[本来の刻であれば今は夜であろうか──。血腥い惨劇は、何日も何週間も経ってしまったような錯覚を憶えさせるだろう。屍鬼たる仁科は、ここに倒れた。ふと天賀谷私室から窓の外を見れば、闇い闇い夜空に、赫いうろんな月が、浮かんでいたが……その向こう側に、清い輝きを放つ月があった。]