――な、に!?
[掛け声が耳に届くより先、膨れ上がる気配に反射的に身体が動いていた。殺意を越える鬱憤を孕んだ一撃を、微動だにせず腕で止める。そう、それは腕に見えてはいるが、構成しているのは人間の細胞とは根本的に異なるもの。
だが、斬られたからには何かは切れていなければ、不審がられてしまう。廊下だった壁が、床が、粉砕されるのを尻目に、エリート触手は敢えてそこまで気が払えるからこそ、エリート足り得るのだ。
結果――青年の身を包んでいた服が、千々に破れはらはらと舞い落ちた。一糸纏わぬ姿が衆目に露されようとも、表情は些かも揺らがず、泰然自若と正にエリートの風格を漂わせる。構成物は異なれど、適度な筋肉がつき均整の取れた肢体は、いっそ羨望の溜息を誘うほど。]
この程度の奇襲で仕留められると思ったか。
――片腹痛いわ。