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〔リック。本当に君は無茶をする……。そんなところまでギルバートにそっくりだね。〕
[小さな『人形』が、リックの肩に乗る。]
ナサニエルさん、オレの父さんのこと、知ってるの?前にもそんなこと言ってたけど……ナサニエルさんは、父さんと母さんと、仲間だったの?
[ナサニエルは、曖昧に微笑んだ。]
[ナサニエルは、そっとリックの頬に触れた。]
〔リック、安心するんだ。ウェンディは結界の中で、誰にも酷いことはされていないよ。〕
え……?ホント……?
〔いろいろ聞かれることはあるけれど、誰もウェンディを殺そうだなんてしていない。だから大丈夫。それに、万が一ウェンディに危害が加えられそうになったら、俺が彼女を守るから平気だよ。〕
………うん。
〔さあ、リック。君は今できるだけのことをやってごらん。最後まで…頑張れ。〕
[そう言って微笑むと、ナサニエルは再びリックのエナジーと同化した。]
うん!………あっ………
[リックの中に、再びナサニエルのエナジーが満ちてゆく。その感触に、リックは力強く頷いた。]
―医務室―
[ギルバートは、彼の妻――キャロル・エインズワースを連れて医務室に戻ってきた。]
『まあ、ここ数日妙な気配ばっかしていたが……な。まさかあの結界に干渉するヤツが現れたとは。』
『そうね……まったく。困ったものだわ……。こんな突然に結界の力を解放されたら、ナサニエルは随分困ったんじゃないかしら……』
[キャロルはふぅと溜息をついた。]
『ああ……。しかもナサニエルの声を聞いてみれば、リックだのウェンディだのって、ウチの子ども達の名前が聞こえてくるしなぁ……』
『ねぇ、ギルバート。あの子達、だいぶ無理してるみたいよ…。リックはナサニエルにだいぶ守ってもらったみたいだし、ウェンディの声はここ数時間で聞こえなくなってきたし……』
『ああ……』
『ナサニエルの声を聞く限り、彼の結界の中にウェンディの声と気配が同化したみたいね……。どうやらニンゲンとあの結界の中で一緒に居るみたいだけれど。』
『ニンゲンと……?』
[ギルバートは前髪をかき上げ、グシャグシャと弄る。]
『そういや、ナサニエルの気配がデカくなるのに合わせて、リックとウェンディが妙に殺気立って来たというか……』
『ええ。ウェンディの魔法が時々暴発するような気配がしたわ。魔法制御は彼女の課題だけれど、それでも……今までとは違いすぎるの。』
『見てくれ、キャロル。ラッセルのこの傷……普通の傷じゃない。魔法力の掛かった糸かワイヤーで刻まれた裂傷だ。ラッセルも随分無茶して飛び込んだみたいだが……この武器はそうそうあるモンじゃあない。』
『もしかして……』
『ローラーストリング……俺がリックのために作った武器だ。間違いない。』
[ギルバートは両腕を組んで壁にもたれた。]
『この騒動の主役は、ウチの子ども達って考えるのが自然だろ。ったく…子どもの浅知恵もいいところだ。シャレになりもしない……。』
『そうね…。ねぇ、ギルバート。私はラッセル君の傷を治療したら、ナサニエルの結界の前に行って来るわ。彼に結界を開けてもらえるように、交渉してみる。』
『ああ……頼んだ、キャロル。』
―医務室―
[校医による応急処置が施された頃、ギルバートは彼の妻を連れて医務室に戻ってきた。]
『この子……あの「鳳凰」部隊のラッセル君じゃない……』
『ああ。訓練所の前で倒れてたんだ…。腕の筋肉が細いワイヤー状のものでズタズタに裂かれていたんだ。』
『ワイヤー状…ズタズタに…?』
『ああ……。そういうことで間違いないだろうな。』
[キャロルはラッセルが眠るベッドサイドの椅子に座り、ラッセルの額に浮かぶ汗をそっと拭いた。]
[キャロルはラッセルの腕の上にそっと手を翳す。暖かい光が彼女の手から降り注ぎ、傷口を静かに癒してゆく。]
『……意外と手強いわね、この傷……』
『そうか?いつもどおり完璧に治せてるくせに。』
[ギルバートの言葉にクスクスと笑いながら、キャロルはラッセルの腕に包帯を巻いている。]
『ま、しかし……それだけ本気で戦ってたんだろうなぁ……アイツも。』
『本気、って……。なんであの子がラッセル君と戦う必要があるのよ?学園の生徒同士だし、ラッセル君は何年も上……普通に戦ったら勝てるはずがないじゃない……』
『ああ。問題はそこだ。それが俺にもサッパリ分からないんだよなぁ……』
[ギルバートとキャロルは、眠っているラッセルを見つめながら*話し合っている*]
[リックの体が微かに動いたのを感じた。
そろそろ動ける状態になるのだろうか。
見たところ糸巻きに糸は無い、
だが人狼ならば素手でもかなりの戦闘能力を持っているだろう]
…これでリックを穴に落とせば内側から扉は開くはずだ。
だけど…その後2人はどうなるんだろう。
人を傷つける気が無いっていうのが本当なら
今までみたいに一緒に暮らせないかな。
甘い考えなのかな、人間と人狼は共存できないのかな。
[昔聞いた人と人狼の恋物語は全部悲劇だった。
しかし、一つだけ、
人と人狼の友情が続いたというおとぎ話を知ってはいる。
史実とは思えない神話のような物語ではあるが]
[リックの手がピクリと動く。足が微かに動く。鼻からは息が聞こえる。]
う……………
[まるで糸を手繰り寄せるように、指をピクピクと動かしている。]
じんろ……う………
たお……さ…なきゃ……
[穴の位置まであと3歩、2歩、1歩…
穴の上にリックを捧げ持ち…]
ちょっと怖いかも知れないけど我慢しろよ。
[そう声をかけて手を離した]
ローラーストリング、射出ッ!!
[グレンが自分の身から手を離したのを確認すると、リックは勢いよく天井に向かって持ち上げられてゆく。]
……やっと落としてくれたね、グレンさん。待ちくたびれたよ。
[リックの身体が、みるみるうちに白い色で包まれてゆく。リックは宣告から、ありったけの糸をん鎧のように自分の身体に巻き付けていたのだ。]
さっきまで人狼だと思ってたラッセル兄ちゃんを落とすための策だったけど……ちょうどいいや。グレンさん、あなたが人狼だったんだね……。
[糸を柱に射出し、自分は訓練所の床へと着地する。滑車の要領で、天井の梁に絡めておいた糸がグレンの身体を穴の真上へと導き、彼の身体を吊り下げた。]
…俺も土壇場の抵抗は覚悟してたさ。
むしろ自分がリックの立場なら
最後のその瞬間こそ隙が出来ると考えて
じっと待つに違いないとすら思っていたよ。
本当にその通りだったわけだけど…
既に糸を絡み付けられてたのか…
[宙ぶらりんの状態でリックを見つめる]
卑怯だなんて言わないでね、グレンさん。俺の専門は隠密行動だから。
さっき糸を両肩に引っ掛けたの、気付かなかった?
[右手で糸を手繰り寄せ、息を吐く。]
……この糸を解除すれば、あとはそのままグレンさんを落とせるってコトだよ。
つまり将棋で言うところの王手ってやつか。
なら、そうしてみるといい。
本当に詰んでるのかどうか、な。
[自分でも奇妙に思うほど落ち着いていた。
怖いとも思わなかった]
[ゆっくりと意識が戻ってくる。
それまでたゆたう水の中に沈み込んでいた体が水面上に押し上げられるような感覚に、ラッセルは力なく目蓋を開いた]
こ、ここ、は……?
[知らない天井、そして知らない匂いに、ゆっくりと首を巡らせると、そこには顔馴染みで、保険委員のセシリアが擁護の先生の代わりに、簡単な書類をつけていた]
「あ、やっと起きた。大丈夫? どこか痛むところとか、感覚のない部分とか、ある?」
[そう言われて、ラッセルは何故ここにいるのか何となく悟る。
左腕以外は、何とか正常だ。だが……]
左腕、動かないな。
「……キャロルさんの話だと、神経が断裂している箇所もいくつあったって。いくら治療魔法とはいえ、そこまでボロボロのものをすぐに復旧はできないって……」
そうか。
[それ以上何も言わず、大きくため息をついた]
[ため息をつき終えると、ラッセルは痛む体を無理に起こした。
激痛が走り、肺から酸素が搾り出され、額に脂汗が滲む。それでも彼は起きることを止めなかった]
「ちょ……! ラッセルくん! 今は無理しちゃ……」
いや、今だから無理しなくちゃいけない……んだ。グレンとリックを……。
[まだどちらが人狼なのかはわからない。だが、ウェンディの様子から、何か事情はある。それなら、一度話をしてみたい。それから全てを決めてみたいと、思った]
セシリア、すまないが、俺を訓練場まで連れてってくれ
[じっと真剣な眼差しで見つめる彼に、しばしの間相対していたが、おもむろに嘆息すると、ラッセルに肩を貸した]
「今回だけ、だからね」
感謝する。
このままだと腕が壊死しちゃうかな……。
いくら人狼っていっても、相手はオレと仲良くしてくれた人だし……
[両手で印を結ぶ。]
ローラーストリング、解除。
[白い糸が、グレンの身体から離れた。]
[空中に留め置かれる感覚が喪失し、
落下が始まった事に気付くや否や
グレンはその超人的に鍛え上げられた腹筋と背筋を使い
全くの空中で宙返りを打った。
中空でわずかに移動することに成功する。
そのまま穴の縁に激突し、
お世辞にもかっこいいとは言い難い様子でなんとか床に立ち上がる。
そして天井のリックを見上げる事も無く
壁に立掛けられている木槍へと走った]
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