には万全。何故ここまで体調が優れているのか思わずくすっと笑ってしまいそうなほど。]
…まあ、こんなものまで、律儀ね。
[いつをもって眠りに落ちたのかは覚えていない。しかし部屋の隅に自分が持ってきたものが置かれてあった。
もっとも、持ってきた物と言えばすなわち身につけてあったもの、そのものなのだが。
白い布や、みすぼらしい古着、果ては金属のものまで。
さらにネリーは目を遣ると、隣には化粧台にも見えるようなテーブルとチェアーがちょんと置かれている。 少し髪を梳き、長い髪を三つ編みに揃えたりして興じる。
部屋を出ると、そこは少し迷路に迷い込んだようであった。360度全てが知らない場所ばかりだったからだ。
試しに得体の知れない部屋の扉のノブを回したりしたが、案の定回らない。
開錠の知識は皆無ではなかったが、ここはそっとしておいたほうがよいのかな、と思いそのまま中央の階段を下りていった。]
ここに来たのは…6人、7人?
アーヴァインも何を考えになってるのかしら。
[ネリーは1階の廊下を歩きながら、このお屋敷には何があるのか少しばかりこそこそしながら回った。]
[ルーサーの言葉にくすりと笑みをもらし、空のカップを両手で包む。]
罪の境界さえあやふやなのに、
普通の境界なんてわからないわよね。
[裁く側の判断とて普通ではないかもしれないのだし。
嗜好の方は肩をすくめてから、そうね、と笑んだ。]
……そうですね。
そもそも他人に買われるなんてことがあること自体、普通ではないでしょうし。
何時だって他人を計るのは難しい。
[両足の上に肘をつくと手を組む。]
物事の多面性というやつですね。
[連続して落ちてくる水滴は、冷た過ぎで体中の筋肉を強張らせたりすることなんか決してない。
勢い良く湯を吐き出すシャワーノズルに頭から打たれたまま、その心地よい温度に目を瞑る]
とっとと出て行くなりした方がいいんだろうけどな…
…気持ちいいや、ここ。
[太陽の匂いがするふかふかした毛布も。
自由に占領していい暖かなベッドも。
良く見れば凝った彫り物などされている家具の配置された個室も。
階下に下りて好きなだけ食べても余るのだろう食料も。
浴びても浴びても無くならない永遠の湯を湛えたかの様な浴室も。
招待主の意図が読めないことを除けばまるで――夢の世界]
…ま、そろそろ浴室くらいは出ておこう。
鍋の中のキャベツになっちまう。
[吐く息すら熱く感じられる頃になってようやく、...は湯を止めた。
血が湯と入れ替わってしまったように全身赤く、頭もぼんやりする]
ああこれ…のぼせた、ってやつ?
[何枚でも使っていい筈のタオルを一枚だけ使い、髪を乾かすのもそこそこに、クローゼットの中にあった緑のシャツを適当に着込む。
もしまともな頭なら、誂えたようにサイズがぴったりであることをいぶかしんだかもしれない。
それでも昨日ポケットに滑り込ませた果物ナイフを新たな服のポケットに移し変えることだけは忘れずに、水を求めて階段を下りた]
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