医療施設から占領するとは、人類めなかなかやりおるわ……。[ゴクリ、と生唾を飲んで口元に手の甲を当てる。触手には不要だが、人類の研究に余念のないエリートは、ごく自然にこの仕草をやってのける。 一度外から窓越しに中を窺ってみると、触手養護教諭ユリアを人質に立て篭もる鰹節男を視認できた。]――アレは――識りたくない。きっと人類ではないからして、美酒に酔いしれるようなあの感覚は味わえまい。[戸口万寿次郎は触手にまで人外認定されていた。]