[彼は人間が電脳世界を人間的視覚化する前から存在していたウイルスだった。
彼は良くある手紙添付型のウイルスだったが、無効データの無限排出や周辺データの強制消去、無限反復運動開始といったウイルスたちと違い、「侵食」と「切断」によって多くの監視プログラムの目を掻い潜り多くのプログラムを破壊してきた。
彼は一見すると無害だった。
データを増やすではない、逆に減らすでもない。処理の低下を招くでもない。
データの文字をランダムに書き換え、修復プログラムがそれを邪魔をする時はデータを切り分けてから改めて書き換える。
アイコンとデータサイズを眺めていただけでは気付かないだろう。
気が付けば開けないデータがある。データの個数が増えているような気がする。
そうしている内に侵食はシステムにまで及び、ついにはPCを唯の器にするのだ。]