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[傷ついた足]
誰の心臓を貰おう。
あと7人しか生きていない。
[刃を]
[両手に握り締めて]
[品定めするように]
[――めぐらせていた視線は、中空で止まる]
[ぐいっと、服の袖で泪を拭う]
[やらなければいけない事があったではないか]
[使命感に駆りたてられるかのように]
[ぽたぽたと掌から落ちる赤い雫]
[胸に手を当てて、呟く]
また、ぼくに力をかして。
[視線の先には…―――踊り子の姿]
[ぶわりと、赤と混じり][光を発する]
また…違った。
キャロルお姉ちゃんは、犯人では
……監督では……ない。
[固く閉じた目の奥で、何かが見える。
白い肌も、金色の髪も、身奇麗に整えられた服も全て赤に染めて、優しく微笑む美しい女]
あ…ア、アア!
アアアア!
見える…ソフィーだ、あいつがっ――!
[恐ろしさに引き攣る顔で暗闇から逃れ目を見開いて、あまりの息苦しさに自分が息を忘れていると気付いた]
呼んでる…おまえもこっちに来いって手を振って。
ああ…居るんだな?
居るんだ、死んでからも、ここで俺たちを見てる…
なら霊能者だっていたっておかしくはない…
霊がここにいるのなら!
――ああ、誰か、誰か!!
[ずきずきと掌が痛む][そして襲う倦怠感]
[奪われているのは][――果たして体力だけなのか]
…どうして、キャロルお姉ちゃんに力を使ったのか…
疑問に思う人がいるだろうから、先に言っておくよ。
正直ぼくが真偽を知りたかったのがあるんだけれど。
キャロルお姉ちゃんが、希望を出した時には
僕の中で既に決めてたから…ウェンディちゃんを
占えなかったんだ。ごめんね。
数で言ったら同じになっていたんだけれど。
それに、ウェンディちゃんが、監督のように
ぼくから見えなかったってのもあったからね。
[気付く][周囲が…狂気に満ちている事を]
守ってくれ俺を…!
ヤツらから!
ソフィーから!
誰でもいい…守ってくれ!
守ってくれ俺を……守護者、守護する者!
居たっていいはずだ…
こんな地獄のような場所で、俺たちを殺す者だけがいていいはずがない。
守る者だ。必ずいる…いるとも!!
[どれほど力を入れても止まらない震えに、縋るような声を出して蹲った]
けど困ったなー。
[続く言葉はやはり、彼女へ]
結局ロージーが私を占ってないから
他の人達からどう見られてるのかハッキリできないよね。
私もトビーが何者なのかわからないもん。
いっそ私を犯人と言ってくれたほうが
私から見ればハッキリと仇を討つ相手がわかるんだけど。
[くらりとする身体]
[壁を求める][体重を委ねながら]
[霊能結果を聞き、確かめるように]
ソフィーお姉ちゃんが、監督、と。
真偽は…結局わからない。
唯、言える事は、残る監督は1人って事。
そして、ローズお姉ちゃんは、監督に味方する存在
…狂人だったって事だ、 ね。
[そこまで言うとずるずると座り込んでしまった]
あはは、足に力…入らない。
――thus,now I'm knockin' on heaven's door.
[斯くして我は天の扉を叩く]
Burnigly,Cunningly,Lively,I wish.
[燃え立つように 狡猾に 鮮やかに 我は冀う]
There's nothing else than Mind's Desire.
[其より他に我が心に望みは無く]
……キャロルは、監督とやらではない、か。
……ふむ
[血に塗れたままで]
偽者だとしても誰かを告発すれば、仕事は終わったとばかりに狙われる。
彼女のように。
[ソフィーを見遣り]
本物であるならば、
本当のことを謂っているだけなのだがな。
……信じたいが…………
占いの力……御伽噺でもなんでもない。
確かに其処に在るのだな……。
犯人たちが恐れるわけだ。
故にマドモワゼル・ローズマリーは。
確定した情報が得られないのは、雲を掴むが如きだな。
今確実なのは、確かに1人は葬ったということだけか。
にいさま――ごめんなさい。
[光を見つめた視界は蒼く]
[染まり行く中]
[掛けられた声に瞳を閉じた]
[何処ともしれない壁の外から]
[呼ぶような声が聞こえた]
[そう、思った]
――あいしています。
だから大丈夫…大丈夫…俺は死なない、大丈夫だ…
さぁ言わねぇと…誰を殺すべきか、誰を疑うべきか。
[殺さなきゃ殺さなきゃ、誰かがくり返す呟きの中で、自分は死なないと言い聞かせてまともに声を出せるようになった頃、それでも上げた顔の中の瞳は狂気が深まった事を示していた]
……トビー。
[気遣わしげに見遣り]
体を休めておけ。
……占いの力というのは疲弊するもののようだな……。
[ナサニエルが叫んでいる。声を絞り出している]
ナサニエル。もう、彼女は壊れてしまった。
永遠に花園の向こう側へ去ってしまった。
[頚を横に振る]
守る者……トビーの言っていた守護者。
ああ、居るのだろう、一方的な虐殺など冗談ではない。
見るもの、守る者、殺す者。出来すぎたシナリオだ。
監督だか何だか知らないが、悪趣味にも程がある。
[幾度目か、低く低く呟いた]
トビーは私達の仲間。
私を人間としてくれた。
ソフィー、貴女も身を挺して名乗ってくれた。
素敵な作品を、綺麗な赤い花を咲かせないとね。
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