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[燕は赤鬼に緋散らす]
[鋭き爪は青鬼深く突き刺す]
[身動がず] [瞬かず] [魅入る]
[赤と黒] [混じり伝い] [零れ]
[青鬼の胸に爪] [赤鬼の腕に墨]
[互いに笑んでまた酒を呑もうと謂う]
[深く、深く、体貫く赤鬼の腕]
は…ぜよ。
[口から毀れる墨と共に紡がれる言の葉。
赤の腕に刻まれた墨は内から肌を喰い破り
――けれども浅く、魂どころか腕を奪う力もなく
ただ皮膚裂き血飛沫上げるだけ]
あぁ――
届かぬ…か。
[墨の血濡れて赤の血濡れて、
墨吐き、藍の目光失せて。
それでもからり空仰ぎ笑う顔の清清しさよ]
[ぐちゃ、と狼に噛み付かれた傷が広がり
遥月の胸元に血の染みをつくる。
じわり じわり...
染みは徐々に大きくなり。
それにつれて、抵抗も徐々に薄れ
木の幹を背に凭れ。
憎しみの炎を燃やしていた瞳も虚ろになりかける]
………―――…―――。
[苦しげに眉を寄せたりと、抗う動きはあるものの
力なく、それに及ばず。]
[万次郎の唇を己の舌で掻き分け、彼の舌を無理やり絡ませ、その唾液を貪る。]
……っ、ふ……ふふ……っ……
[長い、長い、口付け。
唇の両端からは誰のものかと区別の付かぬ唾液が溢れ出し、だらりと零れ落ちる。
黒い闇の霧と、唇から肌から染みる生暖かい水蒸気を発し――]
……嗚呼、うぶな御方……
[遥月は半開きになった視線で万次郎を見やり、己の掌を万次郎の胸元にそっと這わせる。]
……想像どおりの、粗い感触……逞しくて、絞まった肌……。太陽を浴びぬ者なら、こうはなりますまい……
[その掌を、更に下へと。]
[羽を休める揚羽蝶]
[一撫でしてから右手を抜いて]
[泉をあがれば水乾かして]
[カラリコロリ][下駄鳴らし]
[月を見上げて*風と歩む*]
[青鬼に深く刺さる]
[赤鬼の腕に緋が迸る]
[空仰ぎからり笑う青鬼]
[藍の双眸光失うも]
[其の面は清清しく]
[晴れ渡る空の様か]
[互い違いの双眸]
[瞬き] [すぃと眇め]
[くるうり] [番傘回す]
[ぼたぼたと緋色が黒と交わり落ちる。
爆ぜた残滓が煤たなびかせ
光を喪う藍の眼を
金の瞳を細めて見つめ]
―――また会おうさあ。相棒。
[ざぐり、と腕を引き抜いた。
ずたずたとなった其の腕の
痛みなど感じぬようで]
愉しかったぜえ。
[身体を支えた其のままに
笑みを浮かべて囁いた]
ふ、……!!
[すでに月のペース。黒い靄も月を包み込む事しか出来ず
抗う事には及ばない]
な、ッなにを――――!!!
[叫んだのが最期、月のなすがまま黒い靄は*消え失せて*]
[赤鬼の言葉届くかうすら笑んで]
[するり、墨濡れの手は、何かを描きかけて]
[抜かれた腕、噴き上がる墨色、赤を汚して。
舞う様は霞のようか、描きかけた手はそのまま落ちて。
赤鬼に凭れそれきり動くことは無い。
燕はついと孤を描き、
月光に はらはら ひらひらり
*崩れて解けた煤の花*]
[赤鬼の言の葉] [青鬼薄ら笑み]
[墨濡れの手] [描き掛けに落ちて]
[月夜に舞う燕] [煤の華と成り散る]
[地に降り立ち] [くるうり] [番傘回し]
[赤と黒に濡れた赤鬼] [見詰め] [ニィと笑み]
お疲れさンだヨゥ。
[血の気を失った故か否か、万次郎の身体はズルリと崩れ落ちた。]
………ふふ。
嗚呼……いい眺め。
[万次郎の袴を結ぶ紐に手を掛け、その中に白い指を滑り込ませる。]
万次郎様、貴方様が女人と添い寝た記憶については問いませぬが……稚児遊びは初めてでしょう?ならばわたくしの為すがままに……。男の手管で喰い尽くされるのも、悪くないものやもしれませぬ……
[指先は万次郎の中に入り込み、その肉棒を取り出した。紅の唇、その奥から出る舌で舐め回す。]
……呼吸が、荒い……
嗚呼、万次郎様……わたくしが憎たらしいと言わんばかりのその瞳……
わたくしが男だから?
わたくしが裏切り者だから?
……其の目をしながら、この態は……ふふっ……
[指先に絡む液体を、舌で舐め、転がす。]
嗚呼、喰児の勝ちさァ。
おめでとうとでも謂おうかィ。
[しゃなりしゃなり] [赤鬼へと歩み寄り] [小首傾げ]
茄子の兄さんの目玉ひとつ貰って好いかえ?
なンなら甘露な魂もお呉れかえ?
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