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毒持つ華も美しいだろうさァ。
[俯き加減] [白の手伸ばし] [微か鈴の音] [光玉零し]
[綻ぶ薔薇色] [柔らかく] [上目遣いの碧] [濡れた侭に]
鳥の囀るも好いけど華の音も好いネェ。
有難う、司棋の兄さん。
かっかっか。其の通り。
しかし幾度も礫を投げられるのも興がそがれようて。
まあ良い良い。己もお前さんも好き好きだ。
お前さんだろうがなかろうが、赤は美味く映るものよ。
なぁに何も添えぬ割に悪くない味じゃった。
薄墨桜のあれを食ろうて桜が枯れてはつまらぬからのう。
花咲けば、散るまでを見ずになんの桜だ。
かっかっか、舞うというか。
それは良い。では行くかのう。
[ぺたぺたぺたり。
黒の浴衣に裸足のまま。瓢箪三つ下げて宴に戻る]
[またも] [上から] [振る仔猫]
[瞬く間に] [盃満ちて] [すぃと乾かし]
夜桜じゃなく木から落ちる御猫様に乾杯かネェ。
[落ちる仔猫] [犬っころ] [獣の眼]
お姫様は猫が苦手かえ?
[ぺたぺたり] [妙な足音] [近付いて]
[すぃと向ける碧] [映るは空と地] [寄って来るか]
[真理の嬉しそうな笑顔に自ずと顔も綻び。
小さく笑みを返すが
翡翠の少女の気配を感じた途端毛を逆立てるように]
…気のせい…?
いや…敵ではなくて…
寝ていた…どうやらそのようじゃ、喰児。
[申し訳無さそうな顔もなしに、男の腕の中でぶらぶらと足を揺らしたまま、瓢箪片手の喰児に手を振る]
いつの間にやらお日様隠れて、その代わりの月が見ゆる刻限になっておったわ。
うむ、白水!
わらわが元気でない時があれば、その次の日に降るのは槍と思うてくれて構わんよ。
[くすくす笑う白水にも朗らかに笑みを向けて]
…おや、おや。
[自分を受け止めてくれたせいとも知らずに、地に落ちた盃と賽三つを見下げ、その後万次郎をまんまる眼で悪意なく見上げて、得意の説教を打つ]
これはいかん。物は大事にせねばならんよ。
[近づく藍色][口元に袖]
何ぞ面倒なことになってはいないかと
多少は気にしてみたが――
[瓢箪三つ][後ろには開耶]
心配する必要はなかったかえ?
いやいや、それでも詫びはしようか。
すまなんだ。
[紅い瞳には多少は反省の色が窺えて]
さて、幾度も投げらるばわからぬな。
物には限度というものもあろう。
[額撫ぜる手、頬拭い]
やれ、味を覚えられては面倒か。
早々に酒に流して忘るるが良い。
[しれ、と返すは冗談に。
桜の言には答えずと]
やれ…裸足で歩くは構わぬが、傷付けることの無きようにな。
赤を散らすば我が其方を喰らうぞ。
[続く草鞋は微かに鳴りて]
[薄墨桜の宴会場。
幾つもの姿を認めればゆぅるり頭下げ]
[受け止めてほっと息をついたところ
気配に気付いて]
……其方もあやかしだな…?
慣れていようとはいえ眠り過ぎで鈍ったか。
[腕緩め、地に少女を降ろしがてら問いに眉をしかめた]
っ…。これは、尾ではない。
頭に尾が生えるわけがなかろう…!
[睨みがてら呟いて、足元に散った賽を・盃を拾い懐へ]
司棋の兄さんは命の姐さんとはソリが合わぬかえ?
犬と猫だから仕方ないかネェ。
[綻びかけた表情] [強張るを覗き] [あやす様に] [そぅと頭撫ぜ]
[メイの言葉に袖を当てたままくすりと笑んで]
ならば常に元気でいてもらわねば身が持たぬな。
槍を防ぐは至難の業じゃ。
[朗らかな笑みを眩しそうに眺め]
むう。かたじけない……?
[くるくると巡る表情の少女。懐をおさえ盃と賽を確かめる。
びょうびょう...
記憶を辿ると]
其方、夜店ですれ違ったな。
風を纏って駆けていったのは其方だな?
縄張りに入るものには警戒をするでしょうに。
それだけで。
しかし猫が化けるとあぁなりますか…。
たまには話すのも悪くはなく。
命の姐さん、林檎飴は食べたかえ?
[遊螺り] [揺ら揺ら] [白い手の持つ] [紅い飴]
[貰い物だし] [さてはて如何する] [万次郎見遣り]
折角貰ったけどあげても差し支え無いかえ?
食べた事が無いらしいのさァ。
[空と地] [来たれば] [濡れた碧向け] [ニィと笑み]
茄子の兄さんお帰りィそろそろ酒が切れそうだったところさァ。
開那の兄さんは今宵は舞って呉れるンかえ?
なんならアタシも邪魔しようかと思うンだけどネェ。
かっかっか。
山暮らしで裸足なぞ慣れておるわ。
[開耶へと からり笑って宴の席]
それ、相棒お守りの礼だ。
[瓢箪ひとつ喰へと投げ渡し]
娘にわっぱも起きたか。寝こける間に桜が散ってしまうぞ。
[白の姿に、笑みは失せ]
…良い。
己が気を抜きすぎただけだ。詫びる必要などないわ。
[とすり、先ほどと同じ所に腰を下ろす]
にゃぁおっとな。
そうかい、犬の姫は猫が苦手かい?
[説教講釈滔々子猫。
面白そうに眺めつつ]
おう、相棒、琥珀の、待ってたぜえ。
[つやつや。林檎飴と常葉色を見比べて頷く]
好きにするがよい。
其の飴はもう其方のものだ。我に聞かずとも思うまま。
ふむ。
この小娘、夜店に居たにもかかわらず飴屋を覗かなかったか。
名は何と?……めい、でよいのか。
[周囲から聞いた名をぽつり口にした]
[濡れた碧に僅か首傾げ]
長きをおいては忘れよう。
忘るる前にと思うて参った。
共に舞うは構わぬが、我は誰ぞと舞ったことなど無いぞ?
[懐の扇、取りかけて。
司棋の姿見遣れば懐に仕舞うまま]
[宴の席に向かう藍。
からり笑うに肩竦め]
そのようなものか。
案ずる必要が無きは良いか。
[常磐のひめの名誉ではない乾杯の音頭に、それでも嬉しそうに目を向けて]
おお、わらわに乾杯と?
[しかし、ふいに感じた首の後ろ毛の逆立つ感じ。
見向けば、誰もかれもに姫と呼ばれていた男の目が見開かれていて、]
――!
[双眸それぞれに異なる色は顔を彩る美麗な部分であったのに、片方の蒼と見えていた目が一瞬恐ろしげな紅に見えた。ぞびぞびとする、嫌な感じ]
……フーッ…!
[姫と呼ばれる男から目を離さないまま、喉の奥から自然と洩れる唸り声。
そのまま両の腕を強張らせるや――]
かっかっか、待たせたな。
少々開耶と戯れておったわ。
瓢箪はほれ、相棒に投げておいたわ、たまには酌をされると良い。
[常葉の女へ、瓢箪を持つ喰を示す]
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