ハーヴ。
あなたが狂う理由が分からないわ。
[私が手に取ったディルドに刻まれた名は、リックのもの。
私は沸き上がって来る得体の知れない負の感情にまかせて、それを床に思い切り叩き付けた。そして、パパが履かせてくれた華奢な白いヒールの踵で、それが砕けるまで踏みしめる。
行為とは対照的に、私の顔からは表情が消えてしまっているに違いない。]
殺された私にも、話せない理由って何…?
あなたの所為で、こんな風になってしまったのに。
私はもう…──……、
[人形のようだといわれた事の有る無表情は、言葉を紡ぐうちに凍り付いたような引き攣った笑みに変化していた。
もうひとつ、形状から誰のモノかを理解した上で、ディルドを私は手に取り、ハーヴェイの目の前の台座に腰掛けた。]