[――何も無い。そう、自分には何も無いのだ。彼の名前は、其の色彩を表すに過ぎず。彼の苗字は、家族の居ない彼には存在しない。違う。選んだ筈なのに、棄ててしまった。其れは不要だと判断したから。在ったものも、無かったものも、求めるのを止めたから]