――Mundane/upperlayer (現実世界/上層区画)――
[人影もまばらな辺縁区画。
小さな駆動音と共に、四角い建物の口が開いた。ゲートを抜けて姿を現したのは、スーツケースを引いた男が一人。インディゴブルーのケースは旅行者と見まがうばかりに大きく、だが彼は見知った様子で周囲を見回した]
さて、と。ひとまず落ち着く先を探さなけりゃあ、な。しかし……?
[独りごちつつ、いぶかしげに濃茶色の瞳が細められる]
随分と。閑散とした様子、だ。
静か過ぎる―午前四時の墓場でもこうはいかないってくらいに。