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[伸べた杯を擦り抜けて。
顎掴まれ顔上げさせられ]
[重なる唇瞬いて、動きは見事に凍ろうか]
[離るる白水をぼぅと見遣り。
水落つるに漸く我を取り戻す。
己が中の酒気が消えるに気付くも今で]
……やれ、全く驚いた…
[水の注がるるを受け取りて。
ぐいと一息に飲み干さん]
[僅か頬が染まるるは、酒精の所為とは誤魔化せぬ]
[夜店からはもんじゃ焼きを買い込んで、他の者達のもとへ向かう。
林檎飴はなかったし、もんじゃ焼きでは半分こできないが]
昨日の礼に、万次郎さんに一つあげないとなぁ。
[ふと気配を感じて、身構える間もなく腕をとられる。視線を向ければ宵闇色の鬼が。]
…!?
ふふっ……白水様。
俗世を捨てた密教の高僧様には、そのような刺激は強すぎましょう……
[袖の奥でくつくつ笑う。]
あらあら、いやだ、開耶様。
……その頬、御酒の紅かしら?
もし気掛かりなら、わたくしの白粉を御貸ししましょうか?
――くつくつ、くつくつ。
なんだぃ、迷子の嬢ちゃんじゃねぇか。
そんなら俺も混ざろうかあ?
[つかつか歩いて近づいて
顎とりついと上向かせ]
相棒に捕まっちまったかあ。
どうだい、赤鬼青鬼に喰われてみるかい?
[睨む瞳は煌いて 山吹色に墨色模様]
[くすり笑って開耶を見つめ]
驚かせてすまんな。
されど、事後承諾でなくば逃げられるかと思うたゆえ。
[袖は口元][薄い笑み]
飲んだ端から流れてしまうゆえ、
酔うたものから酒気を奪えば酔えるかと思うたが
刹那も刹那――無駄だったようじゃ。
[頬が染まるに首傾げ]
[吸いきれなかったかと考え込み]
はて――全て吸い取ったつもりじゃが
まだ酔いは醒め切っておらぬか?
[顔色伺い不思議そう] [失敗したかと不安げに]
[何をなさるか]
[小娘は蘇芳を睨むか。
絡める腕からもがき、笛を取ろうとする仕草に]
物の怪がやすやす正体教えてどうなるか。
[墨濡れる指先、小さな顔に這い上がり
笛吹けぬよう親指ひとつねじ込むか。ガリと歯を立てれば流れる墨]
赤鬼青鬼がひとつ教えてやろうぞ。なぁ赤鬼や?
[藍の朧は浮かんで消えて。弧を描く]
[宵闇色の鬼の腕を振り払おうともがいても、身体に立てられた爪から流れる血潮とともに、だんだん力が抜けてゆく。]
…何をする気?
[頬色を指摘されるば、かぁと更に色濃くなり]
……っ、遥月!
[口許拭い杯叩き置き。
咎めの声は鋭くも、その貌では意味も無いか]
[其処にかかる白水の声。
矢張り動きは僅か止まるるか]
…やれ、もう良い。
[右の手ひとつで貌覆い。
覗く瞳から逃れようと]
……酔いは醒めた。
充分に醒めた。
[くつくつ笑う遥月に視線をやれば]
刺激か――。
酔い醒ましがほしいと言うから、酒を洗ってやったのじゃが。
――流すにはこの水でも充分なところ、
酔うてみとうて直接吸ったが、無礼じゃったかの。
[思案の瞳][貌覆う様子にも穏やかに]
ならばええが――水ならたくさんあるゆえ、いくらでも飲め。
笛、九十九神かい。
ああ、それで。
[がりり噛み滲む墨。
藍の弧金の弧で返し]
ああ、そうだなぁ。相棒。
[墨の色ごと舌で舐めとり]
そうそう、
碧に土産頼まれてたのさぁ。
[叩き置かれた杯を目で追い、開耶ににこりと微笑んだ。]
嗚呼、開耶様。
ならばよろしゅうございましょう……。
その頬染める滴りに、酔い痴れるのは程々に……
[袖の奥で、くつくつ笑う。]
[どどどどど、どうしよう!!!
開耶が可愛いようううぅぅぅぅぅ!!]
これ、背後。興奮しすぎじゃ。
何ぞそのようなぽいんとがあったかえ?
[鼻血中]
……汝れは何故流血しておるのか。
ほう、常葉にか。如何な土産か?
[赤鬼舐め取る墨色は、毀れて娘の肌を這い伝う。
差し入れた指は口内なぞり。青鬼くつりと笑う]
[口許は袖の奥に隠したまま、白水に紅の視線を向けた。]
いいええ、白水様。
思いもよらず、珍しきものを見られました故、わたくし心踊りました。ええ、ええ。そのやり方が、一番よう御座いますよ。
嗚呼、強いて贅沢言いますれば、白水様が酔い痴れる所も、わたくし見とう御座いますが……それは、後ほどにでも。一度にたくさん珍しき珠を見てしまっては、罰が当たってしまいましょう……。
[貌覆うまま、隙から常盤睨み言は無し]
…酔えぬは難儀よ。
酔うてみればもう要らぬとも思えようにな…
[するり落つる手、力無く]
嗚呼、水ももう良い。
我の本質なれば、あまり飲んでは腐れ落つわ…
[酒気も抜ければ眩暈無く。
常の如くにゆぅるり立ち上がり]
…酔うておらぬと言っておろう。
[笑い止らぬ遥月に言葉投げ遣って]
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