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[通いなれた修練場をぐるりと見回す。彼が何度も踏みしめた土も、拳を打ちつけた木も、そのへこみも。全てが思い出だ。
だから、ウェンディを含めて全員が敵であろうとも、ここでなら全てがうまくいくと信じている]
まず、最初はリックか。多分、彼はウェンディを守るために俺に向かってくるはずだ。
そうなると、あの糸はやっかいだ。エナジーでコーティングもされているだろうから、引き千切るのは難しい……いや、できないか?
かといってクレアは重過ぎるし、俺もここしばらく剣は使ってないから、複数相手は難しいな。
だとすると、常に全開放状態で短時間で決めるしかないか。
後はサックスで、人だけが頭痛を訴える特殊な可聴域の音波を発して、あのときの違和感を払拭できれば勝ちか。少なくとも、味方か敵か、どちらかかはわかる。
[心配そうにしていたリックには申し訳ないけれど。
一方的とはいえ、約束は約束。
リックを撒いて、一人で学園に向かう]
[恐怖に足は竦んで、動くことを拒もうとするが。
それでも真っ直ぐに校舎裏へと歩みを進め]
……ラッセルお兄ちゃん。
[サックスとクレアを両の手に持つラッセルに、おそるおそる声をかけた]
[草木がざわめく音が普段と違う踏みしめられた苦痛を叫ぶ。
その音で、彼女が来たことを把握した]
やぁ、ウェンディ、すまないな。こんなところまで呼び出して。ただ、さすがに全員居る場所で話せる内容じゃなかった。
そこだけは理解してほしい
[瞳には、昨日とは違うが、それでも負の感情が渦巻いている]
[そっとそっと、ラッセルの方へ歩み寄る。
少しだけ距離を開けて立ち止まり]
……うん、大丈夫…
[『全員居る場所で話せる内容じゃない』
それはどう考えたって良い話では無いということ。
ラッセルの瞳に宿る負の感情を見ることはできず。
俯きがちながらも頷いた]
[距離をとりつつも、冷静に理解はしてくれたのだろう。うなづいてくれたことに少しだけほっとする。
やはり長い間過ごした村の仲間はできれば疑いたくないからだ]
さて、それじゃ、少し答えて欲しいんだが……。
[話しながら、近くの木にクレアを立てかける]
君は何者だい?
それにしても……これだけ考えてもあんまり材料にはならないものなのだな〜〜。
ま、いっか。気分転換にちょっと穴でも……訓練場はやっぱいやだな……地下の扉の方いくか……
人狼が人命も取らない甘い理由。やっぱ浮かびやすいのは、守護者の里を潰す。というのは名目で、単純にこの守護者の里を無傷で手に入れたい。ここから追い出したいって感じだしな。
普通に戦えば、守護者、狼、そしてこの里自体にも被害が出る。そのどれか、もしくは複数を嫌ったか。
…ま、仮説だけど、めんどうながらも俺が動いてみても面白そうだ、というぐらいには感じるしな。
[木に立てかけられたクレアを見る。
クレアの本来の所持者を思い出し、ふるりと首を振った]
[投げられた問いに、困惑の視線がラッセルに向かう]
…私はウェンディだよ?
[そういう話ではない。
それは薄々、少女もわかってはいたのだけど]
[予想通りの回答に、ふぅと小さく息をつく。
それも彼女自身もおそらく、違うことを理解したうえで答えたのだろう。
だが、今はそんな言葉遊びに付き合っている時間はない。瞳の色を変えずに続ける]
……君はリックから何も聞いてないのか?
特に俺の力のことを。
[そう言ってサックスを持ち上げた]
[幾つか話は聞いていた。
けれど、サックスと彼の力とが結び付かない。
少女が知っているのは、唯一]
…音の周波で、攻撃?
[知っているのはそれだけ。
ラッセルが人狼と人間を見分けることができるということは…少なくとも少女の記憶にはなかった]
―図書館―
うー…………………
[難しそうな本の上に、ぼすっと頭を乗せた。]
肝心の「どうやって人狼を見つけるか」が分からない……。占い師だの霊能者だの何だのっていろいろな人がいるっていう話だけど、ここの里にいるのは守護者と人狼だけで、なーんにもいない……
[リックの思考はぐるぐるぐるぐる…。しばらくして、ガバッと頭を上げた。]
だーーっ。もう!!
つまり皆の行動から推測しろってことかっ!
ん……ついたか
[地下を下りて、不思議な紋様をした頑丈そうな扉は、前きた時と変わらぬ姿でそこにあった。]
この奥にいんだな〜。マンジローやメイも……
[和国から来て、いつまでたっても自分の事をハーベイと呼んでいた、図体のわりには臆病で、調子がよいが決して不快だとは思わなかった男
人狼に故郷を滅ぼされたといっていたが、その影もあまり見せず、図書館で寝ていたことを咎めもせず、自分がしたことを精一杯謝ったりしていた女。]
…んーー…ま、できるんだったら助けたい気もする…かな…
さて、ここで問題だ。
昨日、俺がマンジローと君に向かってサックスを吹いた。吹いた曲は人にのみ反応するものだ。
マンジローは『人』だった。
でも、君は……。
ここまでいったらわかるだろう?
[そう言いながら、胸の内ポケットから一個のペンダントを取り出した]
学園長直属裏部隊「鳳凰」
その中で、人狼と人を区別することができる「選定者」。それが俺の正体だ。
[そういうと、ラッセルはサックスを口に咥えた]
……これから、人にだけ効果のある曲を吹く。結果、廃人になるかもしれない。
だが、「選定者」として、疑いのある者を放置することは許されない
[メイを助けるために。
ある意味、彼は今は修羅なのかもしれない。だが、そこまで大切な人と心から思える人に出会えた彼は幸せなのか。
ただ、少なくとも、幼き彼女へ猶予を与える余裕など微塵も存在していなかった]
[問題は、至極簡単だった。
『でも、君は……』その続きは少女自身のことだから]
[回答は口にせず、胸ポケットから取り出されるペンダントを見。
続いた言葉に目を見開いた]
…学園長直属裏部隊…
[知らなかった。気付きもしなかった。
――気付ける筈もない。『裏』ならば]
[サックスを構えるラッセルを見て、少女は静かに頭を垂れる。
『人間にだけ効果のある曲』ならば。
――【少女には意味を成さない】と知っているから]
[閲覧していた(?)本を元に戻し、リックは図書館を出た。]
だって、人狼はまだいるってことだよな……?少なくとも、メイ姉ちゃんが人狼にさらわれたっていうことは、まだ人狼が1人以上いるわけだ……。
マンジローさんはホントに人間なのかな?人狼なのかな?ウェンディが突き落としたから、真偽が分からない……。オレは全然「強さ」を見せないマンジローさんが怪しそうな気持ちもあったけど…。人狼だから、エナジーを隠すためにわざと能力を見せなかったのかなって……。
グレンさんは、力バカ……いやいや!突撃命の肉体派だから、なんか「開かずの間」を操っている「人狼」のイメージから遠い感じがしてる…。もしそれがカモフラージュだとしたら、そんなこと無いんだろうけど…。
ハーヴェイさんは、周りの人と距離を取ってる感じがなぁ……わかんないや。魔法能力が強いから、もし人狼だったとしても、あの開かずの間を操るのはワケない気がする。……けれど、そうならあまりにも分かりやす過ぎる気が。
この中ははたしてどうなっているのか……、ま、生きているみたいだから、別に問題ないのだろうけど
……そういえば俺は試していなかったものな…力業過ぎるが、誰も居ないし試してみるか……何にするかな。槍でいいか…
[と、念ずると、右手にはめた指輪が薄く光、次の瞬間には青白い穂先に黒い柄の槍が現れる。いつのまにか虚ろいだ左目はどこを見ているのかわからない、が光を称える右目は扉の中央を見ていた、そして体勢を整え、振りかぶり、扉につくと同時に念じた言葉を吐く]
『爆ぜろ』
[槍の穂先が扉の中央を突くと同時に鮮烈な光を放ち、爆発する。それに右目を細める。何も映しださない左目は開いたままだが……そして……煙が晴れ]
駄目か…
[くたびれ損じゃん。と呟く]
[さらに考える。]
ラッセル兄ちゃんは、メイ姉ちゃんが人狼にさらわれてから、なんか恐ろしいオーラを出しまくりだ…。でもラッセル兄ちゃんが人狼だったら、あの言葉は全部演技なのかな?メイ姉ちゃんをさらったのは、自分から容疑を避けるため?まさかそんなことは…。
ウェンディは……
生まれた時からずっと一緒だ。人狼だって思うような仕草は全く見えない……。
いや……でも、人狼はすっかり人間に変身できるって……。まさか、そんな……。
[思いっきり頭を左右に振る。]
いやいやいや!そんなことないッ!
[それまで怯えていたように、ラッセルには感じていた彼女の気配が、変わった……気がした。
本当に山勘だった。
ただ、その場に居てはいけないと、ただひたすら叫んだ本能に引かれて、地面を右に転がった]
[少女が待っていても音は少女を包まなかった。
閉じていた目蓋を開き、逃げるように転がるラッセルを見る]
……ごめんなさい。
[呟くのはそれだけで、また目蓋を下ろす。
少女はそこから動こうとする気配を見せない]
………はっ!
そういえば、ラッセル兄ちゃんがウェンディを呼び出してたんだっけ!!なんでオレこんな所でのんびり考え事してんだよッ!
[※ウェンディにすっかり巻かれたからです。]
早く行かなくちゃ!
ウェンディが危ないかもしれないじゃん!!
[廊下を猛スピードで駆け抜け、ラッセルが使う修練所へと向かった。]
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