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先に手を出したのは彼奴らじゃ――
しかしどうにも足場が悪いのぅ……妾が手でもひいてやろうか。
[差し出した手][薄い笑み]
[青司が出せば手をとって出さぬもほとりで手をつなぐ]
汝れの視る幻が如何なるものかはわからんゆえ――
転んで溶けでもせんように、此処でこうしてみててやる。
[数珠のある手で其の傷ついた手を掴み]
[右手はちゃぷり――泉につけて]
覚悟はいいかえ?
[煌く緋色は真っ直ぐに藍を見つめる]
………では、その血は。
[風に煽られ、前髪が遥月の片目を隠す。紅の視線でじっと見据えて、司棋を捕らえて放さぬように――]
水珠ごときで、そのような血は浴びますまい……
何処へ狩りにでも往かれましたか……?
成る程ネェ。
[番傘くるうり] [赤鬼の傍ら膝着き] [瓢箪煽り]
[約束賭けたと謂う] [ニィと笑み] [白い指零れた酒拭い]
嗚呼、そいつァ面白いネェ。
勝った方をアタシが喰らうンかィ。
茄子の兄さんの頭ァ残るかネェ。
眺めに往きたいが見物は門前払いされるかえ?
[眼を細める万次郎] [血の香と謂う] [瞬くに揺らめく蝶]
ちょいと仔猫を一匹ネェ。
童の心臓喰ろうたら、蝶の我慢が効かなくなってさァ。
[血の香に、藍の目弧を描き。
けれど差し出す白の手を取れば
藍は緩み、瞬いてから微かに俯き笑う]
[手を繋がれたまま泉のほとり
水の香。ゆらり。波紋に揺れる]
――よかろう。
[緋色見詰めて、時を待ちゆると瞼下ろす]
[自分に契りを交わしたい者はいなかったけれど、
自分をずっとそばにおいてくれるはずだった娘の面影を思い出す。
髪の色以外は今の自分とそっくり同じだった]
……いや、逆だ。あたしが山吹の姿を写しているだけだなぁ。
手を繋ぐのは、如何ほどぶりか。
漣ひとつ、どこかでざわり。
刹那を越えて生きて喰ろうて。
百鬼の姿となりて己は――幻に何を見る
/*
若し良ければメモで開那の兄さんは「境内から露天へ引き返す道中の物陰辺りで、地面には扇の軸と花弁が散り、着物は切り裂かれているので其れ以外はご自由に。」と教えてやってお呉れかえ?
[童の心臓、聞いた話。
仔猫の魂、それは初耳で]
……仔猫、とは。メイ……ではないな?
[きつく、睨めつけるがごと常葉を見据え
静かな動作で、酒の満ちた盃を地に置いた。
気配を察した双刀は
ちりちり
カタカタ
それはそれは愉しげにうたう、うたう]
……夜斗様は夜斗様。
貴方様と命を共にすれども、夜斗様「だけ」でそのような姿にはなりますまいて。
見え透いた嘘はお止め下さいな。本当のことを言いなさい!
貴方様は、本当はヒト……狩人なのでしょう!?
万次郎様の「目」が、司棋様を狩人だと告げました。万次郎様の言葉を鵜呑みにすることはできませぬが、しかし手掛かりにはなりましょう!
さあ……お答えなさい。
場合によっては………
[化粧の道具箱に掛けた風呂敷をそっと外し…]
司棋様……貴方を、喰らいます。
[毒紅の器を取り出した。]
[藍を見る目は穏やかに]
[自分もゆるりと瞼を伏せて]
[繋いだ手と手をきゅっと握れば]
[言葉を紡ぎ、目をあける]
妾の目を――奥まで覗け
[藍と視線が会えば同時に]
[緋色の奥は水のように透き通り]
[奥に波紋が拡がれば]
[魂は幻影にとらわれよう――]
なかなか面白いだろお?
青鬼赤鬼の本気が見れるぜえ。
[くつくつ笑いでからかうように]
手ぇさえ出さなきゃ
見ようと見られまいと俺ぁかまやしねぇさあ。
相棒はどう答えるかねえ。
ん、相棒の頭が必要かい?
そんならちぃと気をつけるとしようかねえ。
ああ、手加減しねぇように気をつけねえとなあ。
[芳しいのは血の香り。]
仔猫たああのちいせぇのの事かあ?
蝶か。
血ぃ吸ったら綺麗だろうなあ。
心の臓が効いたんなら結構なことさあ。
そういや琥珀のは何処いったあ?
なんだかんだで来てたろう。
[手をつき肩越し振り返り
眇めて見るのは夜の闇]
酒でも見繕ってる……にしちゃぁ遅ぇなあ。
食らう……やもしれませぬ。
[びゅお、とひとつ風が吹く。紅の器を司棋の顔目掛けて投げつけ、遥月は高く飛んだ。
月明りに照らされ黒く映る影は、司棋の背後を取らんとす。]
[見据える強き視線] [受け止める] [互い違いの双眸]
[うたう双刀] [ちらと見遣り] [酒煽り] [ニィと笑み]
他に猫ァ見かけてないヨゥ。
鬼ごっこが始まったから混ぜて貰ったのさァ。
[くつくつと] [赤鬼笑う] [見詰め浮かぶ] [三日月の笑み]
本気が見れると好いネェ。
誰も彼も本気と謂いながら刹那に遊ぶにゃ全然足りてないのさァ。
其ンじゃ茄子の兄さんに一言断ってお邪魔しようかィ。
別に無くたって片目腐れるだけだヨゥ。
茄子の兄さん負けるンなら冥土の土産に呉れてやっても好いさァ。
詰まらない事なンざァ忘れて刹那を楽しみなヨゥ。
こン子は魂しか喰わないが紅ァい紅ァい血の中で舞うのさァ。
心の臓のお陰で楽しい鬼ごっこも出来たヨゥ。
[唐突に顔に紅を投げられ一瞬ひるむも、飛び掛らんとした夜斗を制し。
遥月へ背後を取られたが、何も抵抗をせず]
貴方なら、かまいませんよ。
僕とて望んで狩るものになった訳でもあるまいに。
[落ち着いたように言葉を紡ぐ。
然し顔は青ざめ、わからぬほど小さく、震えては痛けれども]
ただずっとそばにいるだけでいい、というわけには
……いかないんだろうなぁ、きっと……。
[鬼二人の手に掛かったとき。
怖いはずなのに、さしたる抵抗もできなかった。
首筋を伝った宵闇色の鬼の唇、赤鬼の舌が指をなぞった時の感触]
それだけじゃ気持ちがすまなくなるんだろうなぁ、きっと。
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