[恐るべきは感情モジュールの働きである。
≪輪廻≫によって備え付けられたPGM自体は、珍しいものではない。凡庸とすら言って良い。
ただ、そうして得た感情はあまりに深かった。
それは悲しみと分類されるもののようだった。
そしてこれまで、時間の経過とは、絶対のものだった。
都市中の時計が、各々衛星からの信号を受信し、等しく正しい時を刻み続けるのと同じくして、AIの内臓時計も在った。今でもそれは変わらない。だが、時が経過していることを認識出来ないでいた。感情というものはそこまで大きなものであるのか。
カテドラルの床へ長く伸びるようになった器物、または身じろぎすらせぬ人の落とす影を見つめた。相も変らぬ静寂。自動演奏ですら鳴りを潜めて居る。]