情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
[扉の内側に銀の鎖が巻き付けてあった。]
[ただの鎖では無い、聖水で清められ、誰かが神への祈りを捧げた呪物の力を持った聖銀で出来た細い鎖。]
────…ッ!
どこでこんな物を。
まさか、この村の神父が──?
[セシリアは畏れを感じた様にジリッと後ろに下がり、窓へ駆け寄った。格子を引く。──窓から逃げるしかない。
廊下から、異変を感じ取った兵士達の足音が近付いて来る。
窓の外にも、何時の間にか複数の松明が尋問室の窓を目掛けて近付いて来ている。先刻のアーヴァインの悲鳴の所為だ。
床の上に転がった瀕死のアーヴァインは、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。]
[蒼白になるセシリア。
格子を破壊して、窓の外へ飛び出すものの──。
アーヴァインを瀕死の重傷に至らしめ、兵士十数名に重軽傷を負わせた後、セシリアは*捕獲される事になる*。]
Dignare, Domine, die isto sine peccato nos custodire.
Miserere nostri, Domine, miserere nostri.
Fiat misericordia tua, Domine, super nos, quemadmodum speravimus in te.
In te, Domine, speravi: non confundar in aeternum.
主よ、今日我等を守りて、罪を犯さざらしめ給え。
われらを憐れみ給え。主よ、われらを憐れみ給え。
主よ、御身に依り頼みし我等に御憐れみをたれ給え。
主よ、我御身に依り頼みたり。我が望みはとこしえに空しからまじ。
[長い朝課(真夜中の祈り)の後には、賛課が途切れることなく続く。]
[聖務が終わる前に、自警団詰め所から急を知らせる使者が訪れることを、彼はまだ*知らない。*]
──2F 尋問室──
2階の一室であろう場所から低い悲鳴を聞いた兵士達は「何事だ!」と異変を察知し、3人4人と拷問室へ駆け出した。
部屋の入口、重い扉には奇妙な鍵。
「おい、なんだこれ!?」
「アーヴァインさんが何かしたんじゃ…アーヴァインさん!!」
「アーヴァインさんどうしたんですか!」
「くっ。じゃなければいいが…!」
かなり入念に結んであるからか、簡単には外れない。
ドンドンドンドン、と扉が揺れる。この扉は力押しではなかなか破れない。
当たり前だ。脱走者を出してはいけないのだから。 兵士達に焦りの色が見える。
──2F 詰め所、庭先──
彼女にとって格子を壊す事自体は容易い。だが問題はこの先だ。時間もない。 普段から取り乱す事はさほどないが、明らかに冷静さを欠いている。
鉄格子を突き破り、軽快な足取りでふわり地に足をつけ、夜目を利かせ、気配を殺して詰め所の壁へ走り寄る。多少の勝算が生まれてきた。
だが好事魔多し。人間の目は欺ききれたかもしれなかったが、敵は人間だけではなかった。 兵士達が訓練していた──犬達に嗅ぎつかれてしまったからだ。 たとえ本来のモノを察知されていなくとも、少なくとも不審者のそしりは免れない。
門番達を始め、数名の兵士に瞬く間に囲まれてしまう。
月の光を受け、セシリアの瞳が人間の知りえる範疇を超えた金色に輝く。
「なんだ!?あの目は?」
「あれが本当にセシリアなのか!?」
「まさか、そんな!」
「だがみすみす逃す訳には駄目だ!アーヴァインさんに何かあったらしい。
俺達だけでも、奴を捕まえるんだ!」
「おとなしくしろ!さもないと…!」
武器を触りながら血気に逸る兵士達。逆に両手をおろし周囲の兵士をねめつけていくセシリア。 お互いに覚悟を決めたのか。包み込んで押しつぶすのか。または強行突破か。
激しい応酬となった。あっという間に数名の兵士がのされ、鋭い爪や腕力の餌食となる。 そんな莫迦な。武装した大の男達がこの、少女の姿をした者1人に遅れを取るとは。
さながら合戦図の如く、セシリアは暴れ、兵士達は切りかかった。 武器を受け流し、取り、投げ、掴み、脇腹に大きな爪を入れる。重傷を負い、身動きの取れない兵士が次々と庭に増えていく。
それでも幾人もの兵士が武器を手に何度も飛びかかり、セシリアは再び身構えた。
だが──突如セシリアの力が、途切れた。
拷問室から降りて来た兵士の一人が、両手に細い鎖を持ち、セシリアの背後から襲いかかり、彼女の首を絞めたのだ。それは2階の扉に結ばれていた、聖なる銀の鎖。
しまった、とセシリアはたまらず両手で振り解きにかかったが、あの力が出ない。刹那の隙が生まれた。
兵士達はこの瞬間を見逃さなかった。雪崩のように彼女へ覆いかぶさり、そして組み伏せられたのだ。
セシリア、と呼ばれる人狼の敗北の瞬間だった。
──翌日、詰め所──
翌日、村の村長はある重要報告を受けた。それは2つ。
自警団長アーヴァインが瀕死の重傷を負った事。
そしてそれは──人狼の手によるものであり、さらにその人狼を捕縛する事が出来た事。
村長はアーヴァインを早速見舞ったが、非常に思わしくないものであった。
意識があったかは最後まではっきり分からなかったが、どことなく満足げな印象を受けたのだった。そこに彼の人狼への執念を感じるのだった。
続けて少女の様子を見に行った。傷だらけの兵士達であったが、快く村長を通してくれる。
詰め所の最も最奥にある牢獄に彼女は──セシリアは無造作に転がっていた。
明らかにそれは昨夜までとは全く待遇の違うものだった。本来の姿を知った以上、人としての扱いをする必要がなくなったからだ。
村長は思わず空唾を飲み込んだ。よもやこのような者にここまで村を荒らされるとは。 思わずこのまま胸を一突きにしたい衝動に駆られた。殺す事は容易だ。
だがそれでは味気なさすぎるし、折角の生け捕りなのを最大限に利用しない手はない。
努めて冷静に考えなければならない、と深く呼吸する。何よりアーヴァイン殿が生命を賭して手にした、人狼を屠る絶好の好機なのだから。
人狼は肉体能力に優れている。そして個体数は少ない。それを逆手にはとれまいか。 私自身が拷問を科して人狼の事や、他にどれだけ潜んでいるか等、吐き出させてもいい。だがそれだけでは手ぬるい。
彼は少女を見下ろし、しばし物思いに耽った。そしてやがてひとつの結論に達した。
「銀の──『檻』を庭に拵えるようにしてくれ。」
拷問も勿論だが、それこそを人狼への罠、挑発に使いたい。
本筋でもないが、村人達の息抜き、楽しみにもなるだろう。と村長は言ったのだった。
村長の命により、やがて詰め所の庭にひとつの檻が完成した。 聖職者の者たちの力を借り、四方を聖銀を混ぜた金属で出来た鉄格子。そして堅い天井と冷たい床。
ほぼ立方体の形をしており、一辺はおおよそ100インチ。頑丈な作りだ。獣を管理するのは勿論、見世物にも向いていると言える。
彼は衛兵数名に少女をこの檻へ入れるように命じた。
村長と兵士達数名がかりで、セシリアを檻へ移動させる。
少しでも気を抜くとアーヴァインが尋問した時同様、力を奮われるので作業は慎重だった。 大柄な兵士がそのまま少女を担ぎ上げ、他の衛兵は手首や足首から伸びる金属のリードを握る。
そして檻の中に入り、無造作に少女を下ろす。
「もっと丁寧に扱え」「人間じゃないからいいんだよ」と言葉が飛び交う。村長は腕を組んでギラリとした目つきで見守る。
四肢をひとつずつ、用意した聖銀の枷に繋ぎなおす。
少女の運搬を終えた頃には大量の汗が服を濡らしていた。労働によるもの、否、冷や汗が妥当か。だが手応えはあった。
これなら他の人狼を芋蔓、一網打尽にできる、と。
村長は檻から出て、あらためて少女の姿を見た。
天井から伸びる2つの長い手枷、床から長いもう2つの足枷が少女の四肢を掴んでいる。両手を噛む枷は地面まで届かず、少女は尻をつけ、座ることはできても、両手を持ち上げられている故、それ以上低い姿勢は出来ない形だ。
セシリアは現在意識があるのだろうか。だが遭えて今起こすこともあるまい。意識のある時にじっくりと感想を聞けばよいのだから。
彼は満足げに一度頷き、檻を後にした。
双子 ウェンディ が参加しました。
――自宅近く――
ねえおじさまおばさま。畑が使い物にならなくなってしまうのって、動物や洪水でもなく、もっと別のものって本当なの?
[ウェンディは近所の優しい壮年夫婦に尋ねた。]
[夫婦は優しくウェンディに語りかけ、諭した。それなりに説明はしてくれるが、肝心な所がどうもぼやけている印象を受けるのだ。]
やっぱり、何か隠してるんじゃないかな、って私、思う。
きっと大人だけが知っていていいもので私に気を遣ってくれてるからだと思うのだけど。
[困らせるのも困りものなので、ウェンディはそれ以上は聞かず、大人の事は大人に任せようと*決め込んだ*]
――数時間後、詰め所の正門付近――
村長は周辺の村人達を集め、演説を開いた。
威風堂々にも見えるが、彼なりの勝負の仕掛けどころでもあった。
みな、聞いてくれ。
これまで幾度と苦渋を飲まされ続けてきた輩だったが、遂にその1匹を捕獲する事が出来た。 おそらく国中を見回しても初めての事ではないか、と自負している。我々も多くの仲間が傷ついてしまったが…
この門を抜け、そのまま正面へ向かえば詰め所の建物に入るが、横手には今日造りあげた特別な檻がある。
そこに…そう、我々に百害をもたらす――「人狼」を捕らえてある。
一見、若い女性の姿をしているが、檻の中にいる者は彼女――セシリアではない。 残念だが本当の彼女は…既に天国への扉を開いているだろう。
この者こそが、我々に害をなす人狼そのものなのだ。
だが姿や声色に騙されてはいけない。少しでも気を抜くとパックリと大口を開けて狙われる。
そこでだ。君たちの知恵を借りたい。
これまでに襲われた家畜や作物、被害者の人数を考えれば、相手は一人ではない。おそらく何匹かはこの村の中に、あるいはまだ近くにいるに違いない。
私達はなんとしても見つけ、うち破らなければならない。この檻の中にいる者こそが、きっと手がかりになる。これは好機なのだ。
…この不浄なる魂を持つものに制裁を加えて欲しい。誰でもよい。方法も問わぬ。
おのおのが思い思いのやり方で積年の恨みを晴らして欲しい。
と同時にこの者を使い、他の人狼を探し抜いて欲しいのだ。
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新