[彼の娘、エミリー・マーシュは七ヶ月前に行方不明になった。正確には、“魂”をどこかに奪い去られたのだ。
麓の電脳街のネットカフェで電脳に接続し、アンダーでのゲームに興じていたことが残されたログからは判明している。彼女の“魂”はその時から現実世界に戻ってこれなくなった。代わりに電脳に侵入した単純なルーチンPGMが、彼女の日常生活をトレースし続けた。
マーシュが異変に気づいたのは、四ヶ月前のこと。
実に、三ヶ月ほども娘の異変に気づかなかったことになる。
まったく同じ日常を反復し、簡単な挨拶程度のことしか話さない“人形”と化した彼女に――。]