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[ウェンディに]
死ぬ、というのはね。
自然なことなのよ。本来はね。
人間が死なないなんて、どうかしてるのよ。
仮に生き返れなかった人がいたとしても、
その人が不幸だとは思わないわ。
まあ、いいわ。これ以上、あなたと話をしても、無駄ね。
いいことを教えてあげましょう。あなたのいう首謀者ね。コンダクターと名乗る坊やよ。気をつけなさい。
また、気が変わったら、話をしましょう。
<<
いつでも、待ってるわよ。
>>
―― 現実世界/中央部・南部の境界線 ――
[オードリーの姿は声だけが響く。]
お話の途中で名残惜しいけれど、私は行くわ。
レディ・シャルハラ、セシリアさん。
また、会いましょう。それじゃ、ね。
[* 気配が消えた ... *]
[セシリアには、SSSと、メガロポリスに齎された一時的な粛正──オードリーの口にする所のテロの首謀者──何かが繋がりそうで、繋がらない。]
【粛正】【ただしき、死】【バックアップ、不死──死】
【死に至らんとしている Master】【セシリアのもう1つの存在意義】【目的を見いだす】【目的】
[もう一度、瞬き。
セシリアの本質は1つではなく、故に目的も1つではない。
故に、身の裡が軋み悲鳴を上げるのだ──AIであるにも関わらず。]
ハックマンさんと、貴女の言う首謀者の違いはなんでしょう?
私の目的は──このメガロポリスに
ただしき死をもたらすこと────
[自己矛盾を否定し、敢えてそう告げる。
セシリアの口元は、何故か状況にそぐわぬ完璧な笑みを浮かべていた。]
誰かが手紙の持ち主を襲って回るなら、あたしたちも危うい。
トビーは身を守るものしかないといったけど、あんまりやられそうな気がしないんだよね。
[立ち上がり、空中庭園の出口を探して見回す。
ステラの申し出には首を傾げて]
あたしについてくるの? いーけど。あんまり得るものは少ないかもしれない。
[トビーの別れの言葉には、頷き]
信じてるか信じてないかでいうと、どっちだろ。信じてもいんじゃない? って思ってるよ。
ただの、勘だけど。
ここまでつれてきてくれてありがと。
南部の方に知らない点があるから、そっちにでも行ってみようかなって思ってるんだ。
じゃ、また後でね。
[笑い、トビーが去るのを途中まで見送って、庭園の出口へと駆けていった]
/*
どうよ、この寝落ちっぷり。
眠いから、後1、2発言で落ちようかなって少し思ってたんだけど。
それすら待てなかったのか、あたしの眠気。
[支える柱を滑り降りることが出来たら、どれだけ気持ちがいいだろう、と誘惑に駆られもしたが]
生身の部分がもたなそうだし。
こゆときホログラムとかいいよねー。
AIとかにとってはそれが当然なんだろうけど。
[下に辿り着くと、一瞬だけステラの方を振り返り]
ステラは、あたしのスピードにはついてこれる、よね?
つっても、精々無人走行車だとか、それくらいだけど。
[刃を出して、滑り出す。南部の方へと向かった]
― 電脳世界<Utopia>/Bahamut 消失座標 ―
<<< ピロリロリロリロ リン リロリロリロ♪ >>>
<<< リロリロリロ リロリロロ♪ >>>
[子供向けの軽妙な音楽が、荒寥としたその場所に不似合いに響いている。男が訪れた領域は、争いの記憶を刻むように荒れ果てていた。
無数に散ったクラスタ片。領域はところどころ虫食いとなって断片化されている。ヘッダが破損し、割り当てられた役割を果たすことができなくなったデータは、質量はそのままに大きな残骸となって山を築いていた。
そこには、首が切断された竜の巨躯が横たわっていた。]
[男はミュージックロールを交換する。音楽が変わった。]
<<< ディ〜 リ〜 リリリラリリ〜 >>>
<<< リリリラリラ〜ラ〜 リリリ ラリリ〜 >>>
[フォーレの『夢のあとに』をアレンジしたものなのだろうか。もの悲しさの漂う旋律が響いた。
竜の亡骸から巨大な影がゆらりと立ちのぼる。それはほっそりとした女性のシルエットへと変じた。メロディに乗って、ゆっくりとストリートオルガンへと近づいてくる。
男はノズルの先を影に差し向けた。
つるつると影は機械の中へと吸い込まれていった。]
これはこれは――
[男は嬉しそうに喉を鳴らす。
硝子の球体の中に上澄みとなって浮かんだ光は、眠りに落ちていた者たちから集めたものよりずっと多かった。光の中に、蒼い絢めきが混じっている。
双頭の老婆は手を翳す。差し出された手は光を吸い寄せる刹那に微光を放つ。その一瞬、透けた肌は赤味を帯び、行き交う血の流れが仄見えた。
ほう――と双頭の老婆は息をつく。]
「これで人心地ついたよ。」
「――ようやくまともに動けるようになったね。」
[男は安堵したように、頷いた。]
「けれど、まだまだ足りないねえ……」
「――ねえさまのようになるどころか、これじゃあ次の公演にだって間に合わない。」
[男は眉間に皺をよせる。
審問所に倒れていた男のところを巡り、ここへ来るまで幾人の影から満足のいくエレメントを抽出できただろうか。]
「――Alchemistと呼ばれる人物を知りませんか?」
[セシリアの声が不意に甦る。
伝説的な人物だけどね――
ヴィンセントはその時、首を振った。――否、と。
“その名”は、ヴィンセントにとっても遠く感じられる名だった。AIの制作に関わる者の中には、その名が噂のように囁かれることがないではない。だがそれは、古代史の人物と同じように神話か史実か曖昧な存在のように感じられていた。
少女がなにかを知っているのか。あるいは教団が、不可侵領域とされる世界の謎に関わりがあるのか――。それらは知っていたとしても容易に明らかにされることではないだろうとその時は問わずにいた。
いずれ“その名”の真実と巡り会うことがあるのだろうか。
この神秘の解明の道行の先にて――]
いいだろう。探すとしよう。
心あたりはなくもない――
[鍵は蒼き光を裡に秘めた者の中にきっとある。男は向かうべき先を定めた。
Underで興行が行われているんだ。見に来る者などほとんどいないけれど。――男はショーについて少女にそう語った。彼女はアンダーを訪れることがあるのだろうかと思いながら。
もしそうだったなら……。
数年前、Underを襲った異変。ウイルスを主原因とする事件として、真っ先にその出来事を意識せずにはいられなかった。
トビーとメイは、Underのゲームに興じることはないと語っていたことを思い出す。男が万華鏡を覗いて候補としたのは、それ以外の人物だった。
纏った三者の姿は闇の固まりへと変じる。ストリートオルガンの音色は小さくなってゆき、無数の羽ばたきに掻き消されるようにそこから消えた――**]
藪医者 ビンセントは、修道女 ステラ を投票先に選びました。
[支える柱を滑り降りることが出来たら、どれだけ気持ちがいいだろう、と誘惑に駆られもしたが]
生身の部分がもたなそうだし。
こゆときホログラムとかいいよねー。
AIとかにとってはそれが当然なんだろうけど。
[下に辿り着くと、一瞬だけステラの方を振り返り]
ホログラムって速さも関係ない、よね?
さってと。まずはここかな。
[南部区画に映る点。ずっと、動いてないものだった。記録画像の方にマーキングして、そこを目指し、*地を蹴る*]
―― 現実世界<Mundane>/中央部・上空 ――
[フェニックスの背に跨り、黒は肩口に空いた亀裂を撫でる]
[噛み千切られた漆黒のテクスチャが滑らかさを取り戻した]
モウ少シダナ。
片腕デハ、指揮者(コンダクター)ノ相手ハ厳シソウダ。
[トビーが犯人か否かは黒には判らない/未判断]
[だが犯人であるなら/贄を捧げるならいずれ接触が来るだろう]
[回復を優先する今、*情報を求め動く*]
―― 現実世界/西部〜南部へ向けて ――
[風を切って疾走する/飛ぶような メイの側へ、影のようにぴたりとついてホログラムは動く。
どれほどメイが速度を上げようとも、彼女の髪が靡くようにはホログラムの衣服は靡かない。]
……はい。
BODYを所持しない私のような存在にとって移動とは、この街の各所へ偏在するプロジェクタへ代わる代わるアクセスしていくことであるため
基本的には速度は無関係です。
メイはこういったタイプのAIをご覧になったことはありませんか?
[やがて、行き先を定めたらしいメイを呼び止めるように、しかし行動へは従いながら]
≪メイ。≫
≪A.Hackmanという人物について何かご存知ですか。
A.Hackmanは、コンダクターに敵意を持っているそうですが。何を根拠としてコンダクターが現状を齎す犯人であると判断したのでしょうか。≫
[するすると、音も無く移動を*続ける。*]
牧童 トビーは、修道女 ステラ を投票先に選びました。
[しばらく経過して後、Kotに、]
バックアップを持たない人間が永遠に失われる…
Kotさん、私のMasterがまさにそうです。
貴方の身近にも、そう言った特殊な方が?
[Masterと発音する時、セシリアの声音に単なる教団AIには有り得ない苦痛がにじんだ。だが、浮かべた完璧な笑みは崩れぬまま。]
いいえ、違いますね。
死にたくないと言う事は貴方自身が──。
Kotさん、貴方は一体……
[目の前の少女は、信者でもなく、かと言ってアンドリュー・マーシュのような資産家に時々居るような偏狂ともいえる独自価値観を持った人物にも*見えなかった*。]
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